『WORLD HAPPINESS 2015』が大盛況のうちに幕!

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過ぎて行く夏を感じさせる8月23日(日)。今年で8回目を数える東京・夢の島公園陸上競技場にて『WORLD HAPPINESS 2015』(以下「ワーハピ」)が開催された。

METAFIVE (okmusic UP's)

家族や友人たちと、あるいはあえて一人で参加した「音楽の楽しみ方を知っている人たち」はこの日、日本のロック・ポップスの歴史と未来を目の当たりにした。

Yellow Magic Orchestra(以下「YMO」)が与えた影響のもとで、さまざまな世代の才能が集結する奇跡を実感できた8時間。どのアクトも繋がりが感じられるラインナップだが、特にトリをつとめた高橋幸宏率いるMETAFIVEは、世界最先端の音楽として戦えるステージを披露してくれた。

ワーハピを、「大人の」「おしゃれでまったりとした」フェスだと評する声もある。とんでもない。ワーハピは世の中のフェスバブルのカウンターなのだ。そんな想いを感じさせる壮大な夏の一日となった。

開催8年目のワーハピならではの出演陣の層の厚さをのっけから感じさせてくれたのがTRICERATOPS。踊れるビートという意味ではキッズを沸かせるバンドの元祖。そして3ピースの真骨頂を見せるという意味では、今、最高に脂が乗っている存在だ。スウィ—トなラブソングを歌わせたら右に出るものナシの和田唱が「こんなオシャレなフェスで浮かないか、ちょっと心配」と意外な一言を漏らしていたものの、ラストでは誰もが知る名曲「Raspberry」で一気にフィールドを一つにし、オープナーの大役を果たしてくれた。

現役OLのエレクトロ・ラップ・ユニット、Charisma.com。DJゴンチが作るタフなトラックとMCいつかの働くオンナのリアル満載な高速ラップが、若者だけでなくYMO周辺好きのアラフォー、アラフィフ世代も熱狂させる。「夢の島ということですが、我々、皆さまにお分けする幸せを持ちあわせておりません」といういつかのMCに笑いが起こり、トレードマークの赤い脚立に登ってのパフォーマンスでもオーディエンスの目を釘付けに。

初出演陣が続く中でも、アメリカンロック的なスケール感さえ身につけた今のSCANDALには、ガールズバンドという形容もちょっと不似合いなぐらいだ。9月9日リリースの新曲「Sisters!」はトライバルなビートが新鮮な女の子に向けたアンセムといったニュアンスだったし、切ない「会わないつもりの、元気でね」のたくましい8ビートなど、来年で結成10年を迎えるロックバンドの佇まいを見せつけた。

50年代風モノトーンボーダーのワンピースに、黒の手袋と釣り目のサングラス。「元祖渋谷系アイコン」野宮真貴がステージに登場し、名刺代わりの曲の一つ「東京は夜の7時」が始まった途端、会場の空気がガラリと変わった。右に立つ「永遠の半ズボン少年」カジヒデキのエヴァーグリーンなギターと相まって、夢の島に渋谷の風が吹き込まれたようだ。ロジャー・ニコルズ、フリッパーズ・ギター、カジヒデキ、小沢健二、ピチカートファイヴと、迷いのない完璧な選曲もオーディエンスを泣かせ、バックステージで聴いているであろう小山田圭吾に思いを寄せる往年のファンならではのマニアックな楽しみも添えてくれた。

ゆったりとした白い半袖ロングワンピースに、エアクッション入りのスニーカーという爽やかな出で立ち。バンドを従えて登場した坂本真綾は、意外にもデビュー20周年というベテランシンガーでもある。そしてして、その本職の一つが声優にもかかわらず、「しゃべってる暇がない」と、その際立つ歌声をたっぷりと披露した。特に、コーネリアスこと小山田圭吾との『攻殻機動隊ARISEシリーズ』でのコラボ曲「まだうごく」のライブ初演奏には、ファンから「素子ー」(前述アニメの主役・草薙素子/声・坂本真綾)の歓声も。ラストは彼女16歳のデビュー曲「約束はいらない」を披露し、このステージに立つ喜びを全身で表現した。

