『ポリーナ、私を踊る』アナスタシア・シェフツォワ インタビュー

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フランス漫画界期待の新星バスティアン・ヴィヴェスのグラフィックノベル『ポリーナ』。BD書店賞やACBD批評グランプリに輝いたこの人気作が映画『ポリーナ、私を踊る』と して、いよいよ幕を開ける。一人の天才バレエ少女が、成長していく姿を描いた物語では、バレエをはじめとした様々なダンスの美しさに触れることができる。監督は幅広いジャンルの作品を手掛けているヴァレリー・ミュラーと、バレエダンサーでありコンテンポラリー・ダンスの振付家としても世界的に活躍するアンジュラン・ プレルジョカージュが共同で担当。ふたりの目にとまり、ヒロインに抜擢された現役バレリーナであるアナスタシアのインタビューをお届けする。

——原作のグラフィック・ノベルのことは、この映画以前に知っていましたか。

アナスタシア「ええ、すでに読んでいたわ。とても好きな本よ。ダンスに関するディテールがすごく正しかったから、ずっと著者はプロのダンサーだと思っていたの。でも違った(笑)。とにかくポーズとかディテールが正確だし、ストーリーも大好き」

——オーディションは長いプロセスだったそうですが、どんな経緯でこの役をやることになったのですか。

アナスタシア「最初ロシアのキャスティング・ディレクターから連絡もらってサンクトペテルブルクのオーディションに呼ばれた。でもあとで知ったのは、アンジュラン(・プレルジョカージュ)とヴァレリー(・ミュラー)の娘さんがわたしのことをフェイスブックで発見したのがきっかけだったそうよ。で、とにかくオーディションに行ったんだけど、そのときは多くのプリマ・バレリーナが来ていて、わたしはとてもナーバスになった(笑)。そのあと、2回パリでオーディションを受けたの。原作のコミックが大好きだったから、この役はすごくやりたかった」

——自分と役柄のシチュエーションが似ていることも魅力でしたか。

アナスタシア「そうね。ヒロインもロシア人でクラシック・バレエを学んでいたから、わたしの人生とすごく似ている。そしてこの映画の経験によって、わたしもコンテンポラリー・ダンスの面白さを発見して、いまはコンテンポラリー・ダンスの方が好き。将来はコレオグラファーになりたい」

——まさにポリーナのようですね。では彼女の生き方に共感しましたか。

アナスタシア「もちろん」

ーーあなたはコンテンポラリー・ダンスとクラシックの違いをどう思いますか。ポリーナが感じるように、クラシックはやはり感情面での制約が多いと思いますか。

アナスタシア「そう思うわ。もちろんクラシックも好きだけど、あまり自由がない。ポーズが決まっていて、約束事が多い。それにクラシックはストーリーがとても古典的なところが好きになれないの。おとぎ話で、プリンセスがいて、という(笑)。でもコンテンポラリーはいまの時代のもの、現代のことでしょう。自由に自分自身を表現できる。それにクラシックの場合は気をつけなくてはならないことがたくさんある。ポーズを完璧にできるかとか、ちゃんと足を高く上げられるかとか。だから自分の感情をダンスに入れられない」

——では今回の経験、とくにコレオグラフィーとして有名でもあるアンジュランとの仕事はあなたに何をもたらしましたか。

アナスタシア「言葉にできないような大きな経験を与えてくれたわ。もちろん撮影前にすでにアンジュランのキャリアのことは知っていた。6、7年前、アカデミーにいた時代、彼について学んだことがあるの。だから一緒に仕事ができることは夢のようだった。彼と仕事をして、彼のコレオグラフィーを学べることは。わたしはクラシックの経験ばかりでモダンの経験がなかったから、ダンサーとしても素晴らしい経験になったわ。それにわたしにとってこの映画は、初の俳優としての仕事だった。だからこれまで経験したことがないような恐れも感じた。でもこの映画を撮り終えたいまは、これからも女優の仕事を続けたいと思う。とても素晴らしい経験だったから。本当にこの仕事が大好き。素晴らしい人々に出会えて、思いきり表現ができる」

——この映画のあなたは本当に素晴らしかったと思いますよ。女優としてぜったいに続けられると思います。

アナスタシア「ありがとう!」

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——ジュリエット・ビノシュとの共演はいかがでしたか。彼女もアクラム・カーンとコラボレーションをしたダンサーとしての経験がありますが、女優としてあなたに何かアドバイスをくれましたか。

アナスタシア「ええ、いろいろなことを教えてくれたわ。たとえば自分自身であることを恐れないこと、とか。もちろん、最初わたしは彼女と共演するということがとても怖かった。だってビッグ・スターだから(笑)。でも彼女はとても優しく接してくれた。レストランに招待してくれて、ふたりでいろいろと話した。彼女は自分のこと、自分のキャリアについて語ってくれて、それはとても参考になった。それにわたしたちは一緒にダンス・レッスンも受けたの。そこで彼女のダンスも知ることができてとてもためになったわ。彼女はプロのダンサーではないけれど、とてもハードに訓練していた。それを観てとてもインスパイアされたわ」

