映画『ラブ&ピース』中川翔子インタビュー「人間が死ぬまでずーっと探し続ける“愛”を描いている」
『新宿スワン』が大ヒット中、『リアル鬼ごっこ』『みんな!エスパーだよ!』と公開待機作にも期待が高まる、園子温監督。ものすごいハイペースで映画を撮っている園監督ですが、中でも「この作品は俺の魂の集大成だ」と語る『ラブ&ピース』が、現在大ヒット公開中。
『ラブ&ピース』は、園監督の新境地となる怪獣特撮映画。初の特撮技術を用いて演出し、崩壊する東京の街に巨大化した“LOVE”=愛の怪獣が現れるという奇想天外な設定ながら、『トイ・ストーリー』の様な心が切なくなる描写多々! それでいて、自分に自身の無い一人の男が繰り広げるラブストーリーでもあり、これまで観た事の無い不思議な映画なのです。園監督作品なのに泣けるという、この衝撃。
本作で、物語で重要なキャラクターとなるお人形のマリアの声を演じたのは中川翔子さん。タレントや歌手のみならず、女優や声優としても活躍中のしょこたんですが、本作でも素晴らしい声の演技をしています。事前に知っていなければ、エンドロールでビックリするレベルの自然さは、個人的にも感動しました。今回はしょこたん本人に映画についてインタビュー。色々とお話を伺ってきました。
―本作、園監督らしい個性的なストーリーの中に優しさと温かさがあって、思わずほろりとしていまいました。中川翔子さんは映画をご覧になっていかがですか?
中川翔子:もうもう涙腺崩壊で、泣いてしまって、あの園子温監督の作品ですよね!? と驚きましたね。園監督の作品って観る度に感じ方が変わってきますよね。私は『冷たい熱帯魚』が大好きなのですが、最初は「なんて恐ろしい映画なんだ……」と思っていたのが、段々登場人物達が愛しくなっていくし、悲しくもなっていくという。『ラブ&ピース』も観る度に感想が変わる作品だなと思いました。
―確かに、観る人の性別や年齢、状況によっても感想は違うし、観るタイミングでも変わりそうです。
中川翔子:捨てられた動物やおもちゃ達には心があるって、切なくなってしまいますよね。今回声を担当させていただいたのは、お人形のマリアなのですが、思い出した事があるんです。子供の頃、マリアの様なフランス人形が家に飾ってあったのですが、それが怖くて母に捨てる様に頼んだんですね。そうしたら、それをゴミ捨て場で見つけた祖母が家に持って帰ってきて、「怖い!家に戻ってきた」ってまた捨てちゃったんです。今思うと本当に申し訳無いなって。子供の頃って物を捨てる事の意味があまり分からないんですよね。だから、『ラブ&ピース』を子供が観れば物を捨てるという事の意味に気付くと思うし、大人が観れば私の様に過去の思い出や経験を反省すると思いますね。
―人間の自分勝手な行いを反省するというか、考えさせられますよね。
中川翔子:亀のピカドンがご主人の鈴木さんの夢が叶う様にずっと頑張って、夢が叶えば叶うほど自分が辛くなるのに、それでも頑張るという姿を見ていると、愛猫のマミタスを思い出して涙がこぼれました。マミタスも、私がお尻を骨折した時、ずっとそばに寄り添ってくれて。そんな生き物達のご主人を想う優しい気持ちが映画からにじみ出ていますよね。
―園監督作品は『TOKYO TRIBE』に続けてになりましたが、もともと監督の作品のファンだったそうですね。
中川翔子:園監督の作品は大好きですし、自宅が『冷たい熱帯魚』に登場する熱帯魚店の近くという事もあって、ずっといちファンだったので、まさか自分が出していただく事になるとはと。最初は信じられない想いでしたね。『TOKYO TRIBE』は「ヌンチャクを振っていいよ」という事だったので、中学から使っている自前のヌンチャクを使いました。ブルース・リーのトラックスーツも、市販の物だと色が薄かったり濃かったりするので、VHS版の『死亡遊戯』と同じ色にオーダーメイドで染めた物を持参して……。とにかく出させていただく事が嬉しすぎて、もう大興奮でした!
―私『TOKYO TRIBE』観ているのですが、中川さんのトラックスーツの色に注目してまた見直します!