今年のワーハピでひときわ異彩を放っていたのが、土屋昌巳率いるKA.F.KAだ。土屋のソリッドなギターが鳴り響いたとたん、会場の雰囲気がそれまでとは一変。ボーカルのIssayが「真夏の日中にもっとも似合わないバンドです」と自己紹介したが、ポスト・パンク/ニューウェイヴなサウンドを、そして、ロックという音楽が本来有するハードかつダークな側面を、ぞんぶんに見せつける圧巻のパフォーマンスだった。ラストナンバーであるJoy Divisionの「Transmission」が演奏されるころには、なんと(!)雲行きまでもが怪しくなっていた。

「暑苦しくてごめんなさーい。なんでお招きいただいたのかさっぱりわからないままにやってきましたー。強烈なアウェイ感を感じてますー」そんな大槻ケンヂのMCとともに登場した筋肉少女帯(筋少)。ごりごりのヘヴィメタ・サウンドに多少の戸惑いを覚えていたかもしれないオーディエンスも、大槻が十代の頃に勝手に歌詞を付けてコピーしていたというYMOの「ライディーン」が「ワーハピさんの粋な計らいによって」(大槻)初披露されるころには、筋少のワンマンライヴかと見紛うほどの盛り上がりに。確固たる演奏力と大槻の絶妙なトークに支えられたパーフェクトなエンターテインメント・ショーとして、夢の島全体を大いに賑わせた。

いぶし銀のバンドが奏でるクールなトラックに乗って、しなやかなラップを繰り広げたのは4回目の出演となるスチャダラパー。あくまでも自然体なBOZEが淡々と導く「コール&レスポンス」に、会場の一体感とヴォルテージはあれよあれよという間に高まっていく。小沢健二との大ヒット曲「今夜はブギー・バック」や名曲「大人になっても」から、最新アルバムに収録されている「中庸平凡パンチ」や「A.K.A ETC」まで、30分という短時間ながら濃密なセットリストを披露してくれた。

陽がすっかり傾き、夢の島公園を涼しげな風が行き交い始めた頃合い。LOVE PSYCHEDELICOの演奏は、どことなく夏の終わりの潮騒を喚起させる、アコースティック・ギターのストロークが印象的な「Your Song」で始まった。ドラムスには「いつかいっしょにやれたらいいなと思ってた」(KUMI)と予てからの念願だったらしい、高橋幸宏。70年代テイストに溢れた、渋みと瑞々しさを併せ持つギターサウンド、自然と体が動いてしまう熟れたグルーヴ、そして、KUMIの透き通った歌声に、会場全体がスウィングする。これぞ「都市に生きる大人のためのロックンロール」なのかもしれない。

常連の鈴木慶一は2013年につづいてControversial Spark(メンバーは元カーネーションの矢部浩志、栗コーダーカルテット等でも活躍する近藤研二、The Uranusの岩崎なおみ、そしてthe roomのkonore)。ソリッドなギターリフと少女っぽさを残したボーカルのギャップがユニークなkonoreをはじめ、この多世代バンドの世界のインディーロックと共振するセンスたるや。9月2日に早くもリリースするニュー・ミニ・アルバム『angels of a Feather』から「眠る人」も披露し、慶一氏のこのバンドに注ぐ情熱を実感。

「なんか楽しそうなことやってるなあ」とワーハピをひそかに羨んでいたというクラムボンのオープニング・ナンバーは「シカゴ」。ピアノ・ベース・ドラムスというミニマルな編成でありながら、そのことを忘れさせてしまう高音圧・高密度なバンドサウンドと、原田郁子の唯一無二な歌世界が、夏の終わりの夕暮れ時@夢の島公園にとっておきの魔法をかける。雲の流れや空の色合いの変化までもが、彼らの音楽に呼応しているかのようだ。もし、夏と秋のあいだに季節の境界線というものがあるなら、この日のクラムボンを堪能しながら、はからずも踏み越えたのがそれだろう。

