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【映画を待つ間に読んだ、映画の本】 第31回『ぜんぶ大阪の映画やねん』〜15年前、大阪を愛する著者が語った、「大阪を舞台にした映画たち」の本。

生活・趣味

●意外に多い、大阪を舞台にした映画。

 この連載を始めた時、新しい本だけではなくて以前出版された映画の本も扱おうと決めていた。自分が映画を見る上で、影響を受けた本はたくさんある。映画だって初めて見る映画は、新作と同じで、新作と旧作の境界線が、今や希薄になっているじゃないか。映画について書かれた本も同じで、昔書かれた映画の本から、「こういう見方があったのか!!」とインスピレーションを受けることが、ちょくちょくある。

 例えばこの『ぜんぶ大阪の映画やねん』という本は、2000年11月発行とあるから、かれこれ15年以上前に世に出たものだ。図書館の本棚でこの本を手にしたのは、常々僕が「大阪を舞台にした映画」に惹かれていたことが大きい。とりもなおさずそれは、大阪という街が持っている正体不明なパワー、エネルギッシュな雰囲気に惹かれてのことだ。『ぜんぶ大阪の映画やねん』には、もと新聞記者だった式部好伸さんが、大阪を題材にした映画を取り上げ、また実際に映画が撮影された場所や、その舞台となった土地について、様々な知識と情報だけでなく、歴史的経緯まで細かく読者に伝授してくれる、これはお得な本である。

●森田監督、映画はディテールにこだわらんと。

 また巻末には「大阪の映画」として、大阪が登場する映画をリストアップしているのだが、トータル本数520余本!! しかもこれは15年前の段階でだから、現在カウントすれば、さらに増えているに違いない。古くは織田作之助原作『夫婦善哉』から竹内力主演『難波金融伝』まで。また本書は単なる作品ガイドではなく、作品に対する批評も書かれていて、例えば森田芳光監督の『悲しい色やねん』に登場する大阪弁に対して「こんなにひどい大阪弁はない」とばっさり。「関西弁の正確さにこだわると、俳優の感情が抜けてしまう」との森田監督の意向でそうなったという経緯を明らかにした上で、「映画はディテールにこだわらないとダメ。ディテールのひとつに話し言葉のリアリズムがあり、それは映画には必要不可欠」と持論を展開する。それでいて押しつけがましさを感じないのは、かつて新聞記者だった式部さんの冷静な姿勢によるものか。

●井筒監督『ガキ帝国』にこってりと描かれた、ミナミの町。

 個人的に大阪を舞台にした映画といえば、この人を思い出す。井筒和幸監督。彼の『ガキ帝国』、その続編で某ハンバーガー会社の社長の怒りに配給会社がビビってしまい、今や幻の『ガキ帝国・悪たれ戦争』、ナインティナイン主演の『岸和田少年愚連隊』。どれも大阪に生息する、元気だけが取り柄の優良不良少年たちの、喧嘩に明け暮れる日常を描いた傑作たちだ。大阪に3回しか行ったことのない筆者としては土地カンが働かないが、大阪の2つの繁華街・キタとミナミでは雰囲気も、そこに生息する人たちの気質も異なるようで、ミナミを舞台にした『ガキ帝国』は「まぎれもなくミナミの映画」であり、「井筒監督は奈良県人だが大阪に遊びに来る時はいつもミナミだったそうだ。だから『大阪=ミナミ』のイメージが固定していて、大阪人ではないものの、ここまでこってりとしたミナミが描けたのだろう」と賛辞を惜しまない。この本の刊行後に井筒監督が発表した、京都を舞台に恋と喧嘩の日々を描いた『パッチギ!』を式部さんが見たら、どう評価するだろうか。

●川島雄三監督と織田作の友情の結晶『わが町』の真実。

 そして本書の最後を飾るのは、織田作之助原作、川島雄三監督の日活映画『わが町』だ。「エピローグはこの映画しかないと決めていた」とまで言う式部さんほどではないが、筆者が数ある川島監督作品の中で最も好きなのがこの『わが町』で、DVDの解説書まで書いている。その『わが町』で大友柳太郎が演じる、通称「ベンゲッタの他あやん」の、その気質こそが大阪人だと式部さんは言い放つ。「無骨で不器用ながらも、自分の信じる処世観をとことん貫こうとする姿勢が、まるで暖簾を守り継ごうとする大阪商人のようにも見える」。

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