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偏屈な作家たちの才能を開花させた天才編集者の「ほめ方」が超スゴイ

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育成の上手い上司の条件としてよく挙がるのが「ほめ上手」だ。

ほめたり激励したりすることで部下のモチベーションを上げ、個々のパフォーマンスを上げる。

それはコンテンツ作りでも変わらない。

例えば本においては、作者のモチベーションを高め、より良い文章を書いてもらうのが編集者の一つの役割だが、そこに「ほめる」「励ます」という行為は必要だ。

 ◇

『名編集者パーキンズ』(A.スコットバーグ著、鈴木主税翻訳、草思社刊)は1900年代前半、アメリカの名門出版社であるチャールズ・スクリブナーズ・サンズ社に在籍し、スコット・フィッツジェラルドやアーネスト・ヘミングウェイ、トーマス・ウルフらを発掘した天才編集者マックス・パーキンズの評伝である。

この本は10月7日に先行公開した映画『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』の原作にもなっている。

映画では編集者としての地位を確立しているパーキンズと、なかなかデビューができない小説家トーマス・ウルフの2人の友情を中心にストーリーが進む。

劇中のパーキンズはウルフに対して非常に厳しく接する。膨大な原稿から文章を削るよう指示され、難を示す小説家に対して、有無を言わさずそれを遂行させる。辣腕を振るう彼の姿は絵に描いたような「名編集者」である。

しかし、原作の評伝では、そうした姿もうかがえる一方で、作家のモチベーションを支える「よき理解者」としての姿も印象に残る。

 ◇

パーキンズは常に作家に寄り添い、もし新聞の書評で作品が低く評価されても、とにかく励ます。

当時はメールもなく、やりとりの基本は手紙である。その手紙には、作家を慮り、慰め、激励し、才能を賞賛する言葉が並んでいる。

例えば、『偉大なるギャツビー』を出版した直後、なかなか売れ行きが伸びず、出版前に不安視していたことが的中してしまったフィッツジェラルドに対して、「売れ行き好調、好評、しばし待て」と電報を打ってから、このように手紙をあてたそうだ。

「書評家の多くはこの本を扱いあぐねるらしく、どうも十分に理解していないようですが、それでもたいへん高く評価しており、それどころか、どの批評家もこの作品のもつ活力に打たれ、興奮している感さえあります」

「とるに足らない書評家や口さがない連中などの声高な騒ぎが静まれば、『偉大なるギャツビー』はたぐいまれな作品として群を抜く存在になるでしょう」

(『名編集者パーキンズ(上)』182ページより)

実際のところ『偉大なるギャツビー』は当時あまり売れなかった。しかし、パーキンズは作品の偉大さを信じ込み、フィッツジェラルドを励まし続けた。

この作品が評価されるのはフィッツジェラルドが死んでからしばらく後のことである。現代では、20世紀を代表する名作の一つとしての評価を受けており、パーキンズの目は正しかったのだ。

また、非常に我が強く、プライドの高い性格だったというヘミングウェイから、短篇小説『午後の死』の原稿を受け取ったパーキンズは次のように書き送っている。

「あなたに向かって、ただ立派な作品だと書いたくらいではとても足りません。読んだだけで、わたしにとって実に有益だったからです」

「この作品のおかげで幸せな気持で床につけました」

(『名編集者パーキンズ(上)』422、423ページより)

才能溢れるものの、ひと癖もふた癖もある、偏屈な作家たち。自分が惚れ込んだ作家や作品を信じ、相手が苦しいときは本心から励ます。

こうしたパーキンズの姿勢は、現代に生きる私たちにおいても充分に活用できるものだ。

 ◇

パーキンズは「作品はその作家のもの」ということをよく知っていた。だから、パーキンズは彼らの才能を伸ばすための黒子に徹したのである。

時にはカウンセラーとなり、時にはマネージャーとなり、時には恋愛相談も受け、時には金貸しの役割も果たす。作家の才能を最大限引き出すために、編集者としてできることをし尽くしていたのだ。

「褒める」ときは全身全霊で。本心から思っていることを小手先で言葉を連ねていても、すぐに見抜かれてしまうだろう。

今に至るまで読み継がれる作品を世に出してきた天才編集者の激励術。これは見習う他ない。

(新刊JP編集部・金井元貴)

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