再審無罪が予想される「布川事件」 事件から44年 「冤罪」被害者は何を語る?

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 44年間の戦いについに終止符が――1967年、茨城県利根町布川で大工の男性(当時62歳)が殺害された「布川事件」の再審判決が2011年5月24日に言い渡される(3月16日から延期)。この事件では、当時20歳だった桜井昌司氏と21歳だった杉山卓男氏が逮捕・起訴され、物的証拠がないまま無期懲役の判決を受けた。18年間の服役後に仮釈放された2人は、冤罪を訴え続けている。

 5月24日の再審判決では、有罪の決め手となった自白が事件の客観的状況と合わず、強要された可能性があることから、無罪判決が下される見込みだ。

 待ちに待った瞬間を前に、何を考えているのか。3月9日には、自由報道協会(仮)主催の記者会見が行われ、桜井氏と杉山氏が出席。現在の心境を語った。杉山氏は自白に任意性がないことと、なぜ冤罪事件が起きたかを判決文に記してほしいと訴え、「この2つが盛り込まれたら裁判官に『ありがとうございました』と言いますが、そうでないなら言わないつもりでいます」と語気を強めた。

 裁判では、法廷での証言よりも取調べでの調書が重視されているのが現状だ。しかし、多くの冤罪事件によって、被疑者を精神的に追い詰め、自白を強要するような取調べの存在が明らかになっている。

 「私がやった」と自白すれば、次は「どのようにやった」かが問われるという。無実の人間に犯行を説明できるはずがなく、最初はまったく答えられない。しかし、取調べ側は犯人が嘘をついているか、忘れていると考え、厳しい追及をしたり、助け舟を出したりする。こうした過程を経て、被疑者と取調べ側との共同作業で「嘘の自白」が作られていく。桜井氏は「誰でも何度も同じ話を聞かされれば、嘘のストーリーを覚えられる」と語る。 そして、できあがった淀みのない「嘘の自白」が調書として採用され、有罪判決が下されるのだ。

■取調べの全面可視化と証拠開示を求めて

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 現在、取調べの可視化についての議論が盛んになっている。警察・検察側は「十分な供述を得られない」と可視化を一部に限定したい考えだが、桜井氏は、

「どうやって供述ができあがったかという過程を知らなかったら、事実だと思ってしまいますよね。一部に限定したい人は嘘の自白が生まれる過程を明らかにしたくないのだと思う。私たちが望むのはその過程を明らかにして欲しいということ」

と、取調べの全面可視化を求め、仮に一部に限定するのであれば、「最後ではなく過程を可視化して欲しい」と訴えた。

 無罪が確定した後の活動について、杉山氏は「未定」としながらも、「全面可視化と証拠開示が法制化するために全力で協力していこうと思う」と回答。桜井氏は、

「国賠(国家賠償請求)をする。税金で集めた証拠を検察官が独占して、自分たちの見立てと違う証拠は出さない。こんな傲慢さを許してよいわけがない。弁護士がすべての証拠を見られるような制度ができるまでは国賠を通して頑張りたい。そして、冤罪を主張する他の人たちの力になれるように頑張っていきたい」

と答えた。

(野吟りん)

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