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“プライベートはどうでも、音楽性だけは迷走させない”と証明する、カニエらしさを追及した『ザ・ライフ・オブ・パブロ』(Album Review)

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 最新の米ビルボード・アルバム・チャート(4月23日付)で、No.1デビューを果たした、カニエ・ウェストの新作『ザ・ライフ・オブ・パブロ』。リリース前には、突然ツイッターでアルバム・タイトルを変更してみたり、ジェイ・Zのストリーミング・サービス「タイダルのみでしか発表しない」と宣言したり、リリースを巡って様々な騒動(?)を起こしてきたカニエだが、これもまた、SNSが主流である、時代の流れを読み取った、見事なアルバム・プロモーションともいえる。また、ほぼストリーミング数だけでNo.1を獲得した初のタイトルということでも、最先端といえるのではないだろうか。

 前作『イーザス』(2013年)から3年ぶりとなる本作。すでに1年前あたりからいくつかのリリース情報があがっていて、「ヒップホップだがゴスペル的要素もある」と自身が話していたが、フタを開けてみると、確かにヒップホップ・アルバムというよりは、歌モノが目立つ内容だ。ラップ・アルバムの常識を覆した『808s&ハートブレイク』(2008年)に近いテイストだが、それよりももっと宗教的で、ポップな要素はなく、ヘヴィなトラックが並んでいる。

 先行シングルとしてリリースされた「フェイマス」には、あの“カニエVSテイラー・スウィフト”の因縁の対決が、和らげることなく綴られていて、「オレがテイラーを有名にしてやった」と皮肉たっぷりに歌い、フックを「ワーク」が大ヒット中の女王、リアーナが担当するという、話題性たっぷりの内容が盛り込まれている。テイラー含め「相変わらずねぇ…」と呆れる声も飛び交うが、この迷走っぷりも含めて、カニエ・ウェストらしさといえるだろう。

 本作は、その「フェイマス」に参加したリアーナやスウィズ・ビーツをはじめ、ゲスト陣も豪華。ザ・ウィークエンドやクリス・ブラウンといった人気R&Bシンガーから、チャンス・ザ・ラッパー、トラヴィス・スコット等、今を彩るラッパーたち、自身が影響を受けたであろう世代の、チャック・ブラウンやエル・デバージもいれば、本作のコンセプトでもある、ゴスペルシーンから、カーク・フランクリンも参加している。

 恒例のネタ使いも健在で、今作ではほぼ全曲にサンプリング・ソースがクレジットされている。たとえば、先行曲「フェイマス」では、ニーナ・シモンの「ドゥ・ホワット・ユー・ガッタ・ドゥ」と、シスター・ナンシーの「バン・バン」の2曲使い、「30アワーズ」では、アーサー・ラッセルの「アンサーズ・ミー」を起用し、ファレル、チャールズ・ブラウン、そしてネリーがセッションするという、一見違和感ありまくりだが、それをひとつにまとめあげたカニエらしい業が堪能できる。

 パッケージ(CD)での発売は予定されていないからか、「これってインディー盤?」と思うようなヤッツケ感満載のジャケ写に、前作『イーザス』同様、「曲が売れない時代」の訴えが感じられるが、それがダサくなりすぎず、あくまでカニエ独特のアートだと思わせるところも、さすがといえる。

 ここ最近はゴシップ報道が続き、SNSを通じ、自身のファッション・ブランドで、5300万ドルもの負債を抱えていることを発表したばかりだが、「ならもっと売れる方法で曲を売り出せば?」と言いたくなるも、あくまでミュージシャンとしてのプライドを崩さない姿勢に、ア―ティストとしての意地みたいなものを感じた。そして、「プライベートはどうでも、音楽性だけは迷走させない」と証明できる、魅力に溢れた作品だと実感できたアルバムだ。

Text: 本家 一成

◎リリース情報
『ザ・ライフ・オブ・パブロ』
カニエ・ウェスト
2016/2/14 RELEASE

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