ブルックリンに学ぶ[5] ニューヨーク最新オフィス事情
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東京にも増えてきていますが、ニューヨークのオフィス事情でも「シェア」がキーワード。今回は、co-work officeの中でも最先端をゆく3種類のオフィスを訪ねました。●連載「ブルックリンに学ぶ 住まいとまちのつくり方」
5つあるニューヨークのエリアの中でもっとも人口の多いブルックリン(約250万人)。昨今さまざまなメディアでポートランドとともに注目を集めています。そんなブルックリンでは人々はどんな暮らしをしているのか? 住まいやまちづくりのヒントとなるような最新事情をお届けします。1.マンハッタンの新たな波。creative thinker1000人待ちの超人気オフィス
最初に訪れたのは2013年オープンの「Neuehouse」。マンハッタン25番街にあります。あまりの素っ気ない入口に「本当にここ? あってる?」と不安を抱きつつ中に入ると、外からは窺い知れない華やかな空間が。
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【画像1】あまりに素っ気ない入口。Neuehouseというサインも無く(ロゴは上部の旗のみ)入っていいものか戸惑う(撮影:小野有理)
案内してくれたElenaはロシア出身のウェブデザイナーで、カナダで働いていたものの最先端に触れたいとニューヨークにやってきました。Neuehouseでの2年で「クリエイティブに対する姿勢が変わった」と言います。「ここを本当に気に入ってるの。集まってる人が本当に素敵で、この中を歩いて周りの雰囲気や会話を聞いているだけで刺激を受けるわ」と大絶賛。
Neuehouseは「オフィスでも、家でも、クラブでも、レストランでもなく、その全てがある場所」。その言葉通り入口すぐの高い吹抜けのラウンジには、特定農家から食材を仕入れ「とっても美味しい」と評判のレストランとカフェ・バーがあり、きびきび立ち働くスタッフがいつでも美味しい食事をつくってくれます。地下には50~60人が入れるシアタールームにジム・シャワーが完備。一番大事な執務スペースももちろん居心地良くつくられ、ラフな古ビルのコンクリートフロアにアンティークの木材のデスクが置かれ、創造性を刺激できるリラックスした時間が流れています。
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【画像2】入口を入ってすぐのラウンジの一角。奥はフリーアドレスのデスク。道路に面した大きな窓から自然光が溢れる。手前の階段は思い思いに時間を過ごせる大きな階段型ソファ(撮影:小野有理)
設備・空間もさることながら、入ってまず感じたのはメンバーがとにかくオシャレなこと。最新トレンドを身にまとい、談笑しながらラウンジを闊歩する姿はこれぞマンハッタン。感度の高い選ばれし人々が互いのアイデアをシェアし刺激を受けて高め合う。この雰囲気が新たな人を呼ぶのでしょう。「私たちはアングラなの。その方がかっこいいでしょ」と言いつつも、1000人もの入居待ちを抱えるメジャー感に納得です。Elenaの「私のクリエイティビティのためここにいるの」という最後の言葉が印象的でした。
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【画像3】画像2の階段をみた図。ふかふかのクッションが敷かれ各々、作業に没頭する。ここはメンバーを集めたトークイベントの会場にもなるそうだ(撮影:小野有理)
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【画像4】2階から上は執務スペース。たくさんの観葉植物が置かれ、デスクも木材で出来ているため落ち着いた印象。個人で働く人々が固定デスクを契約している(撮影:小野有理)
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【画像5】こちらは法人向けに提供しているゾーン。数名から20人程度まで入室できる(撮影:小野有理)
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【画像6】Elenaが仲間たちと働く場所。ここで集中して仕事をして息抜きはラウンジに下りてコーヒー片手におしゃべりをたのしむ。2階以上の執務スペースにもゆったり取られたソファ&ブックスペースで寛ぐときも(撮影:小野有理)
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【画像7】吹抜けの上から見たラウンジ部分。右手にはカフェ・バーがあり、美味しいコーヒーの香りが漂う(撮影:小野有理)2.「クライアントを共有する」最先端テクノロジーのおもちゃ箱ラボ
次に訪れたのはブルックリン外れにあるテクノロジー系ラボ「NewLab」。
もともとは海軍の造船施設でしたが80年代に海軍が撤退してからは放置されていた場所を、ニューヨーク市が巨大空間を活かして広い作業場が必要なモノづくり系の人々が入れる場所につくり替えている最中。ブルックリン大学とアート系企業が集積するDUMBO地区とつながり、新たな産業を生むブルックリンの三角形を形成し、産学連携で次世代のものづくりを目指します。
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【画像8】NewLabの屋上からみた、工事が着々と進むブルックリンのネイビーヤード(海軍造船所)。全ての工事の完了は3年後になるそう。早く一緒に働ける仲間が増えてほしいとメンバーの一人が話してくれた(撮影:小野有理)
コンクリートを白く塗った無機質なワンフロアに入ると、NeueHouseの華やかなざわめきとは一転、マシンのブゥンという重低音や電子音、のこぎり音が聞こえます。NewLabには1グループ4,5人で構成される16グループが入居していますが、さながら研究者のおもちゃ箱のようで人間の姿はあまり見えません。入口すぐのアーティストがつくる照明は、人工知能と一体化して生き物のようにゆらゆら動いています。この不思議な照明を過ぎると、人の身長をゆうに越す直径2mほどの巨大な球形模型が転がっています。そして、スタディ途中のバージョン違いの製品がぎっしり。
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【画像9】NewLabの入口。この入口から中の広さは想像できない(撮影:小野有理)
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【画像10】入口で出迎えてくれた動くLED照明たち。木の枝のような照明(左)や、円柱型の照明(右)もどちらもゆらゆら自律的に動いていてびっくり(撮影:小野有理)
