加速する“アメリカの破滅社会”

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ニューノーマルの理

今回は脇田栄一さんのブログ『ニューノーマルの理』からご寄稿いただきました。

加速する“アメリカの破滅社会”

米アリゾナ州で、“銃に囲まれたサンタと一緒に記念撮影”、といったクリスマス(シーズン)イベントが開催されたらしい。

「“サンタと銃”記念撮影に批判も」 2011年12月11日 『NHKオンライン』※現在はリンク切れのため閲覧できません
http://www3.nhk.or.jp/error/error.html

この催しを開いたのはアリゾナ州フェニックスの郊外にある銃の愛好家団体で、サンタクロース姿の男性がいすに座り、その周りを取り囲むように機関銃が置かれています。
10日、大勢の家族連れや若者が会場を訪れ、銃を持ったり肩に銃弾をかけたりして、楽しそうにサンタクロースと記念写真を撮っていました。 撮影料金は1 枚10ドル(およそ780円)です。写真を撮った人たちは「クリスマスの時期に珍しいイベントが開かれると知り、ここに来ました」などと話していました。

主催者は「アリゾナ州は銃に親しみを持つ人が多く、みな喜んでいる。子どもたちを撮る際は親の許可を得ている」と説明していました。

「“サンタと銃”記念撮影に批判も」 2011年12月11日 『NHKオンライン』より抜粋 ※現在はリンク切れのため閲覧できません
http://www3.nhk.or.jp/error/error.html

アリゾナといえば、1月に現職の議員が狙われた銃乱射事件があった。その地での“銃サンタ・イベント”は、銃大国でなければ起こりえないイベント。というか、ちょっと信じられない“狂気のイベント”だ。

そんな中、『The Wall Street Journal 日本版』の記事に、アメリカの年末商戦初日に銃がバカ売れした、という記事があった。

「【肥田美佐子のNYリポート】米年末商戦初日、最大の売れ筋は「銃」―規制緩和加速が原因か」 2011年12月9日 『The Wall Street Journal 日本版』
http://jp.wsj.com/US/Economy/node_357822

銃所持者が多い中西部や南部では、買い物客でごった返す銃器販売店もあり、親が子どもに購入の順番待ちをさせる光景も見られたと報じられたという。

現在、米国で私的に所有されている拳銃は2億7000万丁。市民100人につき90丁が出回っていることになり、中東の「銃大国」イエメン共和国の61丁を優に超える。米国は、銃の数でも、押しも押されもせぬ「超大国」なのである。

凄惨な銃乱射事件が後を絶たないにもかかわらず、米国ではここ数年、銃規制派が押しやられ、銃所持の権利を主張する世論の声が高まっているという皮肉な現実がある。

銃規制問題に詳しいコロンビア大学ロースクールのナサニエル・パーシリー教授は、今年1月、本コラムの取材にこたえ、「多くの米国人が、銃所有の権利を基本的人権だとみなしている。全米ライフル協会(NRA)に対抗する政治的基盤は、ほぼ皆無だ」

米メディアによると、現在、銃を外から見えない状態で携行する「隠し持ち」が禁じられている州はイリノイだけだ。 ニュース専門局MSNBCが、ブラックフライデーの銃売り上げ報道に付随して行った世論調査では、回答者7万9836人の約8割が「銃はクリスマスプレゼントにぴったり」だと答えている。

「【肥田美佐子のNYリポート】米年末商戦初日、最大の売れ筋は「銃」―規制緩和加速が原因か」 2011年12月9日 『The Wall Street Journal 日本版』より部分抜粋
http://jp.wsj.com/US/Economy/node_357822

記事の中に、“ギャラップ調査では、女性が世帯主である家庭の銃保有率は43%”というものがあったので、ギャラップを見てみる。すると銃所持支持者が年々増加していることを表す統計があった。

加速する“アメリカの破滅社会”

『Record-Low 26% in U.S. Favor Handgun Ban』 2011年10月26日 『GALLUP』
http://www.gallup.com/poll/150341/record-low-favor-handgun-ban.aspx
(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
https://px1img.getnews.jp/img/archives/1125.jpg

(警察や一部の者を除いた)アメリカ国民の銃所持を法的禁止すべきか否か、というギャラップ調査において、1959年には「禁止すべき」が60%だったようだが、今年の10月調査(6〜9日)では26%まで低下したようだ。そしてその逆「禁止すべきでない」はご覧の通りで36%から73%へとなっている。社会環境とともに、銃に対する意識変化が見てとれる。

アメリカではこのように、銃規制反対派の勢いが強く、政治家も銃規制の立場をとり辛いという背景があり、惨劇を助長する社会環境にある。今年1月のアリゾナで起こった銃乱射事件では、茶会(ティーパーティー)の看板である“イカれた女”サラ・ペイリン氏に批判が集中していた。理由としては、彼女が全米ライフル協会の終身会員(名誉会員)であるからだが、銃所持を主張する団体の勢力が(アメリカ国内にて)強いことが、選挙において票獲得にもつながるという“劣化した社会環境”にある。

ギャラップの調査結果は、アメリカ市民個人個人の“物騒な社会環境の下、銃は持つべき”という率直な考えを反映したものになるのだろう。しかしながら、社会秩序を体系的に捉えなくてはならない政治家までもがそのような考えを前面に出していることは、“平和的秩序”構築とは疎遠の社会的危機だと捉えることができる。

「目の前の人間は撃つべき」 「降り掛かってくる税には全て反対」(サラ・ペイリン氏)

目の前の危機を振り払うという意味では、茶会(主に新人)の発想は安直で、すべてつながっている。政治家が“個人の身辺問題”のみをイデオロギーとすることは、社会を一層混乱に陥れるだろう。不況の中、異様なナショナリズムがアメリカ国内で拡大しつつあるように思える。

執筆: この記事は脇田栄一さんのブログ『ニューノーマルの理』からご寄稿いただきました。

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