ありえないのにそこにある――傷にまつわる不思議な感覚

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ありえないのにそこにある――傷にまつわる不思議な感覚


「くっ……こんな天気の日は古傷がうずきやがるぜ……」
暑かったり寒かったり、雨だったり台風だったり、気候の変化や体調によって、古傷がうずく経験がある方も多いのではないでしょうか。私もその一人。痛くはないのですが、とにかくうずいてかゆい。

私の古傷は帝王切開の手術痕でございます。古傷と言って良いのかわかりませんが、立派な開腹手術ですし、きっと古傷の類いでしょう。そしてお腹といってもかなり下の方で、女性がボリボリかいて良い場所では決してない。
しかしただでさえあちこちがかゆくなるアレルギー体質、暑くて汗をかいて全身がかゆくなってついでに古傷もかゆかゆかゆかゆ……と、大変困ったものです。

かのヴィクトリア・ベッカムはブルックリン君、ロミオ君、クルズ君、そしてハーパーちゃんと、なんと4回も帝王切開をしているそうで、帝王切開がそう珍しくない海外においてもかなり多い回数に驚くことしきりです。ヴィクトリアはかゆくないんでしょうか、傷。
もちろん術後経過の個人差や、もともとの体質差もありましょうし、実際痛くもかゆくもないのかもしれませんが、もしつらくてもあんなクールビューティーでいるのなら、ヴィクトリアすっごいなあ。
しかし実は家でベッカム(夫の方)に「超かゆいんだけど」とか言っていたら……なんて想像するとちょっとキュンときちゃいますね。

そういえばずいぶん前に亡くなった私の祖父もよく古傷をかゆがっていました。祖父は事故で片足を切断していたのですが、その切断したあたりをかいてほしいとよく頼まれたものです。こどもの私が、その太ももの真ん中あたりでプツリと途絶え、きんちゃくのようにしぼられた形をした部分を一所懸命にかくのですが、どんなにいろいろなところをボリボリかこうと、「違う、そこじゃない」と言われてばかり。
当時の私は知らなかったのですが、これは“幻肢”といって、事故や病気で失った手足や体の一部、つまり存在しないはずの部位があたかも存在しているかのように感じる現象だったのです。

治ったはずの傷や、ないはずの四肢が痛んだり不快に感じるのはよくあることで、病気や怪我、手術などの強い痛みの刺激が脳に記憶されていることが深く関わっていると考えられています。祖父もきっと、実際にはもう存在していない足の部分のことを訴えていたんでしょう。

私の古傷も傷そのものがかゆい、というよりもっと何か別のところが気持ち悪い感じはよくします。かゆいところに手が届かない、傷そのものをかいてもしっくりこない“コレジャナイ感”が。もしかしたら幻の何かの感覚をつかんでいるのかもしれません。

もちろん手術痕の痛みやかゆみ、幻肢覚といったものは、その症状や原因、対処法も人それぞれで一概には言えません。大抵の場合はいずれおさまることが多いそうですが、痛みが改善されない時や幻肢痛(失われた体の一部に痛みを感じる現象)などのひどい症状が出た場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

※この記事はガジェ通ウェブライターの「ムラカミ」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?

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