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『錻力の太鼓』(’81)/JAPAN

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JAPAN最後のオリジナルアルバムにして不動の評価を得た『錻力の太鼓』本国イギリスよりも日本で最初に人気に火が付いたバンド、JAPANが1981年にリリースしたのが結果、最後のオリジナルアルバムとなった『TIN DRUM(邦題:錻力の太鼓)』である。デヴィッド・シルヴィアンを始めとするメンバーのビジュアルが際立っていたこともあり、アイドル的存在として支持されていた彼らが自己の音楽を追求する中でワン・アンド・オンリーと評される独創的世界を作り上げたのがこの作品である。解散の理由はメンバーの不仲などいろいろ説があるが、作品というフィルターを通して思うことは、次なるヴィジョンが見えなくなるほどJAPANは完成形に辿り着いてしまったのかもしれないということだ。


1974年にデヴィッド・シルヴィアンを中心に結成されたJAPANは1978年にデビューアルバム『果てしなき反抗』をリリース。メンバーはデヴィッド・シルヴィアン(Vo)と実弟のスティーヴ・ジャンセン(Dr )、ミック・カーン(Ba)、リチャード・バルビエリ(Key)、ロブ・ディーン(Gu)の5人で、英国では鳴かず飛ばずの状態だったが、その類いまれなルックスに目を付けた日本の音楽雑誌などが強力プッシュし、アルバムは初日で1万5000枚を売り上げ、同年わずか2カ月後にリリースされたアルバム『苦悩の旋律』もヒット。翌年の1979年には初来日にして初の日本武道館公演を成功させる。なんだか、バンド名からして戦略があったようにも思えるが、当時のインタビューでメンバーが「JAPANというバンド名にはたいして深い意味はない」と答えているので、本人たちにとっても思いがけない事態だったのかもしれない。実際、当時の女子の熱狂度はQUEEN以来と言っていいぐらいだった。
そして、結成当初、ほとんどのメンバーがバンド初心者だった彼らはシーンの渦の中に巻き込まれつつも、着実にミュージシャンとしてのスキルを高めていく。初期のグラムロック、ファンクに影響を受けた楽曲も魅力的ではあったが、来日した年にリリースされたアルバム『クワイエット・ライフ』のプロデュースを手がけたのは、ロキシー・ミュージックを手がけたジョン・パンター。シンセの名器、プロフェット5を取り入れたサウンド、ミック・カーンのフレットレスベース、ブライアン・フェリーやデヴィッド・ボウイに通じる色気と退廃的ムードのあるデヴィッド・シルヴィアンのヴォーカルが本国でも認められ始める。
そんなJAPANとYMOがデビューしたのは同じ1978年。1980年に発売された4枚目のオリジナルアルバム『孤独な影』にはレコーディングスタジオが隣だったという縁で坂本龍一が参加しているが、もともとデビューアルバムに「コミュニスト・チャイナ」という曲を書くほど漠然としたオリエンタル指向を持っていたデヴィッド・シルヴィアンと人民服にテクノカットで世界を視野に成功を収めたYMOがつながったのは必然のようにも思うし、ロキシーミュージックとともに英国ツアーを回ったサディスティックミカバンド(ドラムは高橋幸宏)を世代的に彼らが知らなかったはずはない。深い意味はなくJAPANというバンド名は付けられたのかもしれないが、日本のミュージシャンやカルチャーとの関わりも彼らの生み出す曲に影響を与え、たぶん、その麗しいビジュアルからは想像も付かない地道な努力と探究心によって、最後のオリジナルアルバム『錻力の太鼓』へと行き着いたのだ。
ちなみにこのアルバムの制作前にギターのロブ・ディーンが脱退し、ツアーには一風堂の土屋昌巳がサポートギタリストとして参加。JAPANが日本のミュージシャンに与えた影響も大きく1996年に発表されたトリビュート・アルバム『ライフ・イン・トウキョウ〜JAPAN・トリビュート・アルバム』には土屋昌巳を始め、ex.SOFT BALLETの藤井麻輝、森岡賢、DER ZIBETのISSAY 、LUNA SEAのRYUICHI、SUGIZO、LA-PPISCHのTATSU、DOOMの藤田タカシなどそうそうたるメンバーが参加している。

アルバム『TIN DRUM(邦題:錻力の太鼓)』
JAPANのアルバムの中で最もアーティスティックで実験的でオリジナリティーにあふれたアルバム。だからして決してポップな作品とは言えないが、プロフィット5を効果的に使ったサウンド、オリエンタルでエキゾティックなアプローチは試行錯誤の末に彼らが辿り着いた境地だ。アルバムのタイトルはドイツの作家、ギュンター・グラスの異色作からインスパイアされて付けたと言われ、ラストナンバーには広東の少年に錻力の太鼓を叩けという歌詞が出てくるが、本作の肝もリズムなのではないかと思う。ドラムマシーンのように正確なスティーヴ・ジャンセンのビートに今は亡きミック・カーンの個性の塊のような自由奔放にうねるベース。リチャード・バルビエリの東洋的なフレーズ。そこにデヴィッド・シルヴィアンの粘りっけがあり、内省的なヴォーカルが絡んでいく世界は、アルバムのジャケットのように奇妙でもあり、異次元の扉を開くような感覚に襲われる。テクノ、ニューウェイブの波の中で生み出された作品ではあるのだが、西洋と東洋が摩訶不思議な次元でクロスしているこのアルバムは今、聴いてもやっぱり、いい意味でストレンジだ。なお、シングルとして発売された「Ghosts」は英国でJAPAN史上、最高のヒットを記録。にもかかわらず、彼らは解散してしまう。デビューから、わずか4年。驚異の進化を遂げてその幕は降ろされた。

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