『悪党に粛清を』“北欧の至宝”マッツ・ミケルセンインタビュー「カンフー映画と西部劇はよく似ている」
カンヌ国際映画祭男優賞受賞俳優であり、現在TVドラマ「ハンニバル」(スターチャンネルにて6月にシーズン1&2一挙放送)の主人公レクター役を演じる、俳優マッツ・ミケルセン。その端正な顔立ちにアンニュイな表情、演技の幅の広さで日本でもファンを増やし続けています。
デンマーク女王よりナイトの称号を授与され “北欧の至宝”とまで称されるミケルセン。2014年カンヌ国際映画祭に正式出品されたウェスタン・ノワール『悪党に粛清を』がいよいよ6月27日から公開となります。ガジェット通信ではマッツ・ミケルセン本人にインタビューを敢行。映画について、自身の作品選びについてなどお話を伺ってきました。
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―本作拝見しまして、全く笑わないマッツ・ミケルセンさんがすごく渋くて。演じた役柄についての感想をいただけますか?
マッツ・ミケルセン:すごく静かなキャラクターだよね。あれこれ言葉を飾り立てる様な男では無いし寡黙な男だ。多くを臨まずに平和で暮らしている所にとんでもない悲劇が起ってしまう、そこで少しずつ怒りが爆発していく。この映画は脚本がすごくしっかりしているので、演じる上で苦労は無かった。この映画は2014年カンヌ国際映画祭に正式出品もされたし、これでデンマーク映画の認知度があがったと嬉しく思っているよ。
―初めて西部劇に参加してみていかがでしたか?
マッツ・ミケルセン:もちろん非常に楽しかった。絶え間なく撮影できたし馬にも乗れたからね。 皆の服装にも笑えた。 撮影が終わるとホテルへ戻り皆でおしゃべりして、映画の内容とは逆に穏やかな時間を過ごしたよ。
―確かにそんな和やかな雰囲気でのぞまれていたとは思えないほど、とても緊張感のある作品でした。
マッツ・ミケルセン:何せウエスタン映画というのは歴史のあるジャンルで、ウエスタン映画の歴史が映画の歴史と言っても過言では無い。とはいえ、善と悪がハッキリしていないのも魅力だよね。どんな戦争でもそれぞれの主義主張があって、それぞれにとっての善がある。歴史のあるジャンルでありながら、いつの時代にも通じるメッセージ性があるのは本当にすごい事だと思うよ。
―おっしゃる通り、不変的なメッセージを感じます。
マッツ・ミケルセン:越えてはならない線をもし越えたら人間はどうなるか。 聖書の教えに “左の頬をも向けなさい”復讐してはならないというものがあるが、一方で旧約聖書は報復も認めている。人間の心にはどうしても復讐の念が沸いてしまうんだ。 そこで問われるのは個人が裁くか法に裁いてもらうかだ。本作もこの問いを扱っているんだ。
―本作で主演を演じるにあたり、参考にした過去の西部劇などはありますか?
マッツ・ミケルセン:監督と違って、僕は幼い頃に西部劇に憧れてはいなかったんだ。でも、本作は昔の西部劇のオマージュが多いから、避けてはとおれないよね。西部劇も見たけど一番参考にしたのははブルース・リー。カンフー映画は西部劇とよく似ているけどね。 オマージュはすべて監督のアイデアなんだ。彼の西部劇への愛の証しだ。あからさまな形ではないけれどね。
―カンフー映画は西部劇と似ている、とは面白い視点ですね。どういう部分にそう感じますか?
マッツ・ミケルセン:この映画は西部劇だからもちろんカンフーをするわけじゃないけどね(笑)。ブルース・リーしかり、バスター・キートンしかり、雄弁に多くを語る顔というか、独特の存在感を持っている。そういった部分かな。
―日本の映画はご覧になった事はありますか?
マッツ・ミケルセン:黒澤明の映画が大好きだよ。子供の頃、兄と一緒によくレンタルビデオ店に行った。1本だけ借りようと思っても「まとめて借りると安くてお得」という言葉につられて、5本くらい一気に借りたり。最も、その頃はこれが日本の映画だとか、中国の映画だとかよく分からず観ていたんだけどね(笑)。
―お兄さんとレンタルビデオ店に! これはファンの方にはたまらないエピソードなのでは無いでしょうか(笑)。今日はどうもありがとうございました。
※マッツ・ミケルセンの兄、ラース・ミケルセンも俳優として活躍中。
『悪党に粛清を』ストーリー
1870年代アメリカ―。デンマークから新天地アメリカへ渡った元兵士のジョン(マッツ・ミケルセン)は、開拓地で非情にも妻子を殺されてしまう。犯人を追いつめ射殺したジョンだったが、犯人が悪名高いデラルー大佐の弟だったことから怒りを買う。更にその情婦で声を失った謎の女も巻き込み、それぞれの孤独で壮絶な復讐がはじまる…。
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