どんな客先でもビビらない 営業マンのスキル

どんな客先でもビビらない 営業マンのスキル

 毎月きびしいノルマに追われ、営業先では無理難題を突きつけられと、つらい思いをしている営業マンは多いはずです。しかし、その一方で企業や個人宅に飛び込み営業をかけて、次々と契約を取ってくるツワモノも。
この両者の違いは才能や適性だけなのでしょうか?
 飛び込み営業で圧倒的な実績を残し、トップセールスに登り詰めた杉山彰泰さんの著書『トップセールスはお客さまの何を見ているのか?』(かんき出版/刊)からは、その答えの一端が見えてきます。
 「売れる営業マン」は営業をどのように捉え、仕事をしているのか。杉山さんにお話をうかがいました。その後編です。

――「飛び込み営業」ということでいうと、会社ではなく個人宅を訪問することもあると思いますが、その場合でも本書で明かされているノウハウは役立つのでしょうか。

杉山:ちょっとした外観から情報を得るというところでは役に立つと思います。
特に一戸建ての住宅はヒントが隠れていることが多いんです。どんな車に乗っているのか、庭はどうなっているか、どんな表札がかかっているか、といったポイントはすべて「どんな人が住んでいるか」を推測するヒントです。
たとえば、ソーラーパネルなどは基本的に訪問販売の営業マンに提案されて買うものですから、屋根にソーラーパネルがついている家は、そういったセールスに弱いタイプの人ではないかという推察ができます。

――「まずは挨拶と自己紹介だけするつもりで飛び込む」というのはよくわかるお話だったのですが、そうはいっても営業マンですからいつかは商談に入らないといけません。このタイミングが難しいと思いますが何かコツはありますか?

杉山:いつ自分の商談を切り出すかを考えながら相手の話を聞いている時点で、あまり相手と親しくなれないですよね。
相手は中小企業とはいえ社長ですから百戦錬磨ですよ。「売ろう」「売りたい」という魂胆はまちがいなく見透かされますから、はじめのうちは「売りたいオーラ」をとにかくゼロにして接することを考えた方がいい。最初は相手の話を聞くことに徹して、時間になったら帰るくらいがちょうどよくて、商品の話はするにしても最後の5分です。
最初の訪問では社長と仲良くなることを目的にして、一度で売ろうとしないことです。相手だって丁寧に扱われたいわけですから。

――焦って売ろうとしてしまう背景には、営業マンに課せられる「ノルマ」があります。この「ノルマ」をこなしつつ焦らずに営業していくポイントはありますか?

杉山:「ノルマ」についてトップセールスマンが工夫しているのは、会社や上司に文句を言われる時間が無駄なので、1件受注を隠し持っておくことです。月初、みんなはゼロからスタートですが、トップセールスはその隠しておいた1件をそのタイミングで出します。
受注4件がノルマだとしたら、その時点で1件取っていますから残りは3件。そうなると気持ち的にだいぶ違うはずです。そして、その3件に加えてもう1件また隠し持っておくと、会社や上司からの信頼も得やすくなりますから、自由に動ける時間が増えます。この循環はぜひ作っていただきたいですね。

――今、結果が出ていなくても今後伸びる営業マンの特徴としてどんな点が挙げられますか。

杉山:とにかく勉強をしていることです。
自分が飛び込んだ件数に対してどれだけ契約が取れたかという確率を出したり、契約を取れた原因を自分なりに分析している人は伸びます。自分の仕事をコントロールするという意味でも、少なくとも自分の日割り達成率を聞かれてパッと答えられるようにはしておいてほしいですね。

――「飛び込み営業」というとストレスが溜まることも多そうです。ストレスとの付き合い方についても教えていただきたいです。

杉山:飛び込んだ先の会社で冷たい対応をされることでストレスが溜まるというのであれば、言われた言葉を全てポジティブに変換する装置を自分の中に持っておくことが大事です。
「要らないよ」ならば「今はお腹いっぱいです。もう少し経ったらまた来てください」、「嫌い」だったら「もう少しお互いを知ったら好きになります」と、全てポジティブに変換してしまう癖をつければ、これまでいちいち傷ついてきたことをかわせるようになります。
ただ、営業のやり方が身についてくれば、たとえ飛び込み営業であってもひどいことを言われて追い返されることはなくなってきますから、ストレスを感じること自体減ってくるはずです。
相手に失礼なことを言われる時というのは、自分も失礼なことをしてしまっているんですよ。

――営業という仕事に一番必要な要素はどんなものだとお考えですか?

杉山:相手を喜ばせようという気持ちでしょうね。営業は「ありがとう」を集める仕事で、売上や契約はその「ありがとう」にくっついてくるものです。売上のことばかり考えるとどうしても「相手からお金を奪う」という発想になりがちで、これだと営業すればするほど相手に嫌がられて契約も取れないという悪循環にはまってしまいます。
まずは「ありがとう」を集めにいく意識でやっていただきたいですね。

――しかし、自信を持てないうちはなかなかそういった姿勢で仕事をするのは難しいかもしれません。営業マンとしてのセルフイメージを高める方法がありましたら教えていただけませんか?

杉山:自分の「夢ノート」を作るのをおすすめします。そのノートに、自分は将来どこまでいく人間なのかを書いておく。たとえば、その夢が「年商1000億の会社を経営する」というものなら、年商100億の会社の社長の前に出てもびびらないですよ。それが実際にできれば「年商100億の会社の社長にもびびらない自分」というストーリーが描けるわけで、自信になるはずです。
また、相手と比べて自分が勝っている点を一つでも見つけることは心理的な余裕につながります。「腕力なら俺の方が上だ」でもいいですし「白髪は俺の方が少ない」でもいいです。何でもいいので相手より自分が優れている点、勝っている点を見つけていただきたいですね。

――最後になりますが、結果が出ずに悩んでいる営業マンにアドバイスやメッセージをお願いいたします。

杉山:まず言えることは、営業という仕事が好きになれないまま続けているという人は、無理に営業にしがみつく必要はありません。自分の才能をより生かせる分野に行くことを考えた方がいいと思います。
ただ、営業が好きなのに結果が出ないという人は、今の状態を変えていくためにも自分の営業のやり方や考え方を見直してみるべきです。まずやるべきなのは、周りの営業マンで結果を出している人を3人選んで、共通点を探すこと。それが訪問する件数なのか、担当しているマーケットなのか、フロント商品なのかはわかりませんが、よく観察すると彼らが共通して行っていることが見えてくるはずです。それがわかったら素直にマネするのが成長する一番の方法だと思います。
(新刊JP編集部)


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