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クラウドをめぐるリアルな戦い(経済ジャーナリスト 深川孝行)

『IT批評 0号 特集:システム×ストーリー』

『IT批評 0号 特集:システム×ストーリー』(2010年6月刊行)より深川孝行さんの「クラウドをめぐるリアルな戦い」を転載。

クラウドをめぐるリアルな戦い

IT事業を支えているのはインフラである。このインフラをめぐって、2つの大きな戦いが起きている。1つはデータセンター建設、もう1つは携帯電話のアンテナ建設である。仮想空間の覇権を目指し、リアルな駆け引きが繰り広げられている。

「コンテナ型」で後塵を拝す日本

 
 世界のコンテナ取扱港ランキングで、大きく順位を下げる日本の港湾。「物流のハブ」は釜山やシンガポールに先を越され、このままでは「辺境」にもなりかねない。

 しかし、クラウド・ビジネスの「キモ」ともいうべき、「情報」の集散地、「データセンター」についても、日本のスタンスはこのままでは「物流の二の舞」となりかねない状況で、しかもキーワードがまたしても「コンテナ」なのだから皮肉というほかない。

 ITで先頭を走る米国では、データセンターといえば今や「コンテナ型」が主軸となりつつある。これは、まさに「コンテナの中に数百〜1千強ものサーバと、付属する配線類やストレージ、冷却装置など必要機材を丸々詰め込み、データセンターの最小単位を構築したもの」と定義すればいいだろうか。

 まさに「モジュール化」だ。筐体には国際標準であるISO668の「20フィートコンテナ(1TEU)。6m×2・4m×2・6m」や、この2倍の「40フィート(全長約12m)/2TEU」を流用するのが主流。サーバ収容能力はメーカーや冷却方式などでばらつきがあるものの、2TEU の場合で1500〜1700U(サーバーユニット)といったところ。

「コンテナ型」の最大の「ウリ」は2つ。1つは、「コスト」、そしてもう1つは「機動性」だ。まず前者だが、既存の「建物型」の場合、鉄筋コンクリート製上屋の建設には莫大なコストと時間・手間が掛かる。だが「コンテナ型」ならば極端な話、敷地さえ確保できれば、数週間で巨大なデータセンターを持つことが可能だ。生き馬の目を抜くIT界において、「工期1年」などという悠長な施設建設はもはや「リスク」以外の何ものでもない。瞬時にデータセンターを立ち上げ、ビジネスチャンスを逃さない。「コンテナ型」が支持される所以がここにある。

 実際米国では、地下駐車場やビルの屋上、既存の倉庫など、空きスペースを有効活用する形でコンテナを敷き詰めた即席のデータセンターが活躍している。

 また「建物型」の場合、サーバの設置や増強のたびにSEや配線業者など技術者の応援を必要とする。一方「コンテナ型」は工場で量産されるので、その後内部をいじくる必要はない。予定地に「ポンポン」と並べて、配線や冷却水用のホースを繫げれば増設・更新は完了。まさに「フルターンキー」そのものの発想である。ちなみに冷却方法には水冷式、空冷式の2方式があるが、昨今の環境配慮の風潮とランニングコストの面から、外気を使った空冷式へと主軸が移りつつある。

 また電力消費量に関しても、「コンテナ型」は「建物型」に比べて秀でているという。コンテナという必要最小限の空間だけを重点的に冷やせばよく、またコンテナの筐体を通じて直接外に放熱される部分もあるため、結果的にエネルギーロスが少ないという。

 一方後者だが、これは1にも2にも「国際標準の1/2TEU コンテナに、データセンターを収納した」という発想が秀逸だ。国際標準コンテナならば、世界中の船舶や鉄道、トレーラー、港湾のクレーンなど既存の物流システムにそのまま載せることができる。そのメリットは計り知れないだろう。

「まさに広大な国土を誇る米国ならではの発想。内陸の長距離輸送は貨物鉄道、最寄りの貨物駅から目的地まではトレーラー、さらに海外展開にはコンテナ船と、積み替えが容易。加えてコンテナの筐体そのものを〝入れ物〞として使うので、空になったコンテナを『通い箱』よろしく持ち返る手間もない。また戦略上データセンターを移動させたい時は、短期間で撤収できるし、さらに不必要になったデータセンターをコンテナごと転売するのも楽。『建物型』ではこうはいかない」

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