大きな牛スジが自慢の「静岡おでん」を地酒とともに楽しめるお店「つるかめ」【静岡】

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巷では“ご当地グルメ”が花盛り。でも、いったいどこからどこまでが“ご当地グルメ”なのか、いまいち釈然としないと思いませんか?

どうも、しゃべりだしたらグチ or ボヤキ。グチから生まれてきた男、メシ通レポーターの間覚です。

牛スジや豚モツのお肉のうま味がおでん種に染み込む「静岡おでん」

さて、静岡の“ご当地グルメ”といったら、真っ先にあげられるのが「静岡おでん」。

もう何十年も前から静岡人に愛されてきた正真正銘の“ご当地グルメ”です。

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知らない人のために簡単に説明すると、「静岡おでん」とは、黒々としたスープと、チビ太のおでんのごとく串をうったおでん種が特徴。

おでん種の中には、牛スジか豚モツが入っていて(それらで出汁をとるお店もあります)、関東や関西のおでんよりも、お肉のコクと甘味を感じます。

よく「昔は駄菓子屋さんで食べていた」というセリフを言うのが、静岡人の“あるある”で、それくらいどこにでもあったから、お店によって味わいも全然違ったりするんです。

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ちなみに、僕の好みは、鰹ダシがきいたさっぱり味。好きなおでん種は、一も二もなく牛スジです。以前は、近所のおでん屋さんが僕好みの「静岡おでん」を出していましたが、そこが閉店してからというもの、なかなか自分好みの「静岡おでん」に出合えずにいました。

そんなある日のこと。酒の場の失態によって、おそらく一生頭が上がらないであろう、とある社長さんから、

「盛り合わせだけでお腹いっぱい。とくに牛スジが大きくておいしい『静岡おでん』が食べられる居酒屋さんがあるよ」

という情報を教えていただきました。しかも出汁のベースは鰹ダシとのこと。もうこれは、いろんな意味で行くしかないわけで、さっそく行ってみることにしたのです。

店内は団塊世代のどこか懐かしいアイテムで彩られています

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お店があるのは、静岡東宝会館のある十字路から南側に伸びる路地に入ってすぐの雑居ビルの二階。お店の名前は「つるかめ」といいます。

風情のある白ののれんがいかにも老舗の居酒屋さん。風情の玄関をくぐって店内に入ると、出迎えてくれたのは、オーナーのKさんとカウンター内で料理を担当するSさん。お店は、静岡の街中でのれんを守り続け、もう36年目をむかえました。

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店内は、カウンター12席と3~4人で座れるテーブル席が2つ。お店を見渡すと、パッと見はごくごくありふれた居酒屋さんの雰囲気ですが、しばらくすると、お店の個性が見えてきます。

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まずは、お店に流れているBGM。少し大きめの音量で流しているのは、LP盤の杉山清隆や大滝詠一といった懐かしい日本のポップソングやジャズ。

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もうこれだけで充分に個性的ですが、ほかにも壁際にはウォーホールのモダンなポスターが飾られているかと思えば、趣のあるお手洗いのしつらえや、カウンター内の一角に配された重厚な和のアンティーク家具など、新旧洋邦の仕掛けがそこここに散りばめられていて、大人の遊び心のある唯一無二の空間を作り上げています。

それ一皿でお腹が満たされるほど、ボリューム満点の「静岡おでんの盛り合わせ」

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さて、カウンターの席につくと、Sさんが、「つるかめ」の「静岡おでん」についていろいろ教えてくれました。

「うちのおでんは、お店がこの場所に移った27年前から、継ぎ足しでスープを絶やさず、おでんの味を守ってきました」

出汁は何からとっているのですか?

「基本は鰹ダシがベースです。牛スジで濃厚なスープを売りにしている『静岡おでん』のお店もあるのですが、うちは年配のお客さんも多いので、基本はさっぱりとした鰹ダシベースで、そこにお肉から出た出汁の甘味をほんのり感じる、今のスープのほうが好まれているんです」

おでん種は、牛スジが人気のようですね。

「お付き合いのある肉屋さんから特別に仕入れている牛スジ肉がおでん種としてふんだんに入っています。大振りにカットした牛スジは、女性の方も喜んで食べていかれますよ。ちなみに、牛スジはしっかりと下処理をして、灰汁や余計な脂は取り除いているので、牛スジがふんだんに入っていてもスープに雑味がありません。それでいて、さっぱりとした中にもコクと甘味を感じる奥深いスープになっていると思います」

おでんがいいのは、注文したらすぐに出てくるところですね。席について1分ほどで、うわさの「静岡おでんの盛り合わせ」が出てきました。

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▲おでん盛り合わせ(756円)

どうですか、このボリューム。

大きめのお皿に盛られた全部で7種類のおでんが、ストーブに積んだまきみたいにピラミッド型に盛り付けられています。

おでん種は、牛スジのほかに、大根、玉子、昆布、こんにゃく、黒はんぺん、白焼。その中でも、やはり牛スジが、ひときわの存在感。串打ちされたプルプルのお肉は、ほのかにべっこう色のスープをまとい輝いています。

