美容外科が急増した理由と施術トラブルの裏側

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厚生労働省などの調査によると、美容整形外科で施術を受ける人が以前より増えているそうです。正確な統計はありませんが、一説によると簡単な施術を含めると年間100万人近い人が施術を受けるとのこと。これが事実なら、日本は世界第4位くらいの患者数がいることになります。

かつて、美容外科は施術を受けるリスクが高いというイメージがありました。顔や体のデリケートな箇所にメスを入れるわけですから、施術を受けるのは、リスクがつきまとうものだという認識が患者の間でも浸透していたと思います。

ところが、技術の進歩から、メスを入れなくても、かなりの施術ができるようになりました。たとえば、フェイスラインを引き締めるのに、かつては口腔内からメスを入れて脂肪組織を取り除くような手術を行っていました。今はそのような手術はあまり行いません。筋肉が硬直する症状をもたらす病原菌であるボツリヌス菌を利用した注射(ボトックス)で、フェイスラインを引き締める方法が主流になっています。

また、目を二重にする手術は、まぶたを切って脂肪分を少し取りだして整形を行っていましたが、今では、まぶたの一部を縫い合わせる埋没法が主流になっています。そのため、手術を受ける際の身体的負担が少なくなってきました。患者にしてみれば、エステを受ける延長の施術に感じるため、美容外科に相談する人が増えたのではないかといわれています。

そのこともあってか、美容外科を開院する医師が増えています。厚生労働省の医療施設調査によれば、2008年の美容外科の開設数は108でしたが、2012年には123施設に増えています。健康保険を使った診療は様々な規制がありますが、患者さんが全額を支払う自由診療だけを行う病院なら、行政側がさほど厳しく指導する実態がありません。そのことが一因になっているのではないかという説があります。

また、美容外科の急増は、医師の開業参入が増えただけでなく、一人の医師が複数の自治体で美容外科を開設するケースが増えたためではないかといわれています。法令では、一人の医師が一つの自治体で開院できる病院は1つだけと決まっています。ただし、別の自治体であれば病院を開設するのは違法性を問われない現状があります。(そういえば、美容外科は複数の自治体に病院があることを宣伝している病院が多いですね。)

さて、医療技術の進歩とは反対に、実際に美容外科を受診した患者からのクレームは増えています。国民生活センターに寄せられた相談では、2014年時点で年間2602件の苦情が寄せられています。
それ以外にも、契約を急がされたり、相談にいったつもりがその日に施術を受けることになったというトラブルなど様々な相談が寄せられています。

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国民生活センターのホームページを見てみると、美容外科というキーワードで検索したトラブル相談は、これだけの例がヒットします。

同じく国民生活センターに寄せられた相談件数の推移を見てみましょう。

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国民生活センターホームページ http://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/biyo.html より引用

2010年から2012年までは、1000件台で推移していたのが、2013年になっていきなり2000件台を突破しています。
また、販売方法や広告に問題があると国民生活センターが判断した相談は、2012年に1000件を突破し、2013年は1194件、2014年は1471件と増加が目立ちます。

主に、施術費用などのトラブルが目立つようです。美容外科で需要が多い、筆者が、脱毛用の医療機器のディーラー、広告関係者から得た情報では、これは美容外科を開院した医師が、女性に人気がある脱毛などの医療機器を安価に仕入れ、収益性を高めようとするケースが高いと考えられます。

脱毛などの医療機器は、海外製のものになると、機器購入に3000万円程度の費用が必要になることがあります。健康保険による収入がないわけですから、中古機器や国産のダウングレード機種を導入してコストを抑え、投資をできるだけ早く回収しようとする美容外科が少なくないとのこと。

もちろん、良心的な美容外科も多いのですが、数回の施術が必要になるケースもあるようで、口頭の説明が中心になりやすい医師の説明に曖昧な返事をしてしまい、トラブルになるケースもあるようです。

利用する場合は、「リスクがあることを認識すること」「医師の説明に納得がいくまで施術は受けないこと」「費用が見合ったものか確認すること」をチェックしてからにしたほうがよいと思います。
ちなみに、美容外科で施術を受けた方のうち、結果に満足したという方ほど、しばらくして、再度施術を受けるケースが多いそうです。容姿が変わっても、自分の気持ちの安定が得られない場合があることも考えてから、施術を受けるかどうか決めるといいかもしれませんね。

※写真はイメージ 足成から http://www.ashinari.com/2012/09/27-370781.php?category=265

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(執筆者: 松沢直樹) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか

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