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タカタ民事再生を申請 負債総額1.7兆円に

タカタ民事再生を申請 負債総額1.7兆円に

タカタ民事再生を申請 製造業で戦後最大の倒産

エアバックの大規模リコール問題に直面していたタカタは6月26日、民事再生手続き開始を東京地裁に申請し、受理されたことを発表しました。自動車業界として史上最大規模のリコールは、世界有数の自動車安全部品メーカーの経営破綻に発展しました。実質的な負債総額は1兆円を超え、製造業では戦後最大の倒産となります。

今回のタカタ倒産は、エアバックのインフレーターの欠陥そのものより、欠陥が発覚してから8年以上も時間が経過しながら、遅々として進まない原因解明、リコール対応、補償の状況に対して、自動車メーカーや日米政府から、「タカタは不誠実だ」という印象を持たれて、協力ではなく引導を渡されてしまったからと言えます。

こうしたタカタの姿勢について、早速いろいろな原因分析が行われています。「危機管理能力に乏しく初期対応を誤った」「創業家が保身を図ったことが問題の解決の障害になった」「技術に対する自信が仇となって問題を矮小化した」等々。しかし、こうした一般的なニュース解説は他に譲ることにして、ここではタカタの倒産をもっと別の角度から見てみましょう。

事件・事故後の対応に失敗する事例が後を絶たない

事件や事故が起きたとき、事件・事故自体もさることながら、今回のタカタのようにその後の対応の拙さが問題を大きくすることがよくあります。記憶に新しいところでは、2010年に起きたトヨタのプリウスのリコールがあります。そのたびに、問題をこじらせた原因分析がされますが、事後の適切な対応に失敗する事例が後を絶ちません。なぜなのでしょうか。

その答は、原因分析の結果導かれる一般化された教訓に意味がないからです。タカタの場合で言うと、「危機管理意識が低かった」ことが原因だとすると「危機管理意識を高めよう」が、「創業家の保身」が原因だとすると「創業家の暴走を許さないガバナンス体制の確立」が、そして「技術に対する過信」が原因だとすると「技術志向を戒め市場の声に耳を傾ける」が教訓として語られます。でも、それは単に原因になったことを裏返しているだけです。

昔から「交通事故の原因はスピードの出し過ぎだ」と言って、警察はスピード違反の取り締まりを熱心にやっています。たしかに、制限速度を守っていれば事故が起きなかった、あるいは事故が起きた場合でも死者は出なかったということは多々あるでしょう。実際、年々交通事故の死亡者数は減少していますが、交通事故件数そのものは減少していません。では、なぜ死亡者数が減ったかというと、スピード違反の取り締まりのおかげではなく、救急救命の技術向上や体制整備、自動車の安全性能向上が寄与しているところが多いのです。

同じように、サラ金による多重債務者の増加が問題になったとき、「借り手が悪いのではなく、サラ金が貸しすぎるのが問題だ」として、2010年に総量規制を導入しました。その結果どうなったでしょうか。世の中にお金を借りてでも必要とする人の数が減ることはありません。サラ金で借りていた人が闇金に流れ今まで以上の金利負担に苦しみ、グレー金利の廃止により多量に発生した過払い金返還のために体力が弱った消費者金融会社は、潰れるか銀行の傘下に入ることになりました。そして、総量規制対象外の銀行が、今度はカードローンで貸出攻勢を強めるという状況に変わっただけで、本質的に問題が解決したことになっていません。

タカタが倒産に至った理由

今回のタカタについても同じことが言えます。タカタのコーポレートサイトを見ると、安全やユーザー保護に対する意識が低い会社とは思えません。「クルマ社会の安全を考えることに、終わりはありません。シートベルト、エアバッグ、チャイルドシートなど、人の命にかかわる製品をつくる会社として、社会的責任を自覚し、安全な世界の実現に貢献していきたい。そのために、これからも確かな安全を追求し、さらに進化をつづけます」と宣言しています。コーポレートガバナンスについても、TK-CG体制という仕組みを整備していることを高らかに唱っています。

それでも現実には、危機管理意識の乏しさや創業家による支配や技術志向という風潮はあったかもしれませんが、目を向けるべきは、さらに奥に潜んでいる真因です。怠慢だったとか不誠実だったということではなく、むしろ優秀な人々が、その時々の状況に対して、都度真面目に合理的な判断をしたことにあるのです。

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