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公開から13年を経てもなお不定期で注目を集める教育改革国民会議『子どもへの方策』

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教育改革国民会議は2000年に当時の森喜朗首相の下で首相官邸に設置され、教育制度改革を議論していた諮問機関です。同年12月に最終報告を取りまとめるまでの間、森首相が強く提唱していた「奉仕活動の義務化」など様々な課題がこの会議で議論されていました。当時の議事録や資料は首相官邸のサイトで現在も公開されているのですが、それらの資料の中でも公開当初からネット上でひときわ注目を集めたのが『1.子どもへの方策』と題する文書( http://www.kantei.go.jp/jp/kyouiku/1bunkakai/dai4/1-4siryou1.html )です。

この『1.子どもへの方策』は「人間性」をテーマとする会議の第1分科会で第4回の資料として、第1回から第3回までに委員から出された意見を事務局が個条書きにして取りまとめたものですが、以下のように一部を抜粋してみただけでもとにかく内容が振るっています。

幼児~高校生共通
団地、マンション等に「床の間」を作る
遠足でバスを使わせない、お寺で3~5時間座らせる等の「我慢の教育」をする
有害情報、玩具等へのNPOなどによるチェック、法令による規制

小学生/中学生
簡素な宿舎で約2週間共同生活を行い肉体労働をする

高校生
満18歳で全ての国民に1年ないし2年間の奉仕活動を義務づける

大人、企業
企業は1年間に5日程度父親が教育に関われるよう休暇を作る
名刺に信念を書くなど、大人一人一人が座右の銘、信念を明示する

行政
子どもを厳しく「飼い馴らす」必要があることを国民にアピールして覚悟してもらう
「ここで時代が変わった」「変わらないと日本が滅びる」というようなことをアナウンスし、ショック療法を行う
出産後の親業教育の義務化
バーチャル・リアリティは悪であるということをハッキリと言う
警察OBを学校に常駐させる
教育基本法を改正を提起し、従来の惰性的気風を打ち破るための社会的ショック療法とする

この資料は飽くまでも委員から提示されたアイデアを個条書きにしたものなので、これらが全て2000年12月に公表された最終報告に盛り込まれたわけではありません。例えば森首相が強くこだわっていた「奉仕活動の義務化」は憲法18条の「意に反する苦役」に当たるのではないかと指摘を受けて「奉仕活動を全員が行うようにする」と“努力目標であって強制ではない”ことを強調するニュアンスに改められました。それ以外の項目について見て行くと「教育基本法改正」や「警察OBの学校への常駐」を始めとして後に実行へ移されたものがいくつか見られます。また、今のところは成立をみていませんが「有害情報、玩具等へのNPOなどによるチェック、法令による規制」は国民会議の最終報告が公表される前後より自民党が議員立法で『青少年有害社会環境対策基本法』を制定する動きとして現れており、13年を経た現在もなお自民党は後継法案の『青少年健全育成基本法』制定を公約しています。また、本来「“実在する”児童を性的虐待から保護する」ことが立法趣旨であるはずの児童ポルノ禁止法で「非実在青少年の性表現全面禁止」を前提にした予備調査の実施に自民党が固執し続けているのもその一環と言えるでしょう。

小・中学生に対する「簡素な宿舎で約2週間共同生活を行い肉体労働をする」は、その後も自民党議員を中心に「徴農制度の導入」がしばしば提唱されるなど形を変えながら継続しており、また「出産後の親業教育の義務化」に関しては疑似科学として悪名高い“親学”の影響が色濃く出ています。しかし、この会議の性格を最も端的に現しているのは何と言っても“子どもを厳しく「飼い馴らす」必要があることを国民にアピールして覚悟してもらう”でしょう。ここはいくら委員の個人的な意見とは言え『子どもへの方策』と題した資料でこれを取り上げること自体が会議事務局の性格を反映しているものと受け止められ、公表直後から「子どもを家畜のように扱っている」と言う批判が相次いだ部分です。

この資料自体は過去のアーカイブとして残されているものですが、最終報告の後も3年おきぐらいの間隔で話題にのぼることがあります。特に、第1次安倍政権が国民会議の実質的な後継組織である教育再生会議を立ち上げた際は国民会議の最終報告を出発点にしていただけあり、この『子どもへの方策』が何度も引き合いに出されました。そして国民会議から13年が経過し、第2次安倍政権でも教育再生実行会議が設置されたことで最近もまた『子どもへの方策』が注目を集めているようです。最後に、この資料の代名詞とも言える扱いになった“バーチャル・リアリティは悪であるということをハッキリと言う”は、議事録によれば曽野綾子委員が2000年6月15日に開催された第2回分科会で行った以下の発言を要約したものとみられます。

私なんか小学校3、4年生の頃菊池寛の『真珠婦人』などをこっそり読んで、こんなおもしろいものがあるのに、学校の試験勉強なんかしていられるかと思ったほど、そのときは感動いたしました。やはり、人間を大人にするというものは、テレビではなくて、文学である、あるいはお芝居である、あるいは音楽であるということをはっきり 言っていただいて、そして私はここでバーチャル・リアリティはある面では悪であるとはっきりおっしゃっていただきたいと思います。何で遠慮して、バーチャ ル・リアリティはすべていいものだと言われなければならないかということがわかりません。もちろん、バーチャル・リアリティというのは、例えば私の知る限 りの範囲ですが、パイロットの訓練などにおいてはバーチャル・リアリティというものは随分有効でしょう。ですから、これは全部悪いというものではないけれ ども、「自分が全くそれにコミットしなくて、あたかも人生を味わったように思うバーチャル・リアリティは悪である面が多い」ということを言っていただきた いと思います。

出典: http://www.kantei.go.jp/jp/kyouiku/1bunkakai/dai2/1-2gijiroku.html [リンク]

なお、曽野委員は現在の教育再生実行会議においても委員として選任されています。

画像:教育改革国民会議のトップページ

http://www.kantei.go.jp/jp/kyouiku/ [リンク]

※この記事はガジェ通ウェブライターの「84oca」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?

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