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「自炊代行ドットコム」へ直接行ってみた(『漫画 on Web』 漫画ニュース!)

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manga02103

だれでも簡単にオンラインブックを配信、公開できるサイト『漫画onWeb』より、気になる漫画についての最新ニュースをお送り致します!

2月15日に放送された漫画onWeb公式配信『月刊 漫画ライブ 2月号』では、今漫画業界で話題の自炊代行問題について触れました。

『月刊 漫画ライブ 2月号』
http://mangaonweb.com/creatorDiarypage.do?cn=30056&dn=33097 [リンク]

漫画家の佐藤秀峰(代表作 『海猿』『ブラックジャックによろしく』)が自炊代行業者の「自炊代行ドットコム」さんにお邪魔して、いろいろとお話を伺ってきましたので、そちらの取材レポートを中心にお届けしました。
放送内容を文字で起こしてありますので、よろしければご覧ください。
自炊代行サービスの実情の一端がご理解いただけるかと思います。

それではどうぞ!

Webスタッフ エビちゃん(以下 E): 本日は近頃漫画界を騒がせている自炊代行についてお話しようと思います。
まずは自炊という言葉について教えてください!

佐藤秀峰(以下 S): えーと、自炊というのは元々はネットのスラングです。
個人で所有している紙の書籍を、本人が裁断機で裁断して、それをスキャナで読み込みデジタルデータに変換する行為を指す言葉ですね。
自前でデータ化するので自炊と呼ぶようになったみたいです。
で、自分では器材を揃えず書籍電子化を他人である業者に依頼することを「自炊代行」「スキャン代行」と呼びます。

E: ご飯を自分で作ることを指す言葉ではないんですね。

S: はい、ネットで検索してみると本来の意味よりも、「自分で本をデータ化する行為」という意味のほうが先に出てくるくらい、一般的な言葉になってしまいましたね。
2010年はiPadを始めとするタブレット型の端末が数多く発売され、電子書籍元年と呼ばれたのですが、それと合わせて注目された動きが自炊です。
購入した雑誌や書籍を裁断してスキャン。
そのデータをタブレットで楽しむ、という行為が流行りました。

E: では、それがなぜ問題になっているんですか?

S: 自炊という行為自体は、自分の本を電子データ化して個人で楽しむだけなので、法的にまったく問題はないんです。
ところが、自炊というのは本の数が多いと時間も手間もかかりますので、それを代行する業者さんが出てきたんです。
作業費と引き換えに、同じ作業をやってくれる業者です。

E: それが自炊代行ですね?

S: そうです。
自炊と言っても機材をそろえるコストや、一定の質をクリアするには、ある程度経験がいるので、それらを格安で代行する業者は、サービス登場と共にすぐに話題となりまして、2011年9月には約100社にまで増加したそうですよ。

今問題となっているのは、この自炊代行行為ですね。

自炊が法的に問題ないということは言いましたが、これは著作権法で私的複製(30条1項)が認められているからなんです。
条文では「著作権の目的となっている著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とするときは、その使用する者が複製することができる。」という一文があるんですよ。

条文に従うと、「その使用する物が複製することが出来る」という部分について、代行業者が自炊を代行した時点で、それは私的複製に当たらないということで、「違法である」という解釈があるんですね。
代行業者は“使用する者”ではないため、著作権法の複製権侵害に当たるという考えです。

ただ、この部分についてはこれまでは判例もなく、グレーゾーンでの運用が続いてきました。
専門家の意見は、「違法」とする立場の法律家が現状は多いように思いますが、「違法ではない」とする方も一定数存在するといった所ですかね。
詳しくはここでは時間がないので端折りますね。

で、まぁ、出版社や作家側からすると、代行業者は「人の褌で相撲を取る人達」「著作権を侵害する違法組織」という認識があって、自炊代行事業が流行り出し た2010年頃から「これを許しておいていいの?」「本が売れなくなっちゃうんじゃないの?」という議論が続いていました。

僕の個人的な考えとしては、自炊は自分で行なっても、業者に頼んでも、出来上がったデータの使用目的が、私的な使用に限られているのであれば、別にいいじゃない、と思うんですね。
読者も買った本の使い方まで、作家に指定されたくないと思うんです。
(*僕の個人的な立場については http://mangaonweb.com/creatorDiarypage.do?p=1&cn=1&dn=32817&md=1 [リンク] ですでに書いていますので、よろしければご参照ください。)

ただ、多くの作家はそうは思っていないようで、「本がデータ化されると海賊版が流出してしまうんじゃないか?」とか、「裁断した本を中古販売し、スキャン が繰り返されるのではないか?」といったことを心配し、自分たちの不利益につながるから禁止しなくてはいけないと考えているみたいですね。

その結果、2011年の7月に出版7社と漫画家、小説家など170数名が連名で、100社以上の自炊業者に一斉に質問状を送るという事件がありました。

E: どんな質問状だったんですか?

