データ改ざん「免震ゴム」は一般住宅に不向き?

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データ改ざん「免震ゴム」は一般住宅に不向き?

東洋ゴム工業の性能改ざん問題で脚光を浴びる免震ゴム

ビルやマンションに用いられる免震装置について、東洋ゴム工業(大阪市)が性能データを改ざんした問題が報道され、床下に隠れていた免震ゴムが脚光を浴びるようになりました。地震が頻発する日本では、建築物の地震対策として「免震構造」「耐震構造」「制振(制震)構造」が用いられ、これらは建築基準法で規定されています。

免震構造は「アイソレータ(支承)」や「ダンパー」という装置で地震エネルギーを吸収する仕組みです。このアイソレータに使用されている材料の一つが、「積層ゴム(免震ゴム)」です。

これらの装置に地震エネルギーが吸収されることで、上部建築物は地震による損傷を抑えることができ、耐震構造や制振(制震)構造に比べ建築物の揺れは小さくなります。大地震後にも基本的にアイソレータやダンパーを使い続けることが可能で、万が一、これら部材の性能が低下した場合は、補修・交換することで地震前の状態に戻すことができます。

地震時の揺れが少ない「免震構造住宅」の開発も

建築基準法の規定を守れば、震度7クラスの地震に遭遇した場合、耐震構造・免震構造・制振(制震)構造のいずれを採用しても、人命を失うまでの被害を受けることはないとされます。

一般的に、住宅建築では費用や完成までの期間を考慮し、多くは耐震構造が採用されています。長期優良住宅や住宅性能表示の活用により、耐震構造での耐震性能を向上させることも可能です。

ただ耐震構造を採用した場合、地震の揺れで家具や電化製品が転倒して家財を損失したり、建築物に損傷が生じたりすることがあります。それゆえ、免震構造が採用される住宅建築も見受けられるようになりました。地震時の揺れが少なくゆっくり揺れるため、家財転倒の危険性が軽減されます。また、耐力壁(筋交いなど)の位置などに拘束されず自由な設計ができることから、ハウスメーカーは独自の免震構造住宅の開発を競い合うようになりました。

問題になっている免震ゴムは軽量な住宅の免震化に不向き

住宅に採用される免震構造は、一般建築物と同じ構造です。ただ、住宅は軽いため免震装置にかかる重量が小さくなります。それゆえ、一般建築物に用いられる硬いゴムのアイソレータに比べ、小さな力で容易に動く材料が使用されます。

性能データ改ざん問題で話題になっている免震ゴムを使用した免震構造は、支える建築物がある程度重くなければ十分な効果を発揮しないため、住宅のような軽量建築物を免震化できません。

免震ゴムの使用には、一般建築物以上の配慮が求められる

そこで、「ローラー支承」「ベアリング支承」「すべり支承」などの免震装置が使用されることになります。ところが、小さな力で容易に動くため、足元を拘束しなければ風に吹かれても住宅が容易に動いてしまいます。そのため、風に対してはロックして動かないようにする一方で、一定規模以上の地震に対してのみロックがはずれる免震機能の採用が求められます(トリガーと呼ばれるものです)。

また、一般建築物も同様ですが、地震による住宅の動きに合わせて周囲のスペースに余裕を持たせ、設備配管もフレキシブルに動く必要があり、設計時には十分な注意と繊細な計画が必要となります。このように、住宅の免震構造に採用される免震ゴムの使用には、一般建築物以上の配慮が求められているのです。

(高塚 哲治/一級建築士)

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