【2015→2016】「ロックはもうダメ」って本当?! 2015年の米国ロック・シーンを振り返る

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【2015→2016】「ロックはもうダメ」って本当?! 2015年の米国ロック・シーンを振り返る

 米ビルボード・チャート上で、ロック・アーティストによる活躍が目立たなくなっている、と言われて久しい。先頃発表された2015年のイヤー・エンド・チャートでは、ロック寄りのシンガー・ソングライターやポップ・バンドの活躍は見られるものの、アルバム総合で15位にフォール・アウト・ボーイ『American Beauty/American Psycho』、29位にイマジン・ドラゴンズの『Smoke+Mirrors』、31位にトウェンティ・ワン・パイロッツ『Blurryface』といったランクインが目を引くといったぐらいだ(この記事では、2014年以前のリリースは除外した)。

 ロック/オルタナティヴ・ミュージック・ファンにとっては、2015年もなかなか厳しい結果だったと言える。むしろ、デビュー作に引き続き奥ゆかしいオルタナ・サウンドで好セールスをマークしたイマジン・ドラゴンズや、アクロバティックかつエモーショナルなライヴで人気を博しつつ、かつてフォール・アウト・ボーイが所属した<フュエルド・バイ・ラーメン>の屋台骨を担うバンドにまで成長したトウェンティ・ワン・パイロッツの健闘は、称えられて然るべきだろう。

 ただ、ロック/オルタナティヴの2015年、ビルボード上でのアクションが本当に壊滅的な内容だったかと言えば、そうは思えない。例えば、アラバマ・シェイクスのセカンド作『Sound & Color』はチャート初登場時に1位を飾り、ソウルフルなシャウトからゴスペルのように美しい歌声までを放つブリタニー・ハワードのヴォーカルは、目下「Apple iPad PRO」のCM曲(アルバム・タイトル曲「Sound & Color」)にも起用されて広く印象を残しているはずだ。『Sound & Color』は、プリミティヴなガレージR&Bサウンドを大胆に先鋭的にブラッシュアップし、包容力をもって現代の人種間問題に向き合う傑作であった。

 また、UKの大物バンドであるミューズが、新作『Drones』で自身初のビルボード1位を記録したことも興味深い。一人の主人公を置いた物語形式のコンセプチュアルなアルバムで、人心を巧みに操り暴力や戦争に駆り立てる、そんな社会の支配恐怖を描く大作だ。ジャケットアートワークは古い小説のカバーイラストか映画のポスターのようであり、レトロなバンド・サウンドに回帰したミューズがジョージ・オーウェルばりの支配の物語を強烈なロックで描き切る、というコンセプトとも合致していて見事だった。

 アラバマ・シェイクスやミューズの成果に触れて思うのは、実は「いかにもロックらしい、優れたロック作品」には、今日においても真っ当な評価が下されているのではないか、ということである。ジャンル間のクロスオーヴァーはポップ・ミュージックの進歩に必要不可欠ではあるけれども、同時に没個性の風潮を呼び起こすこともある。次の時代のロックは、そんな没個性の中から抜きん出るのを今か今かと待ち望んでいるのではないか。そんな気がしてやまないのだ。

 フォーキーなサウンドと歌心を通じ、デビュー・アルバムをそれぞれ週間チャート20位圏内に送り込んだメルボルンのヴァンス・ジョイや、UKのジェームス・ベイらの活躍も興味深かった。2016年、ロック・リスナーはどんな作品と出会うことが出来るだろうか。(Text:小池宏和)

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