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現役猟師が綴る、自分自身が奪った「いのち」の大切さ

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“僕は大あわてでナイフを取り出し、心臓をひと突きにしました。「ゴボッゴボッ」と傷口から血の噴き出る音とともにイノシシは絶命しました。あたりは静まり、イノシシの口と血が噴き出す傷口からゆらゆらと湯気があがっていました”

 こちらは京都大学在籍中に狩猟免許を取り、先輩猟師から伝統の「ワナ猟」を学んだ千松信也さんが人生で初めて念願のイノシシを獲ったときの回想シーン。本書『ぼくは猟師になった』では、千松さんが猟師になった経緯や退屈しない山での狩猟生活を紹介しています。

 千松さんはお金を稼ぐ為ではなく、自分たちで食べる分の肉は自分自身で調達したい、との思いから学生時代から現在に渡って狩猟活動を行っているそう。獲ってきた肉をみんなに食べて貰う喜びを知ったのは大学の寮に入っていたころのこと。猟師生活で初めて仕留めた獲物で”シカ肉大宴会”をしたときの様子をこう綴っています。

「この日、僕は生まれて初めて自分で獲物を殺し、解体してその肉を食べました。(中略)集まってくれた友人たちがおいしそうにシカ肉を頬張り、焚き火を囲みながらにぎやかに談笑する様子が、強く印象に残っています。この日は僕の狩猟人生の中で忘れられない重要な一日になりました」(本書より)

 本書ではワナにかかったシカやイノシシを自らの手によって絶命させ、どのように解体していくのかという過程が写真も交えて紹介されています。こうした”生々しい”文章や写真を目にすると、その残酷性に嫌悪感を覚える人もいるかもしれませんが、私たちの食卓に上るおいしい肉料理が、どのような経緯で「準備」されているのかを、改めて教えてくれます。

 千松さんはあとがきでこんな風に述べています。

「自分が暮らす土地で、他の動物を捕まえ、殺し、その肉を食べ、自分が生きていく。そのすべてに関して自分に責任があるということは、とても大変なことであると同時にとてもありがたいことだと思います。逆説的ですが、自分自身でその命を奪うからこそ、そのひとつひとつの命の大切さもわかるのが猟師だと思います」(本書より)

 飽食と言われている今の日本で私たちはどう食べ物と向き合っていくべきなのか。本書を読みつつ、今一度考えてみてはいかがでしょうか。

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