スマートフォンの速度調査 6か月前と後の推移で分かったユーザー満足度の現状
MMD研究所がドコモ・au・ソフトバンクの各キャリアのユーザー400人、計1200人を対象にした調査結果『携帯キャリアのネットワーク実感調査』を発表しました。この調査のユニークなところは、6か月前と比べた「通信速度」と「つながりやすさ」の実感を調査していること。MMD研究所は2012年10月に『iPhone 5』、11月にAndroidスマートフォン、2013年4月にiPhone/Androidについて、通信速度と4G/LTEの捕捉状況を実機で調査しています。こちらの調査結果の推移とユーザーの実感は相関があるのでしょうか。これら調査結果をひもといて見ていきたいと思います。
Androidはソフトバンクの速度向上とauのLTE捕捉率が目立つ
まず、Androidスマートフォンを利用した2012年11月の調査結果と2013年4月の調査結果から推移を見ていきましょう。調査は11月には全国9都市の45か所、4月には23都市の100か所で実施。ダウンロード速度はベンチマークアプリ『RBB TODAY SPEEDTEST』により11時から19時の時間帯に同じ条件下で3回調査し、平均値を出しています。LTEエリアは調査個所での4G/LTEの捕捉率を記載しています。参考に、調査に使用した端末も記載しておきます。
・ドコモ
ダウンロード速度
10.22Mbps→15.37Mbps
4G/LTEエリア
42/45(93.3%)→97/100(97%)
『Optimus G L-01E』→『Xperia Z SO-02E』
・au
ダウンロード速度
24.51Mbps→20.27Mbps
4G/LTEエリア
44/45(97.8%)→100/100(100%)
『AQUOS PHONE SERIE SHL21』→『HTC J butterfly HTL21』
・ソフトバンク
ダウンロード速度
18.36Mbps→27.04Mbps
4G/LTEエリア
33/45(73.3%)→91/100(91%)
『MOTOROLA RAZR M201M』→『AQUOS PHONE Xx 203SH』
ドコモ、ソフトバンクは通信速度(ダウンロード速度)、4G/LTE捕捉率がいずれも向上。特にソフトバンクは通信速度の向上が目立ちます。auは通信速度が若干低下していますが、4G/LTE捕捉率は100%という結果に。
iPhoneはソフトバンクの改善が目立つ
続いて、『iPhone 5』を利用した2012年10月の調査結果と2013年4月の調査結果を見ていきましょう。速度の調査方法/エリアの記載方法はAndoroidと同様です。
・au
ダウンロード速度
13.44Mbps→7.93Mbps
4G/LTEエリア
36/39(92.3%)→84/100(84%)
・ソフトバンク
ダウンロード速度
9.56Mbps→9.88Mbps
4G/LTEエリア
25/39(64.1%)→97/100(97%)
通信速度はauが低下したのに対して、ソフトバンクはやや向上。4G/LTE捕捉率はauが低下したのに対して、ソフトバンクは大幅に改善しています。
6か月でユーザーの体感はどう変化したか
Android、iPhoneそれぞれについて、約6か月の調査結果の推移をまとめると、次のようになります。
・Android
ドコモ:通信速度が向上、4G/LTE捕捉率が向上
au:通信速度が低下、4G/LTE捕捉率が向上
ソフトバンク:通信速度が向上、4G/LTE捕捉率が向上
・iPhone
au:通信速度が低下、4G/LTE捕捉率が低下
ソフトバンク:通信速度が向上、4G/LTE捕捉率が向上
上記の結果の推移は、ユーザーの実感としてどう影響しているのでしょうか。MMD研究所が4月18日に発表した『携帯キャリアのネットワーク実感調査』から、6か月前と比べた「通信速度」と「つながりやすさ」の実感の結果を見てみましょう。こちらは、各キャリアで400人ずつの計1200人のうち、「高速通信に対応する」と回答したユーザーを対象としています。
「通信速度」について、6か月前と比較して「速い」という満足度の高い回答は次のとおり。
ドコモ:28.9%