これで、756円という値段にも驚きです。大食漢ではない僕にとっては、これ一皿でお酒のアテとしては十分です。

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▲喜久醉 一合(756円)

お酒は、まず藤枝の「喜久醉」で合わせます。

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▲磯自慢 一合(756円)

次に焼津のお酒「磯自慢」。いずれも静岡を代表する日本酒は、「静岡おでん」との相性も抜群です。

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▲牛スジ

串を持って豪快にほおばりると、じわっと染み出る肉汁の甘味と出汁のうま味。

いやぁ~、これぞシミうまですね。甘味のある牛スジが、鰹ダシベースのおでん出汁で煮込まれることで、プルプル食感の牛スジがさっぱりと味わえますし、それによって静岡酵母を使ったすっきり辛口の味わいが特徴の静岡の地酒にもよく合います。

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▲大根

厚さ5センチはあろうかという大根。べっこう色の見た目の大根は、中までしっかり出汁が染み込んでいて、かむたびに自慢のスープが口いっぱいにあふれます。イワシの出汁粉と青のりをブレンドした調味料をかけると、また奥深い味わいになります。

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▲玉子

「つるかめ」の「静岡おでん」のさっぱりスープは、玉子との相性も抜群です。鰹ベースのスープには、牛スジからでるコクや甘味が溶け出していて、それが黄身の甘味と融合して絶妙なうま味のハーモニーを生みだしているのです。

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▲黒はんぺん

静岡の代表的な食材の黒はんぺんは、イワシなどの青魚のすり身でつくった練り製品。しっかりと肉厚な黒はんぺんを使用しているから、最初は出汁のうま味、その次にしっかりと魚のすり身の味わいがいきています。

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▲こんぶ

大きめにカットされた厚みのある昆布は、何層かに重ねて縫い付けるように串打ちをしているので、はじめの口当たりはねっとりと、その後コリコリと軽快な食感が楽しめます。

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▲こんにゃく

食べやすい直方体にカットされたこんにゃくは、側面に丁寧な切込みが入っていて、ほどよく味が染み込んでいます。ほかのおでん種よりもさらにさっぱりと食べられるので、箸休め的にいただけます。

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▲白焼

白身魚のすり身で作ったはんぺんのような練り製品で、もっちりとした歯ごたえがあります。出汁をよく吸い込む食材のため、「つるかめ」自慢のおでんの出汁の味を、よりダイレクトに味わうことができます。

毎日日替わりの手作りの料理が大皿に並ぶ、色とりどりの「おばんざい」

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▲肉じゃが(756円)

さて、「つるかめ」で人気があるのは「静岡おでん」だけではありません。目の前のカウンターには、大皿によそわれたおいしそうな料理の数々。これらは、Sさんが厳選した食材でこしらえた「おばんざい」です。「おばんざい」は、日替わりで毎日違うメニューが提供されています。

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▲鯵(アジ)の煮付け(756円)

「心掛けているのは、旬の食材を使って季節感を出すこと。あとは、『おばんざい』なので基本を大切にした丁寧な家庭料理を提供することです。揚げ物、煮物、炒め物とバラエティー豊富にして、お客さんが飽きないように工夫しています」

とSさん。

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たまたま、隣のお客さんが、肉じゃがと鯵の煮付けを少しだけおすそ分けしてくれましたが、いずれも家庭料理のやさしい味付けで、お酒の邪魔をしません。日本酒同様に品ぞろえ豊富な焼酎と合わせれば、ついつい飲みすぎてしまいそうです。

おでんの盛り合わせと地酒が二杯で、すっかり大満足。これで、お会計は2,268円とは、お財布にもやさしいお店です。

また、「おばんざい」は、いつもだいたい一品700円程度の価格帯なので、これなら飽きることなく気楽に立ち寄れて、頻繁にやってくる常連客が多いのもうなずけます。

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アットホームで居心地のいい雰囲気の中、地元の常連客と一緒にお酒をたしなむことの幸せ。こんな、「つるかめ」では毎日のように繰り広げられる当たり前のようなことが、簡単に出来そうで出来なかったりするんですね。

そして、そんな幸せの場には絶対に「静岡おでん」のような“ご当地グルメ”がなくてはならない。

「なるほど、玉虫色の”ご当地グルメ”の神髄はこういうところにあるのか」と勝手に得心がいった早春の飲み歩き体験でした。

お店情報

つるかめ

住所:静岡県静岡市葵区七間町10-9 シンワビル 2F

電話番号:054-221-0038

営業時間:月曜日~土曜日 17:00〜23:00

定休日:日曜日・祝日

※この記事は2017年2月の情報です。

※金額はすべて税込みです。

書いた人:間覚(かんかく)

間覚

老舗出版社出身のライター件編集者。間隔ではなく感覚でもなく間覚。間を読みバランス感覚に優れるわけでなく、実際のところはお酒の飲みすぎによる皮膚感覚の低下と頻尿によるトイレに行く間隔の短さに悩みつつある初老。ライフスタイル系雑誌や新聞社などの紙媒体での執筆のほか、自社で雑誌を出版していたこともある。

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