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原発ゼロにすると大気汚染の増加で何人ぐらい死ぬのか?

金融日記

今回は藤沢数希さんのブログ『金融日記』からご寄稿いただきました。
※記事のすべての画像が表示されない場合は、http://getnews.jp/archives/133081をごらんください。

原発ゼロにすると大気汚染の増加で何人ぐらい死ぬのか?

どういうわけか、最近、エネルギー政策の専門家としての意見を求められることが多くなってしまいました。そこで昔取った杵柄(きねづか)的にいろいろと研究をすることが多くなってしまったのですが、静かに文献を読み漁るのも、なかなか楽しいものです。ところで今日は大気汚染とエネルギーの問題を考えたいと思います。

世界では大気汚染というのは非常に深刻な問題で、様々な統計データから、僕は脱原発が進むと、日本にも相当な被害がでるだろう、と心配していました。しかし日本固有のデータを詳細に分析すると、国民の健康被害という点に関しては、僕が思っていたほどひどい状況にはならなさそうで、ほっとしました。せいぜい年間数千人が死ぬ程度でした。脱原発は、人命よりも、むしろ経済問題の方が深刻かもしれません。

大気汚染と脱原発の詳細な研究結果はまた別のところで発表する予定なので、今日は誰でも手に入る公的な国際機関のデータを使って、簡単にどれぐらいの日本人が脱原発により死んでしまうかということを示したいと思います。

<地域別の100万人当たりの大気汚染による死亡者数>  WHO(世界保健機構)

原発ゼロにすると大気汚染の増加で何人ぐらい死ぬのか?

出所:「Deaths attributable to urban air pollution,2004」WHO ※Adobe Acrobat Readerが必要です
http://www.who.int/heli/risks/urban/en/uapmap.1.pdf

まず、日本ではどれぐらいの人が大気汚染が原因で死んでしまうのでしょうか?
大気汚染というと、四日市ぜん息のように、ぜん息が有名ですが、肺がんといった呼吸器系や心筋梗塞等の循環器系疾患との強い関連性があります。日本ではこれらの病気は大きな死因となっていますが、その内、人為的な大気汚染が引き金になっている割合はどの程度か、ということを調べる必要があります。

各種の大気汚染濃度の違う地域を比較したり(晩生症状)、同じ地域で時々刻々と変化する大気汚染濃度と死亡率の関係(急性症状)を慎重に研究することにより、大気汚染による犠牲者の数が統計的に推計できるわけです。だから文字通り“大気汚染で死ぬ”人はいないわけで、何らかの病気の原因になるだけです。どっちにしろ、病気になったり、死んでしまうことには変わりはありませんが。

大気汚染は、ある程度強い放射線を浴びたときの晩生がん *1 と同様に深刻な長期の影響もあるのですが *2 、特徴的なのは大気汚染物質の濃度が上昇するとすぐにパラパラと人が死んでいくことです *3。これは子供や老人などの体力が弱っている人たちで、肺炎やぜん息や循環器系の病気などで生と死の間を漂っている人たちが社会には常に一定数いるわけですが、火力発電所や幹線道路の状況で濃度が上昇する大気汚染物質が、そういった人たちの背中をポンと押して、あちらの世界に旅立たせてしまうからです。この辺は熱中症もいっしょですね。ほとんどの人は大丈夫ですけど、たまたま体力が落ちていた人たちが犠牲になってしまうわけです。

WHOの調査によると、日本ではだいたい3万3千人〜5万2千人の人たちが毎年、大気汚染が原因で亡くなってしまいます。世界では100万人〜300万人ほどの人たちが大気汚染で毎年死んでしまいます。このうち自動車の排ガスが半分程度で、火力発電所のばい煙が3割程度です。アメリカでは石炭火力発電所からの大気汚染物質の影響で、毎年2万人程度が犠牲 *4 になっているといわれており、僕はかなり心配しておりました。

日本の火力発電所の環境技術は非常に優秀だという話もあります。下の図は、電気事業連合会が日本の火力発電所の環境性能の優秀さをアピールするために作った資料です。多少割り引かないといけないと思いますが、アメリカより単位発電量当たりでは10分の1程度のSOxやNOxしか出さないようです。しかし日本はアメリカよりも、圧倒的に人口密度が高いので、そのことも考慮する必要があるでしょう。

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