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三島由紀夫さんの小説『女神』など「欲望」をテーマにした本に影響された ——アノヒトの読書遍歴:吉澤嘉代子さん(前編)

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 16歳から作詞作曲を始め、ストリートライブを行うなどして活動を続け、昨年、23歳で念願のメジャーデビューを果たしたシンガーソングライターの吉澤嘉代子さん。デビュー2年目の今年10月にはサード・ミニアルバム『秘密公演』をリリースしました。

 吉澤さんは、音楽活動を続ける傍ら、空き時間を見つけてはさまざまな本を手に取って読んでいるんだそう。そんな彼女に日頃の読書生活について、さらに「欲望」をテーマに選書していただきつつ、お話を伺いました。

——本はいつ頃から読むようになったのでしょうか?
「小学生の時です。友達と一緒に『青空図書館』に本を借りに行って、アニメでも放送された『かいけつゾロリ』シリーズや料理をテーマにした絵本『わかったさん』シリーズなどをすごくワクワクしながら読んでいました。当時、私は学校に通わなくなってしまったんですが、その代わり図書館に入り浸るようになったんですね。お昼の時間帯だと子どもがいないので、すごく気が楽というか、そういった気持ちもあって大人が読む本も手にしていました。なので学校の(国語の)授業ではなく、本を読むことによって言葉を覚えていったのかなと思っています。

——当時はどんな本を読んでいましたか?
「物語が多かったです。私は子どもの頃に妄想と現実がごっちゃになっているような世界で生きていたなあっていう記憶があって。だから現実で起きていることよりも物語の中で起きていることの方が自分に近いなっていう感覚があります。読みたい本は、図書館の『雑誌コーナー』で月刊誌『ダ・ヴィンチ』を見てはよく探していました。覚えているのが、穂村弘さんのエッセイ『もしもし、運命の人ですか。』。素敵な作品で、とても魅了されました。私はいつも本を読んでいて……ご飯の時間まで読んでいたので親にすごく怒られました。

——多くの本を読むことによって、何かインパクトの強い本と出会いましたか?
「はい、三島由紀夫さんの小説『女神』です。主人公は、女性の美に対してものすごく厳しい周伍という男性で、彼は、とても魅力的な、それはもう完璧な女性と結婚するんですけど、その奥さんが顔にとても醜い火傷を負ってしまうんです。彼は奥さんのその美しさに惹かれて結婚したので絶望的な気持ちになってしまうのですが、実は彼には娘がいて、少しずつ成長していくに従ってとびきりの美人になっていくので、その娘に手塩をかけて美しく育て上げていくという、そんなお話です」

——どんなところがこの本の見所でしょうか?
「『女性』というのは、いつの時代でも見られるもの、商品価値のあるものなのかなって思うんですけど、この物語では、女性の『美しさ』がすごくわかりやすく男性に求められているっていうのが基盤となって物語が進んでいく。本来美しさを磨くっていうのは、男性の目を隠れて女性から発信されると思うんですけど、この物語では男性が舵をとって女性の美しさを磨いていく。そのあたりがとても見所かなと思います」

——この本を読むことでどんなことを感じましたか?
「そうですね、この本を読んで『美しさ』ってなんだろうってことをよく考えるんですが、時代によって、移り変わっていく価値観なのかなあって思うんですね。また、もし美しさが誰にでも手に入るものだったら、美しさはどこに向かうんだろうっていうのを考えさせられます。美しさにみんなが飽きた時に次に来る時代って、個性派時代なのかなって思って。それが終わると今度はモンスター化。最後に到達するのがのっぺらぼうなんじゃないかと思って。パーツすらない、ツルンっていうのが美しいお顔の到達地点なんじゃないかなと思いました。のっぺらぼうに行き着くということは、美しさっていうのは到達するところがないのかなっていうのも思います」

後編では、吉澤嘉代子さんが影響を受けた本について紹介します。お楽しみに。

<プロフィール>
吉澤嘉代子 よしざわかよこ/1990年生まれ。シンガーソングライター。
埼玉県川口市出身。父の影響で井上陽水を聴いて育ち、16歳から作詞作曲を始める。川口駅前などでストリートライブなどを行い、20歳の時にヤマハ主催のコンテスト「The 4th Music Revolution」に出場し、グランプリとオーディエンス賞をダブルで受賞した。2013年、23歳の時にインディーズ で1st mini Album『魔女図鑑』を発売し、翌年5月にはミニアルバム『変身少女』でメジャーデビュー。現在は、全国のライブ会場などを中心に音楽活動を続けている。

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