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日本経済の悲観的シナリオを考えるための良書: 虚構のアベノミクス―株価は上がったが給料は上がらない、野口悠紀雄

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今回は藤沢数希さんのブログ『金融日記』からご寄稿いただきました。
※すべての画像が表示されない場合は、http://getnews.jp/archives/402368をごらんください。

日本経済の悲観的シナリオを考えるための良書: 虚構のアベノミクス―株価は上がったが給料は上がらない、野口悠紀雄


(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
http://px1img.getnews.jp/img/archives/2013/08/abe-hikan01.jpg

「虚構のアベノミクス――株価は上がったが、給料は上がらない [単行本(ソフトカバー)]」 野口悠紀雄(著) 『amazon』
http://www.amazon.co.jp/gp/product/447802541X/

民主党政権の時は、日経平均が8000円ぐらいで低迷していた。それが、安倍政権になってから一時は2倍の1万6000円間近になっていたのだから、アベノミクスを批判する声は、株高にかき消されてしまった*1。

*1:「いまのところアベノミクスは完璧に上手く行っているように見えるが…」 2013年05月17日 『金融日記』
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/51964677.html

アベノミクスと言っても、目新しいのは、黒田日銀総裁による大規模な量的緩和*2と、それによって引き起こされてきた円安効果である。円安になると、円で見る株価は名目で上昇するし、また輸出企業を中心に円で見る企業業績も改善するので、これも株高につながる。アベノミクスは、円安バブルと株価バブルを引き起こし、それによって人々のセンチメントを改善することが狙いだった。そして、それは概ね上手くいってきたといえる。

*2:「量的緩和と株式投資家のバカの壁」 2013年03月01日 『アゴラ』
http://agora-web.jp/archives/1521896.html

問題は、これから実体経済が本当によくなるのかどうかだ。野口悠紀雄氏は、昔から、強い円が日本の国益である、という円高論者で、規制緩和による構造改革でのみ日本経済を成長させられる、という考えの学者である。その点で、安易な円安誘導で、生産性の低い産業を温存させ、産業構造の転換を遅らせるアベノミクスには非常に懐疑的であった。また、アベノミクスが、日銀による国債引き受けで、政府の財政赤字をファイナンスさせるという性質を強く帯びていることから、このことによる財政破綻のリスクに警鐘を鳴らしてきた。

野口氏は、データを重視する経済学者なので、本書には様々な統計資料がわかりやすくまとめられているのもとても役に立つ。たとえば、本書によって、金額で見ると、円安によって輸出が増えているように見えているが、実際には輸出「数量」は減っていること、人々の賃金は横ばいかむしろ下がっており、目立って上がったのは自動車産業に限られること、その自動車産業の増益は、ほとんどがエコカー補助金、つまり税金から来ていることなどが明らかになる。

たとえば、2013年3月期のトヨタ自動車の営業利益は、前期比3.7倍の1兆3000億円である。これこそが円安を引き起こしたアベノミスクの成果だと宣伝されるのだが、じつはトヨタ自動車の2012年4月~6月期の営業利益は3500億円、2012年7月~9月期の営業利益は3400億円で、ドル円が80円だった民主党政権の時代からすでに利益が出ていたのだ。これは東日本大震災やタイの洪水などで落ち込んだ分の反動とエコカー補助金で説明できる。安倍政権が賃金の引き上げを迫ったときに、自動車産業が速やかにボーナスを支給したのは、政府に対する借りを返しただけなのだ。他の産業は、依然として賃金を引き下げている。

実際に、原材料を輸入して日本で加工する住友化学や新日鉄住金などの素材型産業は、円安による原材料の価格高騰や電気代の引き上げで、むしろ利益が圧迫されている。自動車産業も、円で見た利益は増えているのだが、じつは販売台数は減っているのである。このように、意外と実体経済は上向いていないことが、本書のデータから次々と浮き彫りになる。

僕も、好むと好まざるとにかかわらず、すでに後戻りできないアベノミクスが上手くいってくれることを祈っている日本人のひとりだ。しかし、本書は、アベノミクスによる資産価格の上昇から経済が好転するというシナリオが失敗したときに、日本経済がどうなるのかを考える上でとても役立つ指針を与えてくれている。読んでおくべき本の一冊だろう。

執筆:この記事は藤沢数希さんのブログ『金融日記』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年08月21日時点のものです。

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記者:

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