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【画像11】入口正面の巨大な模型(手前)と奥のデスクで作業するメンバー。収納棚の上にも不思議な巨大模型が掲げられている。このラボの中で最大の人数を誇る建築系チームだ(撮影:小野有理)
奥の作業場には3Dプリンタが並んでいますが、その横には昔ながらのチェーンソーも。危険物もたくさんです。入居しているテクノロジー系アーティストが「クライアントを共有する」と言っていましたが、まさしく彼らは航空機のボーイング社や自動車メーカーなどのプロジェクトを複数グループで受注することもあるそう。「自分が分からない技術も隣にいるメンバーが詳しかったりして新しいアイデアを提供してくれる。ブルックリン、いやニューヨークでここまで技術系の人材がそろった場所はないんじゃないかな」という彼。やはりco-workシェアの基本は人的ネットワークの構築のようです。
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【画像12】案内してくれたJohn。有機的な曲面が得意で、リユース可能な建材で建築物をつくる建築家。こうした構造には新しい技術が必要で、このlaboでのディスカッションがとても有意義だと言う(撮影:小野有理)
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【画像13】動く照明をつくるテクノロジーアーティストのJason。ここに入って来てから、仲間も使える技術も一気に広がった。本当に来て良かったと思ってるよ、と話してくれた(撮影:小野有理)
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【画像14】奥の共有作業スペース。3dプリンタなど最新機器と、昔ながらの電ノコが共存している。新しい機器が欲しい場合は、laboの入居者全員に欲しい人が声をかけてお金を出し合いながら購入するそう。「管理のルールなども皆で決める。その自治の仕方にも工夫してるよ」と話してくれた(撮影:小野有理)
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【画像15】それぞれのデスクにはこうしたスタディ途中の製品が並ぶ。通りがかって写真を撮っていると「感想教えてよ」と言いながら、熱心に説明してくれるフランクな場だ。こうやってアイデアを共有して高次のモノづくりを目指す(撮影:小野有理)3.Co-work業界の寵児、多様な人々が集うWeWork
最後はco-workオフィス業界では先駆者かつ成功者とも言える「WeWork」。WeWorkはサンフランシスコでの創立から4年で早くも1万人以上のメンバーを抱える、業界の寵児です。アメリカの12都市から、イスラエル、イギリス、オランダにも拠点を広げ急速に拡大しています。ニューヨークだけでも17のオフィスプレイスを構えており、アメリカ全土では39のプレイスがあります(2015年7月20日時点)。
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【画像16】入ってすぐのラウンジ。高い天井に大きな窓が気持ちよい大空間だ。自分の執務スペースに向かう前にここでゆっくりニュースをチェックする人たちも(撮影:小野有理)
WeWorkの特徴は「2+2=5」をコンセプトにしたメンバー間コミュニティ。NeueHouseがクリエイティブ系起業者が多いのに対し、WeWorkは弁護士や編集者、SEなど多方面のプロや個人事業家のスタートアップを応援しています。1~3人でスタートして30人規模の会社になるまで入居するのが基本的なイメージ。みんなで大きくなろうと集まっているため、メンバー間で助け合うシステムが充実しています。例えば、WeWorkのメンバー専用のネットワークがあり、メンバー同士だと発注業務を安くしたりして助け合います。
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【画像17】スペース貸しの小規模オフィススペース。フリーアドレスのデスクスペースと、ある程度の人数で働けるスペース貸と2種類がある。仕切りはすべてガラスで中が丸見えなのが特徴。でもみんな目隠しをつけたりしないようだ(撮影:小野有理)
みんなが集えるカフェコーナーやゲームスペースなどもあり、インテリアの工夫は多いけれどNeueHouseほど凝ってはいない印象です。以前にサンフランシスコのオフィスを訪ねたこともありますが、基本的なアメニティやインテリアはニューヨークのものとほぼ同じでした。このWeWorkには今まで見て来たco-workオフィスの中でもっとも門戸が広く多様な人々が集まっており、あたかも「話せる図書館」のような雰囲気です。「最終的にはここから巣立つことを目標にしていて、いろんな人がそろっていることが特徴。自分のネットワークを広げるには最適の場所だよ」と言うメンバーのコメントが印象的でした。
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【画像18】ラウンジ脇のカフェスペース。訪れたのが朝だったので、やってきたメンバーたちが思い思いにコーヒーを入れたり、ジュースを手にとったり。ここの飲料は全て無料だそうだ(撮影:小野有理)
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【画像19】左:各フロアにある執務スペース手前の共有ラウンジ。ふかふかのソファやバーカウンターなども充実している。右:共有ラウンジに併設されたバーカウンター。ビールサーバまでもがfree。「メンバーたちとここでパーティーしたり、ゲーム観戦したりもするよ」と話してくれた(撮影:小野有理)
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【画像20】かわいらしくデコレーションされた管理事務所。内装インテリアは入居者が好きにつくることができる(撮影:小野有理)
今回ニューヨークの最先端オフィスを回って、ニューヨークの働いている人の層の厚さを実感。日本の都市部ではまだまだ企業に雇用されている人が多いですが、ニューヨークはフリーランスや自営業、起業家が続々現れていて、一定の規模になっています。だからこそco-workオフィスも、クリエイティブ系やテクノロジー系など細分化していっている様子。日本でもこうした自由なオフィスが増えると、より起業家も増えるのでは、と感じた次第です。●取材協力
・NeueHouse
・NewLab
・WeWork
元記事URL http://suumo.jp/journal/2015/08/25/96048/
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