今だから知っておきたい「異常気象」のメカニズム

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今だから知っておきたい「異常気象」のメカニズム

 近年、「異常気象」という言葉をよく耳にするようになりました。
 例えば、国内最高気温の記録がどんどん塗り替えられており、自治体間での競い合いも生まれています。まさに今年2月、関東地方に大雪が降りましたが、これは「30年に一度の異常気象」との見解が、気象庁の検討会から示されています。

 天気が気にならない人はまずいません。こうした「異常気象」をクローズアップすることで天気に対する興味がそそられます。
 気象予報士・金子大輔さんが執筆した『こんなに凄かった!伝説の「あの日」の天気』(自由国民社/刊)は人々の記憶に残っている「伝説の日」を取り上げながら、天気の雑学をわかりやすくまとめた一冊。大人の気象初心者はもちろん、中学生くらいの方でも楽しめる読み物風の本です。
 本書から、その一部をご紹介しましょう。

■2000年5月24日、千葉県・茨城県の一部を襲った「大きなヒョウ」
 この記事の筆者の友人Aさんの話ですが、当時千葉県北西部に住んでいた彼は、その日、高校の中間テストを終えて帰宅の途についたときに、この「異常気象」に出会ったそうです。
 空から降ってきたのは……なんと、ミカン大ほどのヒョウ。
 ヒョウとは、空から降ってくる氷の塊で直径5ミリ以上のものを指します(5ミリ未満は「あられ」)。降ヒョウは短時間の現象で、ほとんどが10分以内に収束します。しかし、瞬く間に30センチ以上も積もることもあります。

 2000年5月24日水曜日、午前中はよく晴れていましたが、正午過ぎになると、千葉県北西部に、北西の方角から漆黒の雲が近づいてきました。そして、夜のように真っ暗になり、大粒の雨とともに、氷が混じりはじめます。さらにその氷はミカン大の大きさなり、一時は数メートル前すらよく見えないほど。木の枝は折れ、部屋の窓ガラスは割れ……という状況。
 Aさんはそのときビニール傘を差していたそうですが、ヒョウがビニールを貫通しはじめたため、近くの知り合いの家に避難させてもらったといいます。また、お店の看板が割れているのを目撃したとも。おそろしい光景です。

■どうしてヒョウは降ってきたのか?
 では、どうしてこの異常気象は起きたのでしょうか。金子大輔さんは次のように説明をします。

 関東甲信地方は、気温が高くなる初夏〜夏季に降ヒョウが多くなります。空気が温暖湿潤になり、大気の状態が不安定になりやすいからです。
 「不安定な状態」とは、地表と上空高いところの気温のバランスが崩れ、大気が上下にかきまぜられやすい状態です。こうなると積乱雲(雷雲)が発生しやすくなります。きわめて発達した積乱雲は、ときに大きなヒョウを降らせるのです。特にスーパーセルと呼ばれるタイプの積乱雲は、グレープフルーツ以上、ときにカボチャ大のヒョウを降らせるという地球最凶の雲です。
 この日、上空約5500メートルにマイナス18℃以下の強い寒気を伴う気圧の谷が通過。一方で晴れていたために地上気温が高くなっていました。そこへ低気圧が接近、いろいろな方向の風がぶつかり合って積乱雲の発生を後押しました。ほかにも巨大な積乱雲が発達しやすい条件が重なって雲はミニスーパーセル化し、ミカン大の降ヒョウにつながったのです。
 ちなみに、2000年は雷の当たり年ともいわれ、関東甲信地方のヒョウ害に見舞われた日数も1980年から2002年の間では最も多い23日でした。

 私たちの日々の生活は、毎日が似ているように思えても、まったく同じということはありません。天気も同じです。金子さんは本書のあとがきで「天気図において、似ているものはあっても同じものは一つとしてありません。今日の天気は、今日たった一回だけです」と述べています。
 だからこそ、天気を予測するのはとても難しいことなのだといえます。
 本書では、スーパーセルや竜巻、ゲリラ豪雨、ゲリラ豪雪など過激な気象現象がたくさん紹介されていて、追体験できるように書かれているので、中には読んでいて怖くなってしまう人もいるかもしれません。
 しかし、「どうして異常気象は起こったのか」ということを知るのは大事です。似たような天気図になっているときに、空で何が起ころうとしているのかを予測する。それがひいては自分や大切な人の身を守ることにつながるはずです。
(新刊JP編集部)


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