5月病のあなたに贈りたい『世界の終わり』展

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世界の終わり1

5月も終わろうとしています。

4月からの新生活にも慣れ、ゴールデンウィークが終わったこのころから、多くの人々がむやみな倦怠感(けんたいかん)に襲われます。そう、5月病です。「会社に行きたくないな……」「なーんにもやる気が起きないな……」「生きるのが面倒くさくなってきたな……」そんなプチうつ状態のときこそ、残る気力をふり絞ってお台場に駆けつけてほしいと私は訴えます。

ダイバーシティーのガンダム立像に癒されるのではありません(それでもOKですが)。日本科学未来館で6月11日まで開催の『世界の終わりのものがたり』展をひと目見ていただきたいのです。はじめてこの企画展のポスターを目にしたとき、不穏なざわめきに襲われました。おそらく、3.11が起きたからこそ企画されたであろうテーマ。
「“世界の終わり”がテーマって、どうっスか?」「いやいや、救いがなさすぎるだろう。だいたい、どうやって見せるの?」「やりようによっては話題になるかも。館長に相談してみたら?」……企画会議の様子に勝手に思いをはせてしまいます。毛利衛館長がこの企画にどうGOサインを出したのか、興味深いです。

肝心の内容は、はたして主催側の混沌ぶりをあえてさらけ出したかのような、カオスな空間が広がっていました。“(観客)参加型の展示”はよくあると思いますが、本展は“参加せざるをえない型の展示”なのです。

どういうことか。たとえば、入場していきなり「いちばんこわいものはなんですか?」という問いかけが発せられるのですが、最後までその調子で、計73もの質問(しかも根源的な)を絶えず浴びせかけられるのです。心がざわめき立ち、落ち着いて鑑賞できません。逆に「そんなこと、どうでもいいや」と質問をスルーし続ければ、ものの10数分で展示を見終えてしまいます。
もちろん、問いかけ以外にも見どころ、というか“見るべき仕掛け”は盛りだくさんです。いきなりガツンとかまされるのが「死因別の死亡確率」「自殺率の国際比較」など、“死”にまつわる各種データを立体展示したブース。積み木やマグネットなどを駆使した、ある種“クールな”展示が理系脳っぽい発想で新鮮です。

世界の終わり2

人型の模型などで“死”を可視化・数量化。見ているうちに自我が消え去ります

はじめの「予期せぬ終わり」のあたりは、そうして“死”をこまやかに数値化、可視化しているのですが、展示後半の「ものがたりの終わり」のあたりになると、次第に投げっぱなし感が高まってくるので、そこが逆説的な見どころと言いましょうか。“死”について突き詰めすぎて、「ええい、もう考えてもしょうがない」となかばやけっぱちになった、その心の揺らぎをごまかさず展示に反映している感じが好感なのです。

世界の終わり3

来館者の煩悩が、ふせんで等しく陳列される

そう、そこで“5月病”につながるのですが、日々すりへって心が押しつぶされそうになっている人は、ある種死に対してクールで突き放したこれらの展示群を体感することで、心がラクになるのではないかと。死を徹底的に考えることの“おかしさ”みたいのものを気づかせてくれる展示なのではないか、と思った次第でした。

『世界の終わりのものがたり』日本科学未来館
http://www.miraikan.jp/sekainoowari/

※この記事はガジェ通ウェブライターの「青木ポンチ」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?

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