トリ前の重責を担ったのが、これまた初出演のPOLYSICS。年配世代には「DEVOを一つのルーツにしたバンド」というイメージで捉えられていたかもしれないが、それはオレンジのツナギとサングラス状のバイザーぐらいだったかも? 生音でテクノやポスト・パンク的なビートを続々叩き出し、時にガレージロックばりにギターを弾き倒すハヤシ、そして素っ頓狂な「トイス!」コールはフィールドを狂騒のダンス空間へ塗り替えた。

大トリは昨年に続いての出演となるMETAFIVE。高橋幸宏、小山田圭吾、砂原良徳、TOWA TEI、ゴンドウトモヒコ、LEO今井によるスーパーユニットが継続していること自体が奇跡だと幸宏氏もMCで述べていたが、「それはつまりアルバムを作ってるんですよ、というか来年出ます」というアナウンスにオーディエンスは歓喜の声を上げる。あらゆる音楽要素のエキスパートが世界で戦えるロック、ファンク、ダンスミュージックを今、鳴らしている興奮はYMOのメンバーである高橋幸宏を軸に、彼の影響を受けた世代が融合して作る音楽の連続性についても深い感銘をもたらしてくれた。ゲストで登場した鈴木慶一とのThe Beatniks「No Way Out」や土屋昌巳を迎えたアンコールでのYMOの「Cue」のアップデートされた演奏も、止むことのないラジカルさを表明していたのだから。

photo by TEAM LIGHTSOME

セットリスト
1.TRICERATOPS
スターライト スターライト / GOING TO THE MOON / Shout! / FLY AWAY / Raspberry

2.Charisma.com
イイナヅケブルー / とんがりヤング / こんがらガール / HATE / お局ロック

3.SCANDAL
OVER DRIVE / love in action / Sisters / Stamp! / 会わないつもりの、元気でね

4.野宮真貴withカジヒデキ
東京は夜の七時 / Love So Fine / 雨降り都市 / SUMMER BEAUTY(ラテンでレッツ・ラブまたは 1990サマー・ビューティー計画) / ラ・ブーム / 僕らが旅に出る理由 / メッセージ・ソング

5.坂本真綾
DOWN TOWN / レプリカ / バイク / まだうごく / doreddo 39 / 約束はいらない

6.土屋昌巳(KA.F.KA)
Spider & Pirates (inst.) / Jack The Midnight / The Prisoner / Transmission

7.筋肉少女帯
イワンのばか / 日本印度化計画〜来るべき世界〜日本印度化計画 / 踊るダメ人間 / 釈迦

8.スチャダラパー
Quiet Village / ライツカメラアクション / A.K.A ETC / MORE FUN-KEY-WORD / GET UP AND DANCE / 今夜はブギー・バック(smooth rap) / 中庸平凡パンチ / 大人になっても / サマージャム

9.LOVE PSYCHEDELICO
Your song / Free world / This way / Last Smile / Lady Madonna / Freedom

10.Controversial Spark
Hello Mutants / Ex-Car / In June / 眠る人

11.clammbon
シカゴ / サラウンド / 以心電信 / GOLDWRAP / KANADE Dance / 波よせて / yet

12.POLYSICS
Introduction! / Buggie Technica / Beat Flash / How are you? / Let’s ダバダバ / 怪獣殿下 ~古代怪獣ゴモラ登場~ / Dr Pepper!!!!! / シーラカンス イズ アンドロイド / Electric Surfin’ Go Go

13.METAFIVE
School Of Thought / Radio / Split Spirit / No Way Out(w/鈴木慶一) / Don’t Move / Maisie’s Avenue / Turn Turn / Luv Pandemic (w/水原佑果) / Cue (w/土屋昌巳)

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『WORLD HAPPINESS 2015』オフィシャルHP
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