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渋谷系ミュージシャンにも大きな影響を与えたスタイル・カウンシルの洒落たデビュー作『カフェ・ブリュ』

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80年代前半のポピュラー音楽界は、エレクトロ・ポップ、ヘヴィメタル、ディスコ、AOR、ニューウェイヴ、ワールドミュージック等々が乱立する戦国時代だったと思う。そして、そのどれもが70年代中頃に登場したパンクスピリットを超える何かを求めて活動していたように僕は感じた。そんな時、ソウルやジャズをモチーフにしながら、洒落た音楽を鼻歌混じり(のように見えただけだが)で演奏するグループが現れた。それがスタイル・カウンシルだった。彼らは「楽しみながら音楽やろうよ」と言いたげで、自分たちの好きな50〜60年代の音楽をやっていた。同時代の他のグループには見られなかった独特の“知的な軽さ”が持ち味で、その“知的な軽さ”が後に日本の渋谷系にも大きな影響を与えることになるのだ。というわけで、今回はポール・ウェラーとミック・タルボットがタッグを組んだ、スタイル・カウンシルのお洒落なデビュー作『カフェ・ブリュ』を紹介する。

パンクスピリットを持ちつつポップな音楽性も持ったザ・ジャム
パンク人気がまだ衰えてなかった1977年、ポール・ウェラー率いるザ・ジャムは「イン・ザ・シティ」でデビューし、スピード感のあるパンクグループとして全英レベルの人気を得る。彼らの強みは音楽性だけでなく、60sを彷彿するファッションやライフスタイルにあり、モッズ・リバイバル(1)の中心に担ぎ上げられることになる。かなり乱暴に言ってしまうと、日本でモッズにあたるのは暴走族だと思う。ツナギを着てバイクに乗り、髪はリーゼントで音楽は矢沢永吉…みたいな感じ。
今から思えば、ジャムはパンクグループというよりはR&Bをこよなく愛するビートグループなわけで、ある意味でポール・ウェラーの仕掛けた罠にみんな騙されていたような気がする。78年にリリースされた3rdアルバム『オール・モッズ・コンズ』以降、彼のR&B好きはだんだんエスカレートしていき、全英1位を獲得したラストアルバムの『ザ・ギフト』では、ホーン・セクションを参加させ、ファンクやダブ(2)にも挑戦するなど、黒人音楽をなぞるだけでなく、新しい音楽への追究が本格化していただけに、このタイミングで解散したのは残念であった。このまま続けていけば、もっと充実した作品が生まれていたはずなのに…と考えたファンは少なくなかっただろう。

スタイル・カウンシルのクールなデビュー
ところがザ・ジャムの解散後、キーボードの達人であるミック・タルボットをパートナーにして、すぐにスタイル・カウンシル名義のシングル「スピーク・ライク・ア・チャイルド」(‘83)をリリースする。ここではジャムの後半に見られたモータウン・ソウル(3)の影響が、もっとはっきり流用というかたちで出ていて、パンクロックとしてジャムを聴いていたファンを失望させたのだが、僕は逆に喜んだぐらいだ。なぜかと言うと、ポール・ウェラーの音楽は本来パンクというよりはポップス寄りなので、ジャムという狭い枠の中では表現できないことが多いはずだと想像できたからである。ただ、このデビューシングルでは60年代ソウルをここまで真似して大丈夫か?…という懸念を抱いたことも事実である。

本作『カフェ・ブリュ』について
そして、翌年に待望のデビューアルバム『カフェ・ブリュ』がリリースされる。アルバムを聴いてみて、デビューシングルがスタイル・カウンシルの一側面であり、単なる予告編であることが分かった。
アルバムの収録曲は全部で13曲。ファンキー・ジャズ(4)、ジャンゴ・ラインハルト風(5)、シンセと打ち込みでのラップ、ファンク、ポール・ウェラーのオリジナル(6曲目の「マイ・エバー・チェンジング・ムーズ」と10曲目の「ユー・アー・ザ・ベスト・シング」は名曲)、フィドル(6)入りモータウン風ソウルなど、ポール・ウェラーの好きなスタイルばかりが収められている。これって一見まとまりのないように思えるのだが、アルバム全編を通してのコンセプトが“クール(=お洒落)”なので、統一感はちゃんとある。何より聴いていて楽しい…実は、これがポール・ウェラーの絶対的な主張なのである。それにしても、1曲目にピアノを使ったファンキー・ジャズ風インストを、最後の曲にオルガンを使ったソウル風インストを配置するところをみると、ポール・ウェラーってモータウンだけじゃなくて、ブルーノートやスタックス(7)も大好きなんだろうな。
混沌とした80年代のポピュラー音楽界において「肩肘張らず良い音楽を笑顔で楽しもうよ。昔のコピーだっていいじゃん」というウェラーの考えは正解だったと思う。当時は、それほど作り込まれた(過剰な)音楽が多かった。そのことに異議を唱えたスタイル・カウンシルは、このアルバムで多くのファンを獲得し、音楽の楽しさを再認識させてくれたのである。

本作が生み出した大きな影響
本作はイギリスで多くの新しい音楽路線を用意することになる。例えば、90年代に脚光を浴びるイギリス発信のUKソウル、アシッド・ジャズ、ブリットポップ、そして日本の渋谷系など、大きな音楽ムーブメントの根幹にあるのがスタイル・カウンシルの『カフェ・ブリュ』なのである。
この後、2ndアルバム『アワー・フェイバリット・ショップ』が全英1位を獲得、こちらのほうがアルバムとしての完成度は高いが、衝撃度や後の影響力という点で『カフェ・ブリュ』がスタイル・カウンシルの最高傑作だろう。最後になるが、本作ジャケットのカッコ良さは格別なので、できればLPを手に取ってもらいたい。
(1)モッズ

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%83%E3%82%BA

(2)ダブ

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%96

(3)モータウン

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%82%A6%E3%83%B3

  

(4)ファンキー・ジャズ

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%82%AD%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%BA

(5)ジャンゴ・ラインハルト

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%82%B4%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%8F%E3%83%AB%E3%83%88

(6)フィドル

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%89%E3%83%AB

(7)スタックス・レコード

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%AC%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%89

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