S: 手元にあるので、読み上げてくれますか?

E: あ、はい。

「質問書」

前略

別紙記載の差出人は、貴社が、受注による市販書籍のスキャン事業を行っていることを把握しております。これに関し、貴社に以下のとおり質問します。

(質問1:)

スキャン事業を行っている多くの業者は、インターネット上で公開されている注意事項において、「著作権者の許可を得た書籍のみ発注を受け付ける」「発注された書籍は著作権者の許可を得たものとみなす」などの定めをおいています。
差出人作家は、自身の作品につき、貴社の事業及びその利用をいずれも許諾しておらず、権利者への正しい還元の仕組みができるまでは許諾を検討する予定もないことを、本書で通知します。
かかる通知にもかかわらず、貴社は今後、差出人作家の作品について、依頼があればスキャン事業を行うご予定でしょうか。

(質問2:)

(1)貴社はスキャン事業の発注を受け付けるに際して、依頼者が実際に私的利用を目的としているか否かを、どのような方法で確認しておられるのでしょうか。

(2)貴社は、スキャン事業の、法人からの発注に応じていますか。
ご多忙とは思いますが、以上の各質問に対し、2011年9月16日までに、本質問書に添付の回答書により、下記の宛先までご回答下さい。

S:と、こんな質問状を送って、暗に自炊代行業者を牽制したんですね。

質問状に名を連ねている出版社は講談社、集英社、小学館などのいわゆる三大出版社を始め、大手ばかりで、作家さんもそれらの出版社で活躍する大御所、人気作家ばかりが名を連ねています。

で、この質問状に対しては、ほとんどの業者は「差出人の作家の作品は、依頼があってもスキャンしない」と答えたのですが、「依頼があればスキャンする」と答えた代行業者が2社だけありまして、ついには作家が代行業者を訴えるという事態に発展してしまいました。

えーと、訴訟が起こったのは昨年、2011年12月20日です。

作家の浅田次郎さん、大沢在昌さん、永井豪さん、林真理子さん、東野圭吾さん、弘兼憲史さん、武論尊さんの7名を原告とし、スキャン代行業者2社に対し原告作品の複製権を侵害しないよう行為の差し止めを求める提訴が12月20日に東京地方裁判所に提起されています。

先日、第1回口頭弁論が行なわれたようなんですけど、代行業者は争う姿勢みたいですね。
と、まあ、ここまでが、現在の自炊と自炊代行をめぐる漫画業界の状況です。

僕としては作家側の意見はいくつか見かけるのですが、自炊代行業者さんの意見がなかなか見えてこないというのがあって、それはフェアじゃない気がするんですよ。そこで、先日、自炊代行業者さんに取材に行ってきました。

E: ほうほう。

S: 詳しいレポートは今ブログにまとめていますので、そちらが公開になったらご覧いただきたいのですが、今日はそのお話をさせてください。前置きが長くてすいません。

E: ここからが本題ですね。どうぞ。

S: 取材に伺ったのは、「自炊代行ドットコム」さんという所です。代行業界では比較的有名な所ですね。
都内JR沿線の某駅前のビルに事務所を構えていらっしゃいました。こんな感じの事務所です。

E: ごく普通のオフィスですね。どんな方達でしたか?

