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窪美澄、新刊『アニバーサリー』を語る(3)

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 出版界の最重要人物にフォーカスする『ベストセラーズインタビュー』!49回目の今回は、3月に発売された新刊『アニバーサリー』(新潮社/刊)が好評の窪美澄さんです。
 『ふがいない僕は空を見た』で第24回山本周五郎賞、『晴天の迷いクジラ』で第3回山田風太郎賞を受賞した窪さんは今最も勢いのある作家。そんな窪さんに、新刊について、読書について、さらには創作者としての才能についてと、さまざまなテーマでお話を伺いました。最終回の今回は、ご自身の読書や好きな本について語っていただきました。

■「『アニバーサリー』は、しんどさの先にちょっとした光が見えてくる」
―次に、読書についてお話を伺えればと思いますが、一番本を読んでいたのはいつ頃でしたか?

窪「小学校の時かな。2週間に1度、市立図書館に近所の友達を誘って行って、借りられるだけ借りて、返して、また借りて、っていうのをやっていました」

―当時読んだ本で今でも好きなものはありますか。

窪「小学校の図書室にあった『ぼくは12歳』っていう詩集は今でも好きです。飛び降り自殺してしまった男の子の詩集で有名な作品なんですけど、図書館の書棚で見つけた時から変なオーラがあったんですよね。
短い言葉で書かれた詩集なんですけど、世の中を変だな、おかしいなと思って拒絶している子どもの言葉がザクッと書いてあって、そういう言葉と出会ったのは初めてでした。当時読んでいた、たとえば『赤毛のアン』シリーズのような作品とは違った、影を感じるもので、すごく心に引っ掛かりました」

―窪さんが人生で影響受けた本を3冊ほどご紹介いただければと思います。

窪「衝撃を受けたのは、高校生の時に読んだ村上龍さんの『コインロッカー・ベイビーズ』です。それまでは、それこそ安岡章太郎さんとか井上ひさしさんとか、教科書に出てきそうなものしか読んでいなくて、それはそれで面白いんですけど、自分の生活と地続きではないという感じもしていました。
でも、村上龍さんとか村上春樹さんの作品からはすごく身近な空気感を感じたんです。特に『コインロッカー・ベイビーズ』にあるようなイメージの激しい羅列っていうのは、初めて読んだ時はびっくりしたのを覚えています。
もう一冊は、白石一文さんの『僕のなかの壊れていない部分』。さっきの話と関係するんですけど、35歳くらいの時に“なかなか地球は終わらないな”と思っていて、その時にふと“小説を書いた方がいいんじゃないか”と思ったんです。でも、自分に書く資格があるかとか、書くべきか、とか考えるじゃないですか。そんな時に白石さんの本を読んで、書いてもいいんだと思えたんです。
当時、母子関係や夫婦関係についてすごく考えていたんですけど、そういうことって考えてはいけないことなんじゃないかという罪悪感もあったんです。“子どもは健康だし、夫もいるんだから小説なんて書かなくてもいいんじゃないか”っていうことなんですけど、その本を読んで、自分がどうしても目を背けられない、気になるテーマが小説の題材になるとわかって、やっぱり書くべきだなと思いました。
最後は、高校生の時に読んだ『女生徒』。最近読み返してやっぱりすごいなと思いました。女心というものをよくぞここまで、という。その中の『皮膚と心』っていう短編があって、奥さんが皮膚病を患ってしまうお話なんですけど、それが特に良かったです。16歳の時に読んですごいと思って、47歳で読んでもすごい作品ってなかなかないですよね」

―ご自身の作品に一貫するものがあるとしたら、どのようなものだとお考えですか。

窪「どの作品もそれぞれ悲惨な状況と言うか、つらい状況を書いていると思いますが、そんな中でも生きているうちは生きないと仕方ないということだけですね。
状況って変わっていくもので、死ぬ直前、最後の最後で楽しいことがあるかもしれないんですよ。いいことも悪いことも続きません。
“諦めるな”というとすごく嫌らしいですが、“明日起きたら、少しがんばってみようかな、と思えるかもしれないね”くらいのことは言いたいです。あまり大声では言いたくないですけど、読んでくださった方がそういうことを感じ取ってくれたらうれしいですね」

―最後になりますが、読者の方々にメッセージをお願いできればと思います。

窪「『アニバーサリー』に関しては、読んでいてしんどいと言われるんですけど、そのしんどさの先にちょっとした、針の先くらいの光が見えてくると思います。なので、しんどさに耐えて(笑)、読んでいただけるとうれしいです
地震のことも原発のことも日々移り変わっていますけども、“みんな不安定なんだ”っていう認識を持つだけでも安心することはあると思います。だから“声出して行こうぜ!”じゃないですけど、気持ちをあまり閉じ込めないで、わからない、とか、不安だ、ということを小さくてもいいので、声に出して言った方がいいですよ」

■編集後記
作家というのは案外口下手な方が多いというのが、乏しい経験ながら実感としてあったのですが、窪さんは自身の作品についてだけでなく、創作や才能などあらゆることを整頓して話してくださいました(テープ起こしから記事にするまでの作業がこれまでで一番スムーズだったかもしれません)。
『アニバーサリー』は様々な時代や背景の中を生きる女性たちが描かれ、老若男女のめり込める一冊。それぞれの苦しさを越えて、小さな希望に至る彼女たちの姿をぜひ読んでみていただきたいと思います。
(インタビュー・記事/山田洋介)



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