牛乳を飲み過ぎると骨折しやすくなるのか? 疫学的統計のトリック

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新春早々、刺激的なタイトルですが、一部のメディアでこういった話題が報道されていました。

事の発端は、著名なお医者さんが自著の中で「牛乳が健康に悪影響を及ぼす」と言及したことから始まっているようですね。
では、「牛乳が体に良いのか?」というと、客観的な証拠がないというのが現状だと思います。

牛乳有害説の根拠として、著者は、乳製品をよく窃取するアメリカや北欧などは、「骨そしょう症(骨の密度が薄くなって骨折する病気)」によって、股関節などの重要な関節を骨折することが多いことを述べています。また、乳製品を多量に摂取していた人は、腸の内側が荒れていたなどということを論拠として述べているようです。

たしかに、アメリカや北欧では、股関節の骨折を起こす方は多いです。とはいえ、女性は卵巣からのホルモン分泌が低下すると骨折しやすくなることがわかっています。また、北欧は日光に当たることによって補給されるビタミンDが体内に得られにくいことも容易に想像がつきます。したがって、牛乳や乳製品の過剰摂取によって骨折しやすくなるとは言えないと思います。

実のところ、体のトラブルは複数の原因が重なっていることがほとんどです。したがって、他の原因がないか、慎重に調べる必要があります。
こういった時に用いられるのが「疫学的統計」のデータです。
たとえば骨折を起こした方の「年齢」「性別」「居住地域」といったことをデータにするわけですね。それらのデータを見れば、牛乳の取り過ぎで骨折しやすくなるという説(仮説)が事実かどうかがはっきりします。

具体的には、「男性でも一定数の骨折患者がいる(卵巣から分泌されるホルモンの影響はない)」、「日光がよく当たる地域でも一定の骨折患者が見られる(日光に当たらないことによって起こるビタミンD不足が原因となった骨折ではないことが確認できる)」ことを排除すると、本当に牛乳や乳製品の取り過ぎで骨折しやすくなるのかどうかがはっきりすることになります。

このように、健康に良い、悪いといった情報は、データに基づいた検証を行わなければ、一般的な話としてイエスともノーとも言えないのが一般的です。

牛乳の場合、アレルギー症状を引き起こしたり、乳糖という成分によって下痢などの症状を引き越すケースもあります。
だからといって、牛乳や乳製品の取り過ぎでトラブルを起こすとはいえないわけですね。

特に食品については、健康に良い悪いということが言われがちですが、食事を取らないことのほうが、体に与えるダメージが大きいのも事実です。

特に、持病がある方は、健康法を実施する場合、注意が必要ですから、専門家とよく相談して実施するようにしたいですね。

※写真はイメージ 足成より http://www.ashinari.com/2012/10/23-372031.php

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(執筆者: 松沢直樹) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか

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