中止されたサブカルアート展の作家ら 「機会を奪うな」と展覧会開催
東京・浅草橋で『禁忌の境界』展が2011年4月15日から25日まで開催され、10名の作家によるサブカルアート作品が展示された。この展覧会は、2月に西武百貨店で開催された「SHIBU Culture~デパートdeサブカル」(以下「シブカル」)が、「百貨店に相応しくない」と苦情があったとされたために会期途中で中止になったことを受け、人形作家”美少女”さんを中心に企画されたもの。美少女さんをはじめ、今回出展した作家のうち7名は「シブカル」にも出展していた。
会期直前には、東京都知事選が行われ、東京都青少年健全育成条例(以下、都条例)の改正を推進した石原慎太郎氏が四選を果たしたばかり。そんな現状を、作家自身はどう感じているのだろうか。美少女さんと、同じく「シブカル」に出展していた画家の成瀬ノンノウさん、蒼鬼ハルさん、Rayさんに話を聞いた。
■展示の「場」が奪われる恐怖
――まず、今回の展示を企画した経緯を教えてください。
美少女:
簡単に言えば、「展示の場所と機会を奪うな」ということです。「シブカル」はクレームを言った相手とのチャンネルが一切ないのが嫌でした。何が気に食わなかったのかが分からない。それが怖かったですね。これが前例となってしまい、何度もこのようなことが起きると、作家の気力も途切れてしまう。幸い僕は声を上げる元気があり、ギャラリーから声をかけて頂けたので、今回の展示につながりました。
――「シブカル」が中止になった時、どう感じましたか?
成瀬ノンノウ(以下、ノンノウ):
個人的には規制されるほどのものはないと感じていたので、暴力的だな、と。理由も未だにはっきりとは分からないですし、見捨てられたような気持ちです。
蒼鬼ハル(以下、蒼鬼):
ただびっくりしましたね。「なぜ」と動揺もしましたけれど、最終的には仕方ないと諦めました。
Ray:
私も仕方がないかな、と。場所が百貨店なので、「大人の対応をなさったのかな」と思いました。
■規制は便宜的な「境界」に過ぎない
――石原慎太郎都知事が四選を果たしました。都条例が施行され、石原都知事自身、都条例に踏み込んだ発言をしていますが、そのことでの萎縮は?
美少女:
実際、マンガや小説で編集サイドで(作品に)ストップがかかる、ということがあるようですね。出版社側の理由も分かりますが、理解することとそれを許していいか、というのはまた別問題ですよね。
蒼鬼:
最近の石原さんの発言はちょっと、と思いますね。特に何かと自粛、規制ばかりな気がして。地震の影響でお花見を自粛するように、というのはどうかと感じました。
美少女:
自分は、猪瀬(直樹)副知事が「(とにかく作品を)書いてみればいい」とtwitterで発言されたことの方がどうかと感じました。その発表の場が奪われているわけですから。
ノンノウ:
自分の作品が規制対象になるのは困ります。これ以上影響があるようならば、声を上げると思います。
――そうした規制のなか、今後アーティストとしてどのように表現していくのでしょうか。
蒼鬼:
もともと自分でリミットはかかるようにはなっているとは思うのですが、バランスを取りつつ、作品を描いていきたいとは考えています。
Ray:
私は人として隠したがる部分を描いていこうとしています。友達に見せたら「いいんじゃないの」と言われるのに、母親には「なんでこんな気持ち悪い絵を描くの」と言われる。そういう絵を今後も描いていくと思います。
ノンノウ:
必要があれば、これからも裸を露出する作品を描いていきます。けれど、出す場所は選ぶことになると思います。今は人に認められていくことが大事だと考えています。絵をやめる気はまったくないです。
美少女:
今回の展覧会にも「境界」と入っていますが、規制も行政が暫定的に置いているラインに過ぎません。境界というものが実はゆらぎのあるものだということを忘れてはいませんか、ということを日頃から主題にしています。そういう問いかけを、今後も続けていきたいです。
(ふじいりょう)
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