S: ごく普通の方達ですよ。普通に話せば普通に答えてくれる感じ。

2時間近くインタビューさせていただいたり、実際の作業を見せていただいたりしてきました。まずは、本を裁断してスキャンする作業を見てもらいましょうかね。

これは、「特攻の島」を裁断しているところですね。
事務所に伺う前に書店で本を購入しまして、実演していただきました。

裁断機は誰でも入手できるごく一般的な物です。

まず本のカバーを外して表紙を破り、裁断機に本をセットします。
角を合わせて…。

よいしょ、と。

これで本がバラバラになりました。
次にカバーを手作業でカットします。

昔、魚屋さんで働いていたことがあるそうで、本をさばくのは得意だそうですよ。

こちらが全部切り終わった所です。

これは重要なことなんですが、カットし終わった本は順番にゴミ袋に捨てられていきます。

これを言うと、自炊反対派の人は喜ぶかもしれませんが、著者としては、さすがに本が捨てられるのは、ちょっともったいない気がしてしまいましたね。

本のカットが終わると次はスキャナにそれをセットします。
スキャナは意外と小さいんですよ。
ノートパソコンより小さいくらい。

開始2,3分で単行本1冊分のスキャンが終わります。

データをパソコンに取り込み終わったら、それを確認し修正していきます。

曲がって取り込んでしまったページを見つけたら、再度スキャンしていました。

裁断からデータ完成まで30分くらいかかりましたかね?
2巻目から機械が1巻目の設定を覚えるので、5分から10分くらいで出来るとおっしゃっていました。写真は以上です。

E: お客さんはどのような方達なんですか?

S: そうですね。まず大前提としてお客さんは本を持っている人なんですよ。
本を持っていない人は自炊をする訳も、代行を依頼する訳もないですよね。

E: そりゃそうですね。

S:で、どんな人が本を持っているかというと、意外に作家さんやお医者さん、弁護士さん、学校の先生なんかがお客さんに多いそうです。

後は学生さんとか、専門性の高いお仕事をしてる方で重くて分厚い技術書を持ってる方とか。
読書好きや漫画を大量に持っている人もお客さんに含まれます。

いずれにしても定期的に本を購入する習慣のある人達がお客さんになるんですね。

では、作家さんが心配するように、お客さんがデータをネットなどに流出させるかというと、これは現実的ではないそうです。
わざわざ自分がお金を払ってデータ化した物を、無償でバラまく意味がありませんし、私的使用の範囲を超えてデータを流出させることは著作権侵害にあたるので犯罪です。
犯罪を行なおうとするのであれば、代行業者を利用するのはリスクが高いんですよ。

住所や氏名、クレジットカードの番号なんかも押さえられていますから、すぐに流出元が特定されてしまう。
僕がもしも海賊版を本気で流出させようと思ったら、自炊代行業者は絶対に使いません。
また、データに個人情報を埋め込むシステムも開発中だそうで、それが実装されると、増々リスクが高くなります。

E: では、代行業者さんはどうですか?彼らからデータが漏れることはないでしょうか?

S: 恐らくないでしょうね。

代行業者がデータを流出させる可能性があるかというと、データを流出させては自分たちの仕事が減るだけなので、そのようなことをするメリットがないんです。
違法行為ですし、事務所の看板を表に出してそんなことをしたら、すぐに捕まってしまいますよ。

つまり、自炊代行業者の存在によって、海賊版が横行するという作家側の想像は、事実ではないように感じました。

E: なるほど。
では、裁断した本が中古市場に出回って、ネットのオークションで売買されるという可能性についてはどうですか?

S: これは最初に話しておくと、裁断本をオークションで販売すること自体は、中古品を売るだけの話なので法的に何の問題もないです。

本の所有者が自分で売ることはもちろん構いませんし、所有者が「裁断後は本を自炊業者に譲渡するので、ご自由に処分してください」と言ったら、業者が売るのも構わないかもしれませんね。

その上で、ですが、自炊代行ドットコムさんでは、先程見ていただいたように、裁断本はすべて破棄していました。
彼らは、自炊というのは紙の本をデータに変換する行為であって、複製が目的ではないという独自のポリシーを持っていまして、スキャンした後の紙の本は必ず廃棄することにしているんですね。
運営ポリシーとしてそれを掲げているので、お客さんも依頼した時点で納得済みですし、一切本は返還していませんでした。
さらには、業界全体もそのような方針になりつつあるそうです。

例えば、人気のある作品であれば、何冊も同じ本の注文が入ることもあるそうなのですが、その場合も本はその都度捨てて、データを使い回したり、本を実際には裁断せずに中古に売り払ったりということはしていないそうです。
データはミスがあった場合に再度必要となる場合があるので、一定期間、パソコンに保存しておきますが、その後は消去するそうですよ。
「この本をスキャンするの、何回目だよ~」ということも結構あるそうです。

また、本は同じタイトルでも初版と第3版で内容が違っていたりしますから、それをいちいち確認したり、また、本の持ち主が書き込みをしている場合もあるの で、それが再現されていないと苦情が来ることもあるので、版や書き込みがないかを調べたりする時間を考えると、データを使い回すのは逆に手間がかかるとの ことでした。

もちろん、データの使い回しは依頼内容に反するので、行なわないというのが大前提ですが。

E: でも、取材に応じてくれるような所は、そうかもしれませんが、違法な行為を行なっている業者も中に入るんじゃないですか?

