『FF14』ワールド統合に見る「自由の価値は?」

メカAGさんのブログ

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『FF14』ワールド統合に見る「自由の価値は?」

茨の道を歩むオンラインゲーム『ファイナルファンタジー14(以下FF14)』。プレイヤー減少による過疎化に対応するために、かねてより検討されていたワールド統合計画が発表された。

現状の『FF14』は18個のサーバーで動いており、それぞれでワールドを構成している。オンラインゲームが本来の楽しみ方を維持するには一定の人口密度が必要だから、サーバーを統合し、ワールド当たりの人口を増やそうというもの。

これは『ファイナルファンタジー11(以下FF11)』でも行われており別段珍しいものではない。まあ、10年を経てさすがに賞味期限が切れつつあるFF11を、人口減少のためにサーバー統合するのと、発表後まだ1年しか経っていない『FF14』で同じことをせざるを得ない深刻さはさておき。

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『FF11』で行われていた従来の統合方法は、1つのワールドを丸ごと別のワールドに統合するというもの。非常にシンプルであり、なんの問題もないと思う人も少なくないだろう。

しかし実際には今まで別のワールドの住人同士が同じワールドを共有するというのは、少なからぬ軋轢(あつれき)を呼ぶものだ。いつもプレイしていて自分の縄張りだと思っていた狩場に、突如別のプレイヤーが我が物顔でやってくるのだから。もちろんそれはお互い様なのだけれど。

物流なども過疎ワールドで慎ましやかに、それなりに安定してやっていた商売が、いきなり競合相手が現れる。ワールドごとに微妙な物価の違いもある。

もちろんそういうものを含めてオンラインゲームの醍醐味(だいごみ)だという考え方もあるだろう。しかしすべてのプレイヤーが同じならともかく、たまたま過疎のワールドの住人だけがそういう目にあうことに不満をもつ人もいるだろう。

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今回『FF14』でのワールド統合案は一味違った。スクウェア・エニックス(以下スクエニ)で検討された4案を説明したうえで、4番目の案を採用することに決めたと発表した。スクエニは『FF11』の時代は上意下達で、スクエニが一方的に決めて、プレイヤーはそれに従うというやり方だったのだが、『FF14』の大コケでこの点を改め、プレイヤーの意見を積極的にくみあげるやり方をとっている。

まあ、俺は個人的にはそれは間違いだと思うのだけどね。プレイヤーはあくまでゲーム設計の素人であり、その意見は参考にならない。プロである開発者が一方的にベストな決定を行うのが正しい。一般ユーザーに『iPhone』は発案できないのだ。ジョブズというプロ中のプロだからこそ、『iPhone』をつくれた。

それはさておき、4番目の案というのは、一言で言えばすべてのプレイヤーが好きなワールドを選べるというものだ。過疎のワールドだけでなく、すべてのワールドを一旦解体し、プレイヤーに自由に選択させる。上で述べたような“過疎ワールドの住人だけが被る不利益”を回避しようというわけだ。

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プレイヤーに自由に選ばせる。これ以上の自由度はないだろう。プレイヤーはこぞって大賛成……と思いきや、大変な反発を呼ぶことになった。

簡単にいえば、仲のいいAちゃんはワールドAに行く。同じぐらい仲のいいBちゃんはワールドBを選んだ。ボクはどっちを選べばいいの? ということ。

もう少しカッコよく言うと、せっかく形成したワールドの人間関係がばらばらになり、これまでのきずなが否定される、と。

これも気持ちはわかる。「このワールドの住人はみんなで○○を選択しよう」という(実質的に丸ごとワールド統合と同じにする)呼びかけ運動も行われたようだ。これはこれで中途半端に終わったようだが。

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大変な混乱になり、結局スクエニは最初の決定(4番目の案)を撤回せざるをえなくなった。現在は正式決定ではないものの2番目の案を中心に検討中らしい。2番目の案というのは『FF11』でおなじみのワールド単位での統合。上述のようにこれはこれで欠点はあるが、「すべて自由!」よりは、まだマシだというところに落ち着いたようだ。

なんか『FF14』を見ていると『FF11』から変えた(改良した)部分がことごとく裏目に出て、『FF11』式に戻すという繰り返しになっているように思う。たとえばFF11ではジョブに縛られて不便だったので、『FF14』はクラスというかたちにして、その場でのクラスチェンジを可能にした。しかしそれが結果的にゲームの面白さを減じることになり、次のバージョナップでジョブ方式を再導入するらしい。

まあ『FF11』の完成度がそれだけ高かったのかなとも思う一方で、『FF14』がここまで惨憺(さんたん)たる状況でなければ、『FF11』とは別の方向を探ることもできたのではないかと、ちょっと残念。今はとにかく『FF14』を復活させることが至上命題で、『FF11』で成功した要素を詰め込むしかないのだろう。

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そして今回のことでもうひとつわかったこと。それはプレイヤーは自由を好まないということだ。すべてプレイヤーに選ばせるというのは、見方を変えればスクエニの責任放棄ともいえる。プレイヤーの自由にさせたんだからその結果もプレイヤーの責任だ、と。

『FF11』は上意下達だったから、プレイヤーはスクエニによく文句言った。プレイヤー無視だ、横暴だ、スクエニはプレイヤーの気持ちをわかってない、と。しかしそれはプレイヤー同士のきずなを強めることにもなっていた。“悪いのはスクエニ”という意識でプレイヤーはまとまっていたのだ。

それが今回プレイヤーの自由に任せるという判断で、プレイヤー同士賛否両論の大混乱になった。これまでは悪いことは全てスクエニのせいにしておけばよかったのに、それが成り立たなくなった。仲のいいAちゃんとBちゃんのどちらかを選ばざるを得ず、どっちかを選び、どっちかを捨てたとしても、それは自分の自由意志の結果なのだ。

そういう状況にプレイヤーは耐えられなかったわけだ。

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話は変わるが高い放射線に侵されている福島。住民たちは悩んでいる。ふるさとを捨てて避難すべきか、ふるさとを守るべきか。住人同士の対立もあるようだ。なまじ避難するのも残るのも、住民の自由としている点に問題があるように思う。

国は避難命令を出すべきだろう。その結果「俺たちのふるさとを放棄させた」と住民たちは政府に対して激怒するかもしれない。いや絶対にするだろう。それでいいのだと思う。政府が悪者になるべきなのだ。避難するかしないかの自由を住民に認めてはいけない。それは国の責任放棄だ。国が強制するべきなのだと思う。自由にするということは時として残酷なのだ……。

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・撤回された初期の案
「ワールド統合について – Page 44」 『ファイナルファンタジー14フォーラム』
http://forum.square-enix.com/ffxiv/threads/37157-%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89%E7%B5%B1%E5%90%88%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6?p=546609#post546609

・その後の案
「ワールド統合について – Page 128」 『ファイナルファンタジー14フォーラム』
http://forum.square-enix.com/ffxiv/threads/37157-%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89%E7%B5%B1%E5%90%88%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6?p=551960&viewfull=1#post551960
Perm

執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

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