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中島裕翔主演の映画『ピンクとグレー』 行定勲監督に開始62分後の“あの仕掛け”について聞いてみた

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現役アイドルの加藤シゲアキ(NEWS)が芸能界の闇を描いた同名デビュー小説を行定勲監督が映画化した『ピンクとグレー』(1月9日より公開中)。大人気スターでありながら突如謎の死を遂げる主人公の白木蓮吾役に中島裕翔(Hey! Say! JUMP)、その親友であり蓮吾の死の真実を追う河田大貴役に菅田将暉を迎えた話題作だ。

本作の注目は何と言っても開始62分後の“ある仕掛け”。事前に原作を読んでいたとしても、思わず「えっ」と声を上げてしまった人もいるだろう。

このたびガジェット通信は、本作の監督と共同脚本を手掛けた行定勲監督にインタビューを実施。原作の青春小説に対する向き合い方、あの仕掛けが誕生した背景などについて語ってもらった。

(以下、原作のネタバレおよび映画の展開に一部触れている個所あり)

――加藤シゲアキさん原作の『ピンクとグレー』を、『GO』や『世界の中心で、愛をさけぶ』などの青春映画を手掛けてきた行定監督が映画化すると聞いた時からワクワクしていました。原作を読んだ時の印象を教えてください。

行定監督:芸能界というものについて自身の肌で感じている作家が、どこかメタ・フィクション的な要素をあわせ持ちながら、ちゃんと自分の青春とも向き合っている。ある種の鮮烈さや生命力が感じられる小説だと思いました。

でも、鮮烈さというのはその作家自身が持つものじゃないですか。僕は加藤シゲアキくんほど若くないわけで、かつては青春映画を撮ったりもしてきましたが、その当時よりは明らかに時間が経っている。青春とは何か、何かに抗って生きるとはどんなことか、それがどんな意味を成すのか、というのはこの年になるとだんだんと分かってきますよね。

――年齢とともに題材に対してのアプローチも異なるわけですね。

行定監督:僕が受けた読後感をしっかりと映画の中にも持ち込もうと考えた時に、もっと(登場人物を)突き放した方が良いなと思ったんです。若い頃の青春映画では、やはり自分がその中に組み込まれていて、登場人物と一緒になって苦悩したり抵抗したりしてきました。当時は青春映画を撮影できるのは若い時期だけだと思い込んでいたんです。でも歳をとってみると、案外そうでもない。もっと引いた目線で人物を見つめることができるようになりました。

――作品として一歩引いた目線を持つ一方で、主演の中島さんの演技にはやはり青春映画らしさを感じました。

行定監督:素直ですよね。若さの特権って、素直じゃないところにあると思うんです。でも彼は大人びているというか、非常に器用で、監督していて楽しかったです。『GO』の時を振り返ると、やはり窪塚洋介という才能が鮮烈で、それにも似たような空気が放たれているのを感じました。


――原作はストーリーの時系列を巧みに入れ替えて、もともと映画化に適しているような小説という印象を受けました。映画化にあたっては、さらに構成を再構築して、後半は新しい場面も追加していますよね。

行定監督:今回は映画化を前提に小説を読みましたが、若い世代ならではというか、映像化を意識して文章が書かれていると感じました。映画特有の構造を小説化しているとも言える。映画の影響を多分に受けている作家さんだと思います。

それでも、やはり小説ならではの時系列だと思ったんですよね。もしかしたら彼自身の中で映像化のイメージがあったのかもしれません。ただ、僕が監督するからには映画ならではの大胆さが欲しい。一番の問題は何と言っても後半のキャストをスライドさせる場面です。死んだ友人と同化しながらその人物を理解していく。その描写を解決しないことには映画化は不可能だと思いました。

――それが開始62分からの“あの仕掛け”を生んだわけですね。

行定監督:前半と後半に分かれた二幕構成になっていますが、自分の中ではそれが必然でした。原作の中で起こったことを最も美しく見せる方法だったんです。「前半までが劇中劇の映画だったらどうかな?」「その場合、その後の人生も書き足さなきゃダメだよね」と言ったら、最初はみんな混乱して反対されたんですよ。文字で表現できても映像で表現するのは難しいと。でも、観客は“2つの人生が一瞬にしてスイッチした”と理解できるはずです。

――原作を読んでいない人の方が驚きは大きいかもしれませんね。

行定監督:でも後半については、人物たちが原作を踏襲した上での生き方をしなくちゃダメだ、というのは心がけました。時系列を入れ替えて“あるアイデア”を加えることで、原作からは逸脱した作品になったけど、小説の映画化というジャンルにおいては非常にうまくいった作品だと自負しています。

開始62分後に「カット」と言って“ある人物”が出てくる。かなり際どい手法ですよね。別に誰にも考え付かない方法ではない。でも加藤くんの原作があったから、これは誰にも真似できない、唯一無二の仕掛けになったんだと思います。だから、原作小説に興味のない人たちがこの映画を観て、「なんだよ、行定勲やらかしてんなぁ」と言われるのは嫌ですよね(笑)。それでも、この歳になるとそこに挑むのも悪くないと感じています。

――監督にとってのチャレンジだったわけですね。新たな発見も多かったのではないでしょうか。

行定監督:前半62分で原作のほとんどを描かなくちゃいけなかったので、そのスピード感は新しい発見でした。あの前半部分だけで1本の映画に仕上げている作品が世の中にたくさんあるということですよね。いかに余計な説明をいれているのか、逆に大変かもしれませんが(笑)。今後はどんどんとストーリーを進めていく映画を撮りたいと思いました。

――今後の作品にも注目いたします。最後に気になったことをひとつ。コンテンポラリーダンスの場面は、ダーレン・アロノフスキー監督の『ブラック・スワン』へのオマージュじゃないですか?

行定監督:そんなことないですよ。『ブラック・スワン』は観ていないです(笑)。

――映画ファンの間では、原作が発表された時期に『ブラック・スワン』との類似点が騒がれたので、オマージュなのかなと思ってしまいました……。

行定監督:ニブロールという世界的に有名なダンス集団がいて、その振付家の矢内原美邦さんに監修をお願いしているんです。衣装を黒くしたり、リフトではなく階段から落ちる演出に変えているので、描写が近くなったのかもしれませんね。

――そうだったんですね。本日はありがとうございました!

映画『ピンクとグレー』公式サイト:
http://pinktogray.com/

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記者:

PR会社出身のゆとり第一世代。 目標は「象を一撃で倒す文章の書き方」を習得することです。

TwitterID: stamina_taro

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