【映画クロスレビュー】雪山! 列車! 過去作オマージュも感じる大迫力アクション『007 スペクター』

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映画クロスレビュー『007 スペクター』

【ストーリー】
「スカイフォール」で焼け残った写真を受け取ったボンドは、そこに隠された謎を追って単身メキシコ、ローマと渡っていく。その過程で悪名高い犯罪者の美しい未亡人ルキア・スキアラと出会ったボンドは、悪の組織スペクターの存在を突き止めるが……。

監督:サム・メンデス
主題歌:サム・スミス

ジェームズ・ボンド:ダニエル・クレイグ
オーベルハウザー:クリストフ・ワルツ
マドレーヌ:レア・セドゥー
M:レイフ・ファインズ
ルチア:モニカ・ベルッチ
Q:ベン・ウィショー
マネーペニー:ナオミ・ハリス

『007 スペクター』公式サイト:
http://www.007.com/spectre/

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ダニエルボンドの真骨頂きたこれ!/サトウダイスケ

3,4年おきに楽しみにしている「007 シリーズ」最新作がついにやってきた! ジェームズ・ボンドがピアース・ブロスナンからダニエル・クレイグになって早 10年。前夜から朝に掛けて「007 カジノロワイヤル」「007 慰めの報酬」「007 スカイフォール」を復習しそのまま試写に突撃しましたよ。

まず、冒頭のロングショット(つまり、カットを割らずにカメラを長回しして魅せる技法)で悟りました。あ、こりゃぁとんでもない映画が始まるな、と!メキシコの「死者の日」というお祭りから始まるんですけれども、1000人越えのエキ ストラが生々しい空気感がすごい。もう初っ端から心の中でもう本当にありがと うございます…って感じでご馳走さまです。

全体的にアクションシーンもバリエーション豊か。お祭りから雪山、砂漠、列 車、市街地などなど。世界を股に掛けている感はたっぷりあります。特に雪山の シーンは「007 ゴールデンアイ」のタンクチェイスを彷彿させるような豪快さもあります。Qのボンドカーやガジェットもお笑いありで、昔ながらのファンも嬉しいのではないでしょうか。

ストーリーは「007 カジノロワイヤル」以降を総括する物語となっていますの で、シリーズファンは点と点が繋がってスッキリすると思います。でも、「007 スペクター」で初めてシリーズに触れる人も心配せずにご覧いただけるかと。というのも過去作のキャラクターや名前は出てきますが、それぞれの個別の物語は閉じている(完結)ので、理解を妨げる弊害にはならないなと感じました。

いやー、「007」観ると、旅に出たくなるんですよね。今回もなりました(笑)

【プロフィール】サトウダイスケ(佐藤大輔)

映像クリエイター・森の映画祭実行委員会代表
1988年山梨県甲府市生まれ。上智大学理工学部数学科出身。フリーランスの映像 クリエイター(http://daipologue.com/) 。自主映画の製作も行いつつ、イベントやプロジェクトの企画を行っており、捨てられずいる昔の恋人からのラブレターから再生紙を作る企画「おもいで再生紙」や、箸入れなどを利用して折り紙 を海外に広める「ORIGAMI JAPAN」などの活動も行なっている。現在は日本初の 野外映画フェス「夜空と交差する森の映画祭」(http://forest-movie- festival.jp)を主軸に活動。2015年の二回目の開催では2300人以上を動員し、テレビやラジオ、雑誌や新聞など様々なメディアで話題となる。五感で環境を感じ ながら複数のステージで映画を楽しむという新しい映画体験を通して映画の魅力を伝えていく。

Q萌えのみなさまのために作られたような“超Qバージョン”/♪akira

ダニエル・クレイグ版007中、最も痛快だった『スカイフォール』から3年、続投したサム・メンデス監督の『スペクター』は、前作で満足したファンの期待を裏切らないどころか、よくもここまで!と拍手喝采のパーフェクトな作品となりました!  

メキシコ・シティの“死者の日”を舞台に、冒頭からこんなにとばして大丈夫?と不安になるほどのど派手アクション全開! ダニエル・クレイグは彼の持ち味である野性味炸裂で、いい意味でのヤケクソ感にあふれた007像がさらにパワーアップ! 007シリーズ初体験でハートを鷲づかみにされるもよし、オールドファンの方なら、ふんだんに盛り込まれたかつての諸作品のオマージュ(雪山、列車、他多数)をご堪能下さい。特に今回は、元プロレスラーが演じる怪人キャラ(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のデイヴ・バウティスタ)までもが登場。お約束のスパイガジェットとともに、懐かしさで泣いてしまうかも。

そして! Q萌えのみなさま、今回はみなさまのために作られたような超Qバージョンです!! 数々のスペシャルなセーターに目が釘付け! やっぱり舞台は冬でないと! さすが監督、わかってますね! 尚、今回の作品は、Qも含めたチームプレイも見所になっていますし、『SHERLOCK/シャーロック』ファンなら、モリアーティことアンドリュー・スコットも気になるところ。ボンドガールに至っては、モニカ・ベルッチとレア・セドゥという主役級女優2人を起用する豪華さ! DVDやネットでおうち鑑賞が主流になっている昨今、全世界で大ヒット、イギリス映画史上興行収入第3位という快挙の『スペクター』、007映画史上最長の148分、一瞬も飽きさせない娯楽大作をぜひ劇場で!