S: そうなんですけど、それを言うと、漫画家の中にも悪い人はいるし、出版社の社員にも犯罪者はいるという話になるだけだと思うんですよね。
犯罪はきちんと取り締まればいいのだけで、だからと言って、出版や漫画家というビジネス自体を禁止しようとはならないじゃないですか。

ついでに言うと、代行業者は1冊100円くらいで代行を引き受けている所が多いので、その値段設定だと大した儲からないそうなんですよ。

1冊のデータを作るのに5分とか10分かかかるということは、1時間で10冊前後ですよね。
1日10時間作業しても100冊くらいですから、それでやっと1万円の売り上げです。
スキャナを何台か同時に使って効率を上げても1日200冊が限界をおしゃっていました。

つまり1日の売り上げが最大2万円とすると、まぁ、ランニングコストを差し引くと暮らしていくので精一杯という感じじゃないですかね?

僕の取材した実感としては、自炊代行業者さんについては、それ程大騒ぎする問題ではないと思いました。

E: では、なぜ訴訟にまでなってしまったんでしょう?

S: これは私見ですが、なにか別の意図があるような気がしますね。

出版社は今回の訴訟で、「自分たちには著作権が認められていないからこのような違法業者を取り締まれない。せめて我々にも著作隣接権を認めて欲しい」というようなことを言っていますから、その辺りで何か事情があるのかなぁ、と想像しています。

事実、出版業界は近年、文部科学省に対して著作隣接権を求めるアクションを起こしています。
(詳しくは http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120112-00000074-it_ebook-sci [リンク] の記事を参照してください。)

出版流通対策協議会は要望書を提出するなどして権利付与を強く求めていました。
著作隣接権を求める根拠は「電子書籍の流通・利用の促進」と「権利侵害への対応」の2点ですが、それって別に著作隣接権がなくても対応できることなんですよね。

作家が出版社に著作権の一部を譲渡すれば解決することだったり、民法で規定されている債権者代位権の行使や、現行の著作権法における出版権の条文修正、「プロバイダ責任制限法」に基づく発信者情報開示請求の活用などなど、いろいろと対抗措置は考えられるんです。
海外でもあまり認められている例がない権利ですね。

逆に、出版社に著作隣接権を認めてしまうと、作家にはいろいろと不都合が起こります。
出版社が著作の権利者として加わってしまうことになるので、例えば、作家の裁量で電子書籍化を押し進めたりすることができなくなったり、自分の描いた作品なのに、出版社に意向のお伺いを立てないと著作を自由に扱えなくなってしまうんです。

つまり、出版社は電子書籍時代において、自分達も権利者の1人として食い込んでおきたいんだと思うんですよ。

現在、多くの作家は出版社と出版契約しか結んでいません。
これは出版権を独占的に出版社に認める契約で、その他の媒体では作家は基本的に自由に作品を扱えるんです。
よって、電子書籍は「出版」には当たりませんので、作家が自由に販売できます。

でも、これは出版社にとって不都合なんです。
なので、著作隣接権を求めているのではないか、というのが僕の推測です。
これはあくまで僕の私見ですので、今後の動きを見ていきたいですね。

E: では、実際にここで自炊をする所を実演してみましょうか!

S: やりましょう~。

続きは是非USTアーカイブでお楽しみ頂けますと幸いです!!

USTチャンネル
http://www.ustream.tv/channel/%E6%9C%88%E5%88%8A-%E6%BC%AB%E7%94%BB%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%96 [リンク]

毎月15日放送の「月刊漫画ライブ」ニコ生でも配信をスタートさせてました!是非コミュニティにも御参加下さいませ!

ニコ生コミュニティ
http://com.nicovideo.jp/community/co1484006?mypage_nicorepo [リンク]

ではでは、今日はこんな所で!次回もお楽しみに!

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「自炊代行ドットコム」
http://www.jisuidaikou.com/index.php?action_TopIndexPC=true&encode=utf-8&agent=pc [リンク]

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