福岡の「皿うどん」って、どんなうどん?

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皿うどんのロシアンルーレット

長崎市出身の僕にとって、「皿うどん」といえばアレ。パリパリに揚げた細麺に具だくさんの餡がかかったやつだ。長崎の実家では、「皿うどん」はお客さんがあったときに出前で食べる大皿料理で、残ってフニャフニャになった“二日目の皿うどん”は、フライパンで炒めて食べるというのがお約束だった。

そんな僕も福岡に住んでもう20数年になるが、福岡では「皿うどん」と注文すると、ある店では麺がごっつい「堅焼きそば」が出てきたり、ある店では「塩焼きそば」のようなものが出てきたり、ただの「ソース焼きそば」が出てきたり……。確かに“皿うどん”という単語からはあの料理はイメージしにくいのだろう、店によってどんな「皿うどん」が出てくるか分からないというロシアンルーレット的なスリルを感じてきた。そんな皿うどん事情の福岡だが、福岡で最も歴史のある中華の老舗

「福新樓」には「博多皿うどん」というメニューがあるという。「長崎」ならぬ「博多皿うどん」とはどんな料理なのか。

「福新樓」は明治37年創業の福岡で最初の中国料理店。現在は繁華街の天神からほど近い今泉の5階建てのビルで営業する中国料理店だ。

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2014年に天神から今泉に移転。

この「福新樓」で看板メニューの一つにもなっているのが「博多皿うどん」1,134円。麺は太めの中華麺で、具材は餡かけではなく、麺に絡めて炒めてある。見た目でいえば、前述の「長崎皿うどん」よりも焼きそばに近い。しかし、焼きそばと決定的に違うのは……麺が旨い!もっちもちの麺は味が麺の中までしっかり染みていて、麺そのものが旨いのだ。肉も野菜もたっぷり入っているし、見た目以上に食べ応えもある。

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これが「博多皿うどん」。ボリュームもけっこうある。

「博多皿うどん」誕生秘話

聞けば「博多皿うどん」は昭和初期に「福新樓」で生まれた料理なのだとか。そもそも「博多皿うどん」も「長崎皿うどん」同様、ちゃんぽんの発展系。

「『皿うどん』って言うぐらいだから、元は細麺じゃなくて太麺でしょう?」と、「福新樓」の広報担当・張端宏さん。当時、中華麺の製麺所は長崎にしかなく、時間をかけて長崎から汽車で運んでいた。しかし、加水率が高い太麺は日持ちしないため、麺が着くと傷まないように焼き固めるようになった。それを料理として出す際にスープで煮込んで戻していたことから、「博多皿うどん」が生まれたのだという。

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お話をうかがった「福新樓」広報担当の張さん。

今回、特別に「博多皿うどん」の作り方も見学させてもらったのだが、まず用意されたのはやはり事前に焼かれた中華麺だ。

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事前にしっかり焼かれた中華麺。

用意された中華麺はひとまず置いといて、よく熱した中華鍋で刻んだ具材をしっかり炒める。2004年に創業100周年を迎えた「福新樓」では、「原点回帰」の一環として、「昭和初期の博多皿うどん」を復刻。当時の作り方同様、イカやエビなどの海鮮の代わりに蒲鉾やてんぷらを使っていると言う。メーカーは同じ福岡の100年企業「西門蒲鉾」(博多区上呉服町)だ。

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まず具材を炒める。

具材に火が通ったら、スープを入れてしばらく煮る。

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スープに具材の旨みが溶け込む。

ここでいよいよ用意していた麺を投入。

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旨みたっぷりのスープを麺に吸わせる。

スープがなくなるまで麺を煮るので、麺には旨みがたっぷり。意外と食べ応えを感じたのは、麺がスープを吸って重くなっているからなのかもしれない。

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スープがなくなるまで煮込む。

「博多皿うどん」に中華の奥義あり!

「博多皿うどん」の調理には「揚げる」「煮込む」「炒める」など中華料理の技法の7割が入っているため、「福新樓」の新人料理人は3年間、社員のまかないとして「博多皿うどん」を作り続けるのだとか。技法を身につけるというのは当然だが、いつ誰が作っても同じ品質のものに仕上げるためでもあるという。まあ、作る方も大変だろうけど、毎日同じものを食べる方も、それはそれで大変だ。恐るべし、料理人への道!

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こちらはベテラン、料理長の張さん。美しく盛り付け!

そういう訳で、この料理が生まれた昭和初期の様子を復刻したという「博多皿うどん」。なかには「二代目(の社長)が作るのをよく食べていた」と懐かしむ年配のお客さんもいるという。

「皿うどん」といえば細麺パリパリという思い込みが強かったのであまり意識していなかったんだけど、この「博多皿うどん」に倣った皿うどんを出している中華料理店は、福岡にはけっこうあるらしい。「福新樓」でも自社のオリジナルメニューだからと独占している訳ではない。それどころか、ホームページでは、作り方を動画で公開しているのだ。あらためて考えてみると、「皿うどん」を注文したら「焼きそば」が出てきた、と思っていたのは、もしかしたら「博多皿うどん」だったということもあったのかもしれない。とにかく、福岡にも旨い「皿うどん」があるとわかったのは、大きな収穫だったとしよう。

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「博多皿うどん」完成。

お店情報

中国菜館福新樓

住所:福岡県福岡市中央区今泉1-17-8

電話番号:092-771-3141

営業時間:11:30~22:00(OS21:00)

定休日:火曜日

ウェブサイト:http://www.fuxinlou.co.jp

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書いた人:

兵土 G. 剛

福岡のタウン情報誌の編集部に15年勤めた後、フリーライターに。食うの好き、飲むの好き、きれいな女の人好き。マメさなし、根性なしの偏屈じじぃ。 Twitter:@taul_nakataney

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