今度こそ本気の厚労省、残業禁止の成功モデルを示せるか

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今度こそ本気の厚労省、残業禁止の成功モデルを示せるか

厚生労働省、午後10時以降の残業を禁止へ

「休むのも仕事です。今度こそ本気です」。これは、厚生労働省の長時間労働削減推進チームが掲げるキャッチフレーズです。今回、彼らは「働き方・休み方改革推進戦略」をまとめました。職員の長時間労働を改善するためで、原則として毎日午後8時までに退庁する、というもの。やむを得ない場合でも、午後10時までには退庁します。

また、実施状況は全職員の人事評価に反映するといいます。法令審査や国会業務などを扱う大臣官房などが3月から半年間、先行実施します。10月以降、全部局を対象とし、午後10時以降の残業が禁止されます。戦略では「厚労相主導の下、半ば強制的に実施する」と明記しました。

残業ゼロを目的とした場合は制度が形骸化する確率が高い

確かに、企業の残業問題を取り扱う労働基準監督署は、厚生労働省管轄の役所です。その役所が、霞が関でも有数の残業の巣窟であるとすると、模範を示すために率先して残業禁止をする大臣の今回の取り組みは、一定の評価をすることができるでしょう。

しかしながら、残業禁止だけが先走ってしまうと、本末転倒なことが起こりがちなので注意が必要です。それは、「残業をしないこと」だけが目的となってしまうことです。そのような状態になってしまうと、持ち帰り残業や、サービス残業が蔓延してしまうことになります。実際に当事務所でアドバイスしていても、残業ゼロを目的とした場合は制度が形骸化する確率が高いです。

目的が生産性の向上になっていないと、望む結果は得られない

残業禁止の一番の目的は、生産性の向上、そして、それに伴う業績向上(厚労省の場合は役所なので少し難しいですが)のはずです。そのための取り組みとして、例えば会議の時間を一律20%短くすること(それでも同じアウトプットが出るよう、議事の精査、事前の準備を徹底。あくまでも時間を短くすることが目的にならないように注意)や、仕事の標準化や取捨選択を行うのです。

そうしなければ、「残業していることがバレると人事考課に影響がある」というマインドになり、残業禁止が「残業隠し」に変わりかねません。仮に、決められた時間に電気やPCを強制的に消す、入室を禁止するといった強硬策をとったとしても、目的が生産性の向上になっていない場合は、望んでいたような結果を得ることは決してできません。

今回の厚生労働省の取り組みも、どうして残業を禁止するのかといった問題の本質をきちんと見極め、周知したうえで実施することができるかどうかで、成否が決まるでしょう。ぜひとも残業禁止の成功モデルとして、企業に発表できるようになってもらいたいと思います。

(植田 健太/臨床心理士・社会保険労務士)

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