中川翔子:ぜひぜひ、ありがたきお言葉です! 今回もう一度お話をいただけて、しかも声のお仕事という事でとても嬉しかったです。『ラブ&ピース』というタイトルを聞いた時は、園さんの事ですから、タイトルとは逆をいく血まみれの恐ろしい作品なのかな? などと想像しましたが、まさかこんなに優しくて、温かくて、切なくて、深く感動するお話だとは。人間が死ぬまでずーっと探し続ける「愛」を描いていて。私自身、まだ子孫もいないですし、「愛クエスト」の一歩を踏み出したばかりという感じで、「愛」の意味も知らないのかもしれない。愛ってなんだろう、愛ってどうやって知るんだろう、ってすごく考えさせられました。
―二度目の現場という事で、収録も和やかに出来ましたか?
中川翔子:そうですね、色々お話出来て楽しかったです。一緒にお弁当食べた時も「僕は『ベイブ』が好きなんだよね。生き物達が大切にされる世の中であって欲しいよね」といったお話をしていて、本当に純粋でピュアな方なんだなとキュンとしました。この映画は特に“オーガニックスタイル”で撮影したとおっしゃっていて。オーガニックスタイルって何だろうと思ったのですが(笑)。優しい、穏やかな気持ちで撮ろうと。その優しさが映画からにじみ出ていますよね。
―今回は声の出演ですが、実写の演技との違いはどんな所を意識しましたか?
中川翔子:声の出し方はすごく迷いましたね。アニメでは無くて、特撮ですし、撮影現場には西田敏行さんしかいなくてマリア達は後から合成されるという事で。園監督が25年温めてきた物語であり、『トイ・ストーリー』の様な、ティム・バートン作品の様な温かさがあり、という大切な作品だからこそプレッシャーはありました。
―マリアの優しくて女の子らしくて、でも傷ついている……という難しい役柄と中川さんの声がピッタリで。しかも“しょこたん感”も無く、とても心地良い声でした。
中川翔子:ありがとうございます、そう言っていただけるとホッとします。自分自身がアニメや特撮を見ていて、声を演じている方の顔が浮かんでくるのって嫌だなと思っているので、とにかく“しょこたん感”が出ない様に心がけています。今回、犬山イヌコさんと一緒に収録させていただいた事も嬉しかったですね。これまでもポケモンでご一緒した事はあったけど、別の収録だったので。
―個人的にも中川さんの声のお仕事が大好きなので、これからも色々な作品でお聞きしたいです。
中川翔子:ありがたい事に、最近声のお仕事をいただく事が多くて。セーラームーン、ドラゴンボール、ドラクエ、ポケモン、ラプンツェルなど自分が子供時代から愛している作品に携われるという事が夢の様でもあり。その幸せを噛みしめて、表現しながら、次の世代のちびっ子達にアニメや映画の素晴らしさを伝えていけたらなと思っています。
―この映画もそれこそ、お父さんお母さんがちびっ子連れで行っても良いですよね。
中川翔子:本当にそう思います! 私もいつか孫と一緒に『ラブ&ピース』を観たいです。ちびっ子から大人まで、女子も男子も皆が楽しめて、その後語りたくなる映画です。特撮技術も素晴らしいのでぜひ映画館でみてください。このCG全盛の時代に、昔ながらの特撮技術を使っているのは感動です。日本でしか出来ない特撮技術をよくぞやってくださった! って。
―今日はどうもありがとうございました!
(撮影:オサダコウジ)
園子温監督 映画『ラブ&ピース』予告編
https://www.youtube.com/watch?v=S_oDoGIVifU
【ストーリー】
2015年夏。来るオリンピックに向けて盛り上がる東京の街。 楽器の部品会社で働くサラリーマン・鈴木良一(長谷川博己)は、以前はロックミュージシャンを目指していたが挫折し、それ以来うだつのあがらない毎日を過ごしていた。同僚の寺島裕子(麻生久美子)に想いを寄せているが、小心者すぎてまともに話すこともできない。ある日、良一はデパートの屋上で一匹の ミドリガメと目が合い、運命的なものを感じる。良一は、その亀にピカドンと名前をつけてかわいがるが、 会社で同僚にからかわれピカドンをトイレに流してしまう。すぐに後悔し失意の良一だったが、ピカドン がその後下水道を通り地下に住む謎の老人に拾われたことにより、良一にはその後には思いもよらない超展開が待っていた。
(C)「ラブ&ピース」製作委員会
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