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海外のサーバーから~って、警察はぜんぜんIP偏重を懲りてない

海外のサーバーから~って、警察はぜんぜんIP偏重を懲りてない

今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

海外のサーバーから~って、警察はぜんぜんIP偏重を懲りてない

「【遠隔操作ウイルスの戦慄】(下)崩壊するネット秩序 「書き込み放題」現実に」(1/4ページ)」 2012年10月22日 『MSN産経west』
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/121022/waf12102208120001-n1.htm

警察当局の苦悩は深い。ある警察幹部はいう。「海外の複数のサーバーを経由させて発信元を分からなくする匿名化技術を使われたら、世界中の国がすべてのサーバーに通信記録の保存を義務づけない限り、たどるのはほぼ不可能だ。国内で何らかの規制を考えないと、まったく手が出せない日がいずれやってくる」

遠隔操作ウィルスの件で馬鹿の一つ覚えのように出てくるフレーズがある。「海外のサーバーから」だ。警察関係者の話として必ず出てくるし、マスコミも鵜呑みにしてそのまま報道している。

この言葉を読むたびに俺は、警察は冤罪を生んだIPアドレスの偏重に、何も懲りてないんだなと、悲しくなる。IPアドレスをたどったら海外からのものだった。ICPOを介して海外の警察に問い合わせているが、捜査が進まない…いつもこれだ。

Torの出口ノードが海外にあってよかったと思う。もしこれが国内だったら、警察は出口ノードのIPアドレスからその住所を割り出し、そのPCの持ち主を逮捕して、自白強要→冤罪に追い込んだことだろう。

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マスコミも冤罪を生んだ警察のIPアドレスに頼った捜査を批判しているのに、同じ文脈で海外のサーバーを使った犯罪として、問題提起している。自分が書いていることの矛盾に気づかないようだ。

Torの仕組みは発信元(犯人)のIPアドレスがたどれないこと。掲示板などに記録されたIPアドレスと、犯人のIPアドレスは無関係だからだ。

だから出口ノードが国内にあって、掲示板に記録されたIPアドレスの持ち主を逮捕し、家宅捜索をしていくらそのPCを調べても、犯人のIPアドレスはわからない。

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Torを自分のPCで動作させていること自体は、なんら違法ではない。Torは中国など言論の自由が制限された国の国民にとって言論の自由を守る貴重なツールであり、Torを動かしているのはそれに協力している人たちだ。

最近ではエジブトやイランで民衆の言論を封じ込めようとする政府と自由を守ろうとするTorとの戦いがあった。Torは政府によるインターネット遮断に対抗する砦となって負けなかった。

「Recent events in Egypt」 2011年1月29日 『The Tor Blog』
https://blog.torproject.org/blog/recent-events-egypt

「Iran partially blocks encrypted network traffic」 2012年2月10日 『The Tor Blog』
https://blog.torproject.org/blog/iran-partially-blocks-encrypted-network-traffic

日本のマスコミの報道は警察発表を踏襲してTorをあたかも犯罪を助長するツールであるかのような偏った内容が多い。困ったものだ。最近の日本ほど言論の自由が安く見られる国もないのではなかろうか。

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このように非民主的な国の国民にとっては情報や言論の生命線ともいえるツールとそれに貢献している人々に対して、日本の警察は国内にあれば強引に令状をとって家宅捜索するつもりなのだろうか。

家宅捜索したところで真の犯人逮捕につながるような情報はそのPCには存在しない。出口ノードのPCは誰が発信者かわからないのだ。サーバーが海外にあるから真犯人を突き止められないというのは、警察のいいわけであり、まったく今回の事件でも警察は懲りていない。

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そもそも犯罪捜査とは何か?重大な犯罪は加害者と被害者の間に何らかのつながりがあるものだ。恨みや金銭的利害関係など。そのつながりを手がかりに捜査していく。誘拐事件なら身代金の受け渡しなどが、ひとつのポイントだろう。本来犯罪捜査というのはそういうものだ。

一方、昨今の警察は重大性がない(被害が軽微な)犯罪をやたら、「大変だ」「とんでもない犯罪だ」と煽って、取り締まろうとしている。被害ないというのは、被害者と加害者のつながりも希薄だということ。だから捜査も行き詰ってしまう。恨みでつながっているわけでもないし、金銭を求めているわけでもない。