au:38.2%
ソフトバンク:44.1%
「つながりやすさ」について、「つながりやすい」という満足度の高い回答は次のとおり。
ドコモ:30.7%
au:40.7%
ソフトバンク:45.4%
ドコモは通信速度もLTE捕捉率も6か月で向上しているにもかかわらず、通信速度やつながりやすさに対するユーザーの満足度はそれほど高くないようです。一方、auはAndroidのLTE捕捉率が向上したほかは通信速度、LTE捕捉率が低下しているのにまだまだ満足度は高いという結果に。ソフトバンクはiPhoneにおける改善が影響したためか、6か月前と比べどちらも満足度が高いという結果になっています。
調査対象のユーザー属性は
この結果を評価する前に、『携帯キャリアのネットワーク実感調査』の調査対象となったユーザーの属性を確認しておきましょう。ドコモは97.5%がAndroidユーザー。auはAndroidが55.0%、iPhoneが44.0%という割合。ソフトバンクはAndroidが17.0%、iPhoneが82.0%と大半がiPhoneユーザーです。
この中から、「高速通信(4G LTE)に対応する」と回答したユーザーは、ドコモが54.5%(218人)。auは30.8%(123人)で、WiMAX対応ユーザーはこれに含まれていません。ソフトバンクは38.0%(152人)。つまり、ドコモユーザーはLTEサービス『Xi』対応Androidスマートフォンのユーザー、auは4G LTE対応のAndroidスマートフォンと『iPhone 5』、ソフトバンクは『Softbank 4G(AXGP)』対応のAndroidスマートフォンと4G LTE対応の『iPhone 5』という構成になっていることが分かります。
6か月前と後で各キャリアの満足度を分析
以上を考慮して、通信速度とつながりやすさに対するキャリア別の満足度を分析してみましょう。
ドコモは先行して『Xi』を導入、LTE対応ユーザーの数は多いものの、通信速度は15.37Mbpsと、Androidでは20Mbps以上を出しているau、ソフトバンクと比べて速度が出ていないという現状。LTEが捕捉できていても、20Mbps以上の体感が得られないとユーザーの満足度につながらないのかもしれません。下り75Mbpsエリアの拡大、一部エリアで導入を開始した下り112.5Mbpsのサービスの拡充が今後ユーザー満足度向上のカギを握りそうです。
auはAndroidでは通信速度が低下したものの20.27Mbpsを実現しており、LTE捕捉率も100%となっていることから、Androidユーザーの満足度は高いものとみられます。一方、iPhoneでは通信速度とLTE捕捉率の低下が見られ、全体のユーザー満足度を下げる要因になっているかもしれません。Android/iPhoneを一緒にした調査結果なので、正確な評価は難しいところですが、iPhone向けネットワークの改善が今後の課題と言えそうです。
ソフトバンクはAndroidとiPhoneで周波数帯を分けており、特にユーザー数の多いiPhoneはこの半年でのネットワーク整備が功を奏したということなのか、効果か通信速度とLTE捕捉率が向上。ユーザーの満足度は高い結果に。通信速度は微増ですが、LTE捕捉率は64.1%から97%と大きく改善していることが要因と考えられます。6か月前の数字があまりよくなかったともいえますが、ユーザーにとってはより速さとつながりやすさの向上が実感できるという結果になっています。
出展:MMD研究所
『携帯キャリアのネットワーク実感調査』(MMD研究所)
http://mmd.up-date.ne.jp/news/detail.php?news_id=1188
宮原俊介(エグゼクティブマネージャー) 酒と音楽とプロレスを愛する、未来検索ブラジルのコンテンツプロデューサー。2010年3月~2019年11月まで2代目編集長、2019年12月~2024年3月に編集主幹を務め現職。ゲームコミュニティ『モゲラ』も担当してます
ウェブサイト: http://mogera.jp/
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