近畿で初、篠山市制定「手話言語条例」の期待

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篠山市が「手話言語条例」を制定する方針を固めた

近畿で初、篠山市制定「手話言語条例」の期待

篠山市は、耳の不自由な人が暮らしやすい地域社会の実現を目指す「手話言語条例」を制定する方針を固め、5月28日には、有識者や聴覚障害者、手話通訳者らでつくる条例検討委員会が発足しました。まだ検討を始めたばかりですので、どのような条例になるのか、今のところはまだわかりません。

しかし、先立って制定された各地の条例からみると、「手話が言語であること」を確認し、「手話の普及に関し自治体、及び住民の責務及び役割」を明らかするとともに、「ろう者とろう者以外の者が共生することのできる地域社会を実現すること」を目的とする内容になることは、ほぼ間違いないと考えられます。そこで、今回はこの内容に沿って検討してみます。

手話を普及させ、サポートしていく社会をつくる一歩に

まず、「手話が言語であること」についてですが、個人的には、これが確認されなくても、言い換えれば、言語であろうとなかろうと、手話を普及させ、サポートしていくことは可能だと思います。しかし、おそらく、手話法が言語情報によるコミュニケーションを阻害するものとして、いわゆる口話法の推進者から必ずしも好意的に受け止められてきたわけではなかった、という歴史的経緯にも考慮して、手話の言語性を初めて認めた改正障害者基本法に重ね、各条例でも確認されているのだろうと考えます。

では次に、最も大切な「ろう者とそれ以外の者の共生」について考えてみましょう。事がコミュニケーションの話である以上、ここでいう「共生」とは、基本的にはコミュニケーションツールの共有と習得を意味するものと考えられます。そして、仮に、ろう者が口話法の習得を強制されるのであれば、これは「ろう者」の側が「ろう者以外の者」のコミュニケーションツールの習得を強要されることを意味します。

しかし、改正障害者基本法や各地の条例はそのような態度を取っておらず、手話の使用しやすい環境の整備や、手話の普及に向けた取り組みを国や各自治体に求めています。これは、住民の側からみれば、「ろう者以外の者」が「ろう者」の方に歩み寄ってコミュニケーションを構築する努力をすることを意味します。

手話言語条例は、基本的には憲法の理念に則ったもの

「個人の尊重」(憲法第13条)とは、人をそのまま、ありのまま受け入れることをいいます。そして、それは換言すると、多様な選択肢を社会でコストをかけて用意することです。特に身体の障害というのは、一定の割合で必ず出現するともいわれており、そうであれば、これを平準化するためのコストは、社会で負担するのに適したコストであるともいえます。

その意味では、「ろう者以外の者」にほんの少しの負担と配慮を求める手話言語条例は、基本的には憲法の理念に則ったものとして評価すべきであろうと考えています。

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