【プロフィール】♪akira
WEBマガジン「柳下毅一郎の皆殺し映画通信」(http://www.targma.jp/yanashita/)内、“♪akiraのスットコ映画の夕べ”で映画レビューを、「翻訳ミステリー大賞シンジケート」HP(http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/)では、腐女子にオススメのミステリレビュー“読んで、腐って、萌えつきて”を連載中。AXNミステリー『SHERLOCK シャーロック』特集サイトのロケ地ガイド(http://mystery.co.jp/program/sherlock/map/)も執筆しています。

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↑“Qのセーター姿”はこれだ!

最高! だけど、一見さんお断り感は否めない/よしだたつき

常に冷静でジョークを飛ばし、酒を飲んで、世界を飛び回って、“キスキス・バンバン”で相手を追い詰めていく様には「俺たちが見たかったボンドだ!」と思わずガッツポーズ。ガジェットを駆使して小ネタをかますボンドカーも最高で、MやQとのチームプレーまで披露してくれます。個人的な萌えポイントは、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のドラックスでお馴染みのデイヴ・バウティスタが発する最期のセリフ。要チェックです。ということで、期待通りに素直に楽しめる作品でした。

が、やはり本作は『007』シリーズの24作目であり、ダニエル・クレイグ版ボンドの4作目なんですよね。少なくともクレイグが出演した過去3作品を観賞していないとツラいです。かつての敵やボンドガールの名前がガンガン出てきて、物語に深く関わってきます。恥ずかしながら、ややうろ覚えだった自分はちょっとついていくのが大変でした。満を持して登場した“スペクター”も、往年のファンには堪らない、シリーズにおける象徴的な組織ですしね。

余談ですが、活躍の少ないモニカ・ベルッチをボンドガールと喧伝するのはいかがなものか。「史上最年長(51歳)のボンドガール」と言いたかっただけなのでは? もう一人のボンドガールことレア・セドゥたん、バツグンにキュートで強くてスマートでオシャレでした。彼女がいなかったら、たぶんボンドは2度死んでいたと思います。

【プロフィール】よしだたつき
PR会社出身の肉好き草食系雑食ライター。『Variety Japan』(http://variety.co.jp/)のシニア・エディターとしても活動中。

迫力のオープニングを過ぎるとスピードダウン/ふかみん(深水英一郎)

オープニングは大迫力でおもわず引き込まれてしまいました。オープニングのアクションから主題歌までの流れは鳥肌モノです。しかし残念なことに中盤にさしかかる手前でスピードダウンしてしまいます。カーチェイスも前半のものはクールでかっこいいのですが、中盤以降のものは、ボンドが活躍したというより、偶然うまくいったという方が正しいような救出劇。登場人物も、どういう人物なのか、捉えるのが難しく、感情移入が難しいなと感じました。本シリーズに期待される「ゴージャスさ」は備えていますので楽しめる映画ではありますが、冒頭シーンのスピード感を全体に期待するのではなく、観る側がギアチェンジしながらゆったりした気持ちで楽しむのがよいかと思いました。

【プロフィール】ふかみん(深水英一郎)
ガジェット通信発行人。焚き火でマシュマロ焼くのが好き。

色んな意味で「こまけぇこたぁいいんだよ!!」/藤本エリ

何もかもが最高すぎてシビレすぎて、いまだに疲れた時はAdele『Skyfall』を爆音で聴いているワケで、その後となる『スペクター』には、ある意味期待し過ぎない様にしようと思って鑑賞しました。そしたらやっぱりカッコイイんですよ。メキシコの異国情緒あふれるお祭りの騒ぎの中に紛れるボンド、美女と部屋に入って抱擁したかと思ったらもう戦闘態勢で……。『スカイフォール』では、ナオミ・ハリス演じるマネーペニーとMがボンドガールだったので(異論は認める)、セクシーなシーンは少なめでしたが、『スペクター』は、これぞボンドな(と、いうほど過去シリーズに詳しくはありませんが……)、伊達男シーン満載。島耕作かよっ! それがいちいちサマになるクレイグ様はさすがです。

冒頭から大迫力のアクションシーンで、マイケル・ベイも真っ青の爆破の連続なのですが、個人的には「諜報員なのにそんなに目立っていいの?!」って思っちゃいましたね(野暮)。また、今回、クリストフ・ヴァルツが敵役に出ているのですが、ボンドに意地悪をする理由が「そんな事かよ!」って感じで、でもなんか、『アントマン』もそうでしたけど、男性の“承認欲求”ってここまで恐ろしいんだな、と思っておくことにしましょう。

そして、個人的に一番気になったのは、オープニングの“タコ”のアニメーション。人間にでっかいタコがからむって……、春画かよ! と、いろいろ突っ込みましたが、ボンドはえらいカッコイイし、Qもレア・セドゥはえらい可愛いし、楽しめる事は間違い無いです。あ、『カジノ・ロワイヤル』と『スカイフォール』は観てから劇場行った方が捗ります。

【プロフィール】藤本エリ
映画・アニメ・美容に興味津々な女ライター。猫と男性声優が好きです。

SPECTRE (C) 2015 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc., Danjaq, LLC and Columbia Pictures Industries, Inc. All rights reserved

藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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