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伊藤洋志さん、複数の仕事で生計を立てる「ナリワイ」って何ですか?

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和歌山で梅の収穫を手伝い、各地で床を張るワークショップを開催し、モンゴル武者修行ツアーを企画し、夫婦でつくり上げる結婚式をサポートする。

手がける仕事の数が多すぎて、ひと口で肩書きを説明できない、この人物の名は伊藤洋志さん(37歳)。彼は、このように個人でできる大小さまざまの仕事を「ナリワイ」と呼び、それを同時に進めることで生計を立てるスタイルを実践している。

そんな伊藤さんに、住まい遍歴と仕事に対する考え方を聞いた。

最近は桃農家もやってます(笑)

伊藤さんの事務所は品川区内の自身が運営するシェアオフィスにある。そこへ伺うと、まず美味しそうな桃が出てきてびっくりした。

【画像1】絶品の桃(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「最近は桃農家もやってます(笑)。山形県東根市の農場で穫したての桃です。これも『ナリワイ』のひとつで、農作業を手伝いながら、収穫物を個人向けにネット販売しています。この桃は多いときで3日で40箱売れたんですよ。農家の人たちとの交流は楽しいけど、最初は山形弁が分からなくて困りました」

他に、みかん、さくらんぼ、梅も手がけている。伊藤さん、じつは京都大学大学院農学科卒なのだ。専門は林業だったものの、農学部卒なのに農業と無関係に生きていていいのかなと思ったのが、「農家ナリワイ」をはじめた動機でもあります。

【画像2】終始やさしいトーンで語る伊藤さん(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

新卒社員4人のベンチャーに参加

「京都では最初、家賃4万7000円のワンルームに住んでいました。でも、一人暮らしってつまらないんですよ。早々に3人で大学のそばにシェアハウスを借りました。4LDKの一軒家で家賃は11万円ぐらいでした」

【画像3】京都時代に住んでいたシェアハウスの間取り(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

大学院卒業後は東京に移り、新卒社員4人のベンチャーに参加する。1年ほど働いたが激務のため肌荒れなどの体調不良がおこり、退職を決意。同時に、院の修士論文が『現代農業』という農業専門誌に掲載されたことがきっかけで、ライターとしての仕事も請け負うようになるのだが、ライター仕事だけでは食べていけず、他の仕事も模索し始めた。

「このころ住んでいたのは東急目黒線沿線の風呂なしアパート。銭湯にハマっていたので、結果的に風呂なしでも広い2Kの物件を見つけました」

出会った人たちの役に立つことをやる

基本的にコミュ力がないので、会社やクライアントと対峙する仕事は自分には向いていない。人と競争してのし上がる“バトルタイプ”の人間でもない。そう考えた伊藤さんの「ナリワイ」は、学生時代にボランティアで何度か行ったモンゴルへのツアーから始まった。そもそも既存のツアーでは満足できる内容のものがなかったから、だったら自分でつくろうと、大学時代から親交のあったモンゴル人と組んでツアーを企画担当した。

仕事として見通しが立ったのは、次に企画した「田舎で土窯パン屋を開く」という短期集中講座からだ。きっかけは地方に移住者を呼びたいという知り合いに頼まれたこと。移住セミナーをやっても誰も来ない、と思った伊藤さんは、知り合いがパンを焼く技術を持っていたことから、手に職をつけたい人、地方でパン屋をやりたい人はそれなりにいるだろうとこの企画を考えた。

さらに企画を考え、計7つの「ナリワイ」をつくる

「どれも営業をかけたとかじゃなく、単に出会った人たちの役に立つことをやるというシンプルなきっかけ。そして、みんながやりたくなるような共通なテーマを見つけて企画に仕立てるのです。ひとつの『ナリワイ』だけでは食べていけませんが、3つ以上あれば東京でも十分に生活できます」

大学・大学院時代に各地方をめぐり、職人さんの仕事内容や生計の立て方などを調査をしているとき、「専業でひとつのことしかやらない人に比べて、副業でいくつかの仕事をしている人の方が生活が安定していて楽しそうだと感じたんです」と伊藤さん。こうしたフィールドワークの経験から、複数の仕事を同時に進める「ナリワイ」構想の下地ができたそう。

【画像4】左が伊藤さん。モンゴルツアーも今年で10年目。できるだけ現地の暮らしに近いことが体験できる、参加者がユニークで各自の特技をモンゴル人に披露するのもツアーのおもしろさだ。なかなか美容室に行けない遊牧民のために美容師さんが髪を切ってあげたこともあるという(画像提供/伊藤洋志)

2007年には世田谷区内でボロボロの家を借りてシェアハウスへ改装、再び共同生活を始めた。メンバー4人、家賃14万円の庭付き一戸建て。昭和30年代に建てられた、この古い家を改造したのが初めての「家いじり」だった。

【画像5】東京で最初にシェアハウス改装を手掛けた庭付きの一戸建て(画像提供/伊藤洋志)

「家に求めるものは時代ごとに違いますが、ひとつだけ言えるのは人と住んだ方が面白いし、情報も得られるということ。こうした会話から思い付いたアイデアもたくさんあります」

少し視点を変えること、地道に物件を探し続けること

現在は品川区に住み、自宅もオフィスもそれぞれシェアしている。現在のシェアオフィスは約40坪と、かなり広い割に家賃がお得な物件。どうやって探しているのかと聞いてみると、実はそれほど特殊な探し方をしているわけではないとのこと。

「ボロくて改装できそうな物件を探したり、散歩しながら見つけたり。駅までは遠いけど、家の前のバス停からバス1本でターミナル駅に行ける物件(写真上)もありました。自転車で半径○kmなど、少し視点を変えること、そして地道に物件を探し続けることで、理想の物件に出会えています」

【画像6】品川区のシェアオフィスの一角。奥のカーテンは「これは!」と思う仕事をしているデザイナーに声をかけて一緒につくったシルクスクリーンでのオリジナルプリント。建築設計やデザイン関係の事務所が入っているという(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

違う環境に身を置くとアイデアが出てくる

最後に、住まいについては「賃貸派」か「購入派」かについて聞いてみた。

「イメージがあればよい建築家を探して家を建てて、そのイメージがなければ賃貸でいいんじゃないかと思います。とはいえ、モンゴル人は自分で家を建てるのが普通だし、スウェーデンの図書館では内装工事用の工具も借りられます。自分で家具や内装をいじるのがやりやすい環境がある。日本も単なる賃貸と購入以外の選択肢がもっと増えるといいですね」

また、「違う環境に身を置くとアイデアが出てくる」という持論から海外での長期滞在も考えており、実際に今年の終わりぐらいから3カ月ほど台湾に住むつもりだそうだ。会社への通勤がないため、居住地はどこでもいいのだ。

生活と直結した複数の「ナリワイ」で食べていくというユニークな生き方は、“非バトルタイプ”と自覚した伊藤さんにとって試行錯誤の末にたどり着いた境地だった。●取材協力

・ナリワイ
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