警察はサイバー犯罪が捜査しにくいというが、それはサイバー犯罪だからではなく、もともとたいした事件ではないからなのだと思う。

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こんなことを書くと、犯罪予告を放置していいのか?と反論されるかもしれないが、放置していいと思う。犯罪は予告なしに行われることもあるだろう。むしろ本当に犯罪を犯したいなら、予告なしの方が成功する率は高いだろう。

もちろん予告したうえで本当に犯罪を犯す人間もいるだろうが、予告があろうがなかろうが、犯罪は起きるのだ。犯罪予告に右往左往しても犯罪抑止にはならない。むしろ犯人の思う壺だ。

犯罪予告が行われればその場所に関わる商売は、売上が減る。しかしそれは人々が犯罪予告に右往左往するからであり、一種の風評被害のようなものだ。人々がきにしなければ損害は生じない。人々考え方の切り替えが必要。

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ネットなんてない時代にも、いたずら電話とかで爆破予告はあった。子供の頃友達の家にもそういう電話がかかってきて、警察官が調べにきた。でもその犯人は捕まらなかったと思う。そもそもどれほど捜査をしたのだろうか。話を聞いて、とりあえず家の周りに不審なものがないか一周して、事件として記録し、それでオシマイだったのではなかろうか(子供だったから詳しいことは分からないが)。

金銭の要求などで犯人から何度も電話がかかってくれば逆探知も可能かもしれないが、一度きりの電話じゃ、犯人を突き止めようがない。

でもそれで社会はそれなりに回っていた。むかしからその程度のことなのだ。むしろネットを介した犯罪予告はIPアドレスによって発信元がたどりやすいから、犯人を捕まえやすくなったと思う。

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つまり警察は、電話による犯罪予告は犯人を捕まえられないから、あまり問題視しなかった。騒げば自分たちの無能さをさらけ出すだけだからだ。

一方ネットによる予告はIPアドレスによって犯人を特定しやすい。だからどんどん犯人を捕まえて、自分たちの有能さをアピールした。そして「警察はこんなに社会の安全を守っているんだ」と宣伝するために、さも重大事件のように、犯罪予告を取り扱い始めた。

最近の警察は、おかしい。そして人々はそれに気づいていない。このまま歩めば、警察はなんやかやと理由をつけて、どんどん権力強化の方向に進むだろう。警察が支配する社会というのは、結局は何をするにもビクビクする活力のない社会になる。ソ連など共産圏の国が停滞し、ついには滅んでしまったように。

誤った方向に進みつつある日本の警察と日本社会。どこかで方向を変えねばならない。

追記

「PC遠隔操作、海外サーバー捜査へ 各国に協力要請」 2012年10月22日 『朝日新聞デジタル』
http://www.asahi.com/digital/internet/TKY201210220118.html

パソコンの遠隔操作事件で、警視庁や神奈川県警などの合同捜査本部は、海外のサーバーを捜査するため、関係国への捜査員の派遣を検討している。捜査関係者が明らかにした。近く、警察庁を通じて各国に捜査協力を求める。

これもなぁ。上述のようにTorの海外のサーバーを調べたところで、なんの意味もない。自分たちで模擬的にTorネットワークを構築して、実際に手がかりが残るか、確認してみればいいのに。それともドイツ人だかフランス人だかを、自白に追い込むのだろうか。

例えば日本の警察がTorのプログラムを解析し、この方法なら犯人を追い詰められるという手法を編み出した上で、あとは現地のサーバーを調べるだけとなれば、他国に協力を仰いでもいいと思う。

しかし自分たちができないからといって、他国の警察に責任転換する(かのように見える)行為は、いかがなものか。「犯人を逮捕できないのは、他国の警察の協力が得られないため」とアピールしているようにしか見えない。相手の国の警察も困るだろう。

あるいは「一生懸命やってるんだ」というポーズだろうか。「おい、ヨーロッパのサーバを調べたのか」「いえ、でも調べても無駄かと…」「いいわけは聞かん、とにかくやれることはすべてやれ」みたいな、精神論が支配しているのだろうか。

もう警察上層部はパニックで冷静かつ合理的な判断ができなくなっているのかもしれない…。そしてそういう狂気ともいえる精神論が今回の被害者たち個人に向かい、その結果冤罪を生み出したかと思うと、改めて背筋が寒くなる。

参考サイト:
gohsuket: TORはチュニジア、エジプト、リビヤなど支援で利用は …『Twitter』
http://twitter.com/gohsuket/status/259842187674652672

執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

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