——ニールス・シュナイダーとは、お互い苦手なところをヘルプし合ったそうですね。

アナスタシア「わたしはフランス語があまり話せないのにフランス語で演技しなければならなかったし、彼の場合はもちろんダンスの訓練を積むこともだけど、ロシア語も覚えなければならなかった。彼はわたしにフランス語を教えてくれて、わたしは彼にロシア語を教えたの(笑)。ニールスは素晴らしい俳優だけれど、ダンサーとしてもすごく素質のある人だと思うわ。わたしたちがふたりで踊るシーンでは、彼はこの映画以前にまったく経験がなかったのに、プロのダンサーのように踊った。プロのダンサーでもときどき失敗することを、彼はいつもやってのけていたわ。もちろん彼の努力もあるけれど、彼のお父様はオペラ座のダンサーだったから、血筋もあるのじゃないかしら(笑)。だから彼と踊るのはラクだった。それに俳優と踊るのはプロのダンサーと踊るのとはまた異なる面白さがある。というのも、ダンサーの場合テクニックのことをつねに考えているので、どうしてもロボットのようになってしまうところがあるけれど、ニールスの場合はとてもオープンで表現豊か。それにはすごくインスパイアされたわ。わたし自身もこの役を演じる上で必要とされたことだったから。だから一緒に踊るシーンでは、肉体的なコミュニケーションのようだった」

——ジェレミー・ベランガールとの最後の踊りのシーンの振り付けはどのようにしたのですか。

アナスタシア「たぶんもっとも難しいシーンだったと思う。30回は踊ったかしら。とても長いダンス・シーンだし、アンジュランがコレオグラフィーを考えながら一緒にコラボレーションをして、半年ぐらいかけたの。でもとても面白かったわ。アンジュランと働くのは本当に素晴らしい経験だった。とても繊細で、サポーティブなの」

——ジェレミー(・ベランガール)も、クラシックとコンテンポラリー・ダンスの両方を踊っていますね。

アナスタシア「彼はクラシックのレパートリーをほとんど踊りつくしていると思うわ」

——セットでもっとも難しかったことは何ですか。たとえばポリーナとアドリアンの関係性は変わっていきますが、それが彼らの踊りにも表れていきます。そういう変化などを表現するのは難しかったですか。

アナスタシア「たぶんわたしにとって一番難しかったのは、ポリーナが内面的にだんだん成熟していくのを表現することかしら。彼女がアントワープに行ったとき、初めてひとり暮らしを始める。わたしはポリーナほど強くないから、彼女のように強くならなければいけなかった。たぶんアントワープ時代がわたしにとって表現するのが一番難しかったかも。あと、ときどきカメラを見ながら演技しなければいけないことがあったのだけど、レンズに自分の顔が反射するので、集中することが難しかったわ(笑)」

——さきほど、これからはコンテンポラリー・ダンスもやっていきたいとおっしゃっていましたが、いまはまだクラシック・バレエ団に在籍しているのですよね?

アナスタシア「ええ、サンクトペテルブルクのマリインスキー・バレエ団。2年目なの。でも将来はどうするかまだわからない。いろいろなことに興味があるから。映画も続けたいし、モダン・バレエも踊りたいし、ミュージカルなんかもやりたい。人生は短いけれど、いろいろなことをやっていきたいわ(笑)」

——アンジュランは日本の能にも影響を受けていますが、あなたは日本の舞踏などに興味はありますか。

アナスタシア「日本人はバレエが大好きなことは知っている。でも日本の舞踏のことなどは知らない。まだ日本に行ったことがないから。でもいつか絶対に行ってみたいと思っているわ。でもいまはまだ時間がないの(笑)。でもマリインスキー・バレエ団はときどき日本に行くこともあるから、そういう機会があるといいんだけど」

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『ポリーナ、私を踊る』
10月28日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、 ヒューマントラストシネマ渋谷 ほか全国ロードショー
監督:ヴァレリー・ミュラー&アンジュラン・プレルジョカージュ
脚本:ヴァレリー・ミュラー
出演:アナスタシア・シェフツォワ、ニールス・シュナイダー、ジェレミー・ベランガール、アレクセイ・グシュコフ、ジュリエット・ビノシュ
原作:バスティアン・ヴィヴェス「ポリーナ」(原正人訳、小学館集英社プロダクション刊)
配給:ポニーキャニオン
2016 年/フランス/フランス語、ロシア語/108 分/カラー/5.1ch/PG12/字幕:古田由紀子/ 原題:POLINA, DANSER SA VIE
©2016 Everybody on Deck – TF1 Droits Audiovisuels – UCG Images – France 2 Cinema

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