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自治体のコストカットが「公共サービスの雇用」を劣化させる 民間委託で保育士が給与カット、雇い止めも

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2月22日放送の「クローズアップ現代」(HNK総合)は「広がる”労働崩壊”~公共サービスの担い手に何が~」と題し、保育や介護、建設などの公共サービスの現場で、労働者が追い詰められている現状を採り上げていた。

番組には、京都市立病院に併設された保育所が登場。5年前に財政削減の一環で公立病院が独立行政法人になり、病院に併設された保育所の経営が民間委託に。数十人の保育士は、全員非正規雇用となってしまった。
市は「委託後も適切な保育が確保されている」と問題視せず

民間委託を機に、給与も2~3割カット。生活できないと辞めていったベテラン保育士も多く、突然保育士が交代したストレスで円形脱毛症になる子どももいた。34年間働いてきたベテラン保育士のKさんは、こう訴える。

「(保育士というのは)子どもの命を預かっている仕事だと思うんですね。先が見えない中では本当に子どもも可哀想だし、保育士も育たない」

さらに委託契約満了に伴い、競争入札で新しい委託先になったことが追い討ちをかけた。3割近く安い予算の企業に決まり、保育士は全員入れ替え。Kさんは他の保育所で契約社員として働いているが、給料は手取りで13万円。正職員だったころの半分にもならない。

保育士たちは今も雇い止めが不当であると訴え続けているものの、Kさんは疲れた表情で「収入がガクンと減ったので、あまり先のことが考えられない」と将来の不安を訴えた。

NHKの取材に対し、京都市は「雇用安定などの労働条件については、委託先企業内で決定されるべきもの」とし、「委託後も適切な保育が確保されている。毎年度実地監査を行い、保育が適切に行われていることを確認していく」とコメントしている。
識者「労働の担い手を人間として尊重しない社会に未来はない」

しかし働く人の生活が不安定な状態で、本当に「適切な保育」が行えるものだろうか。雇用問題も民間に任せて、完全に目を背けているとしか思えない。番組をみた視聴者からは、ネットで批判が相次いだ。

「保育士がホイホイ首になる国に明日はない」
「コスト削減、効率重視…。削りに削って、もう限界に来てるじゃないか」
「コストダウンのしわ寄せって結局一番末端の労働者に来るんだよなぁ」

中京大学の大内裕和教授は「地方公共団体が直接雇用する3分の1が非正規で、内部でも年収200万円未満のワーキングプアを作りだしている」とした上で、「それが関連業務にも及んだ。社会全体で労働ダンピングを促進してしまった」と指摘する。Kさんがいくら探しても安い給与の保育所しかなくなったのも、そんな影響があったのかもしれない。

国谷裕子キャスターが「(日本は)貧しさに向けてスパイラルが止まらない状況になっていて、その中で失われる産業競争力も出てきそうですね」と指摘すると、大内教授も同調し、「労働としての担い手を、人間として尊重しない社会に未来はない」と語った。
「税金の無駄遣いをなくして」とは言いたいが

保育の分野で雇用崩壊が起こっている背景について、地方自治総合研究所研究員の上林陽治さんは、2001年以降に国が推し進めてきた構造改革が引き金となったと指摘する。

保育の分野は予算が高いとされ、人件費の抑制を目的とした民営化が進んだ。保育士の平均賃金が下がり、それを理由に離職する人が後をたたない。上林さんはこう指摘する。

「働き続ける意志を挫かれていきますから、保育サービスという産業自身が維持できるのかという瀬戸際にある」

税収減や財政再建の要請から、すべての公共サービスをこれまでのように維持することなど無理なことはもちろん分かっている。しかし公共サービスにおける雇用の劣化は、保育や介護の質、建築物の安全性や人件費相場など、多くの市民や労働者に返ってくる。

「税金の無駄遣いをなくして」とは言いたいものの、その一方で「削るところはそこじゃない」という思いも強く湧き上がってくる。とはいえ、どこをどう諦めればいいのかという判断も簡単ではない。(ライター:okei)

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