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【東京モーターショー2015】「人と機械を対等にするクルマ」 自動車を再発明したトヨタ『KIKAI』レビュー

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10月28日から11月8日にかけて東京ビッグサイトで開催された『東京モーターショー2015』で、全世界に向けて多数の新車種が発表された。世界が待ち望んだスポーツカーや、明るい未来を彩る自動運転車など、実に様々な展示があった中、一際異彩を放つクルマの姿がトヨタブースにあった。トヨタのコンセプトモデル『KIKAI (キカイ)』である。今まで見たこともない前衛的なデザインが来場者の注目を集めていた。『KIKAI』の開発を進めた、トヨタ自動車 未来プロジェクト室の主任である陶山和夫氏から詳しいお話を聞くことができた。

“製品のブラックボックス化”への挑戦、そして原点回帰

『KIKAI』を見ると、あらゆるパーツがむき出しとなっており、文字通り「機械」だということが一目で分かる。言うまでもなく、自動車は機械であるが、現代ではあまりにも生活に浸透しており、最近ではファッションやステータスの一部として数えられるほどだ。技術の進歩とともに、機械の持つ仕組みや構造は複雑になり、ユーザーにとって利便性を提供する一方で、不安の一因ともなることが増えてきた。言わば、“製品のブラックボックス化”である。

『KIKAI』はそれを逆手に取り、トヨタの技術を少しでも多く実感できるよう、車内からもパーツが見えるようなデザインとなっている。しかも、ただパーツが見えるだけではなく、走行中にパーツ一つ一つが動いている様子まで見ることができる。

駆動系が露わになっている車体前方だけでなく、車体後方にも、これまたむき出しでエンジンが鎮座している。パーツがむき出しになっているため、見方によってはスポーツカーを彷彿とさせるが、決して『KIKAI』がスポーツを意識している、という訳ではない。

自動車の性能の一つに「スピード」という指標があるが、『KIKAI』はスピード至上主義的に作られたクルマではない。むしろ、「走る/曲がる/止まる」といった、車の原点とも言うべき機能を、いかにユーザーに身近な形で実現できるか、という点に重きが置かれている。

こうした工夫が、ユーザーの不安を取り除くだけでなく、機械としての『KIKAI』を楽しむことにもつながるのだという。暖かみ、美しさ、設計思想といった、機械が本来持っている魅力を、ダイレクトにユーザーに伝えてくれるのである。

技術者の引く線にこそ美は宿る

一目で分かる『KIKAI』の真新しさだが、実に様々な見方をすることができる。ある人には“レトロカー”のように見え、またある人には“バギー”のように見えるかもしれない。ちなみに筆者には、“カボチャの馬車”のように見えた。

『KIKAI』を“レトロカー”としてとらえると、“懐古主義的なクルマ”のように感じるかもしれない。しかし、動力には『アクア』と同じハイブリッドエンジンを搭載。また、フレーム構造は「メカーキャビンーメカ」という独特のもので、既存のどの車にも該当しない。さらに付け加えるなら、巨大なスライドドアは、ドア中段と下段のみの“二点支持”という、かなり先進的なものだ。

自動車を作る場合、メカは技術部門、外装はデザイン部門、というように分担されるのが現代の主流だ。ところが『KIKAI』の場合、この分担が技術部門に大きく寄せられている。例えば、ほとんど場合、自動車づくりの初期段階ではデザイン部門によりクレイモデルが作られる。デザイン重視で設計される場合、著名なアーティストとのコラボデザインもあるほどだ。

しかし『KIKAI』は、設計思想に基づいた“部品”の集合体なのである。部品と部品とが組み合わさり、自動車を形成している『KIKAI』は、まさしく“機械”そのものだ。機械製品としての自動車が持つ本来の魅力を分かりやすくユーザーに伝えるためのクルマとしてつくられているということに他ならない。

『KIKAI』独特のルックスは、こうした技術的アプローチの結晶とも言えるだろう。これについて陶山氏は、「トヨタで脈々と受け継がれてきた“技術者の引く線にこそ美は宿る”という概念が形になった自動車」と表現した。

ラッキーアイテムは“豚さん”?! さりげない遊び心

フロントガラスからは駆動系、足下の窓からはタイヤ、といった具合に、『KIKAI』を運転すると、様々な“運動”を見ることができる設計となっているのだが、実は遊び心が随所に存在する。

『KIKAI』を内外から眺めていると、所々にさりげなく“豚さん”がいることに気付く。キーホルダー、ナビ、タイヤの内側、といったように、よく見ないと気付かないレベルのさりげなさである。

この“豚さん”には、「幸せの象徴」「ラッキーアイテム」「ゆっくり走る世界」といった意味が込められており、『KIKAI』を運転する楽しみを拡張してくれる要素となっている。特に面白いのは、タイヤの内側に居る“豚さん”で、クルマを停車した際に、足下の窓からたまに見える、という仕組みだ。自動車といえば「走る楽しみ」に集約されがちだが、見事に「止まる楽しみ」を表現していると言える。

“豚さん”のほかにも、フロートタイプの燃料計、液晶ではなく物理矢印のナビ、天井まで視界を確保した窓、などなど、遊び心と可愛らしさを兼ね備えた要素は盛りだくさんだ。

人と機械の関係をより対等にするクルマ

陶山氏は、『KIKAI』を「人と機械の関係をより対等にするクルマ」と表現する。道具としての自動車が、どこまで身近に感じられるか、という点において、可愛らしさや性能もさることながら、技術的アプローチから挑戦しているのだ。

約100年前、『T型フォード』の誕生とともに、自動車はめまぐるしい進化を遂げてきた。レースで培われた技術は「安全で早いクルマ」の礎となり、優れた環境技術はついに“水素自動車”までも生み出した。

次々と生み出される新技術は、結果として自動車社会に貢献しているものの、一般人にはなかなか全容を理解しがたいものである。こうした“ブラックボックス化”を回避すべく、「人と機械の関係をより対等にするクルマ」として考え出された『KIKAI』は、ユーザーに対して自動車本来の在り方を伝えてくれている。この挑戦的な試みは、トヨタだからできる“自動車の再発明”と言えるのかもしれない。

KIKAI|トヨタ自動車
http://www.toyota-global.com/events/motor_show/2015-tokyo/kikai/

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記者:

車担当。 q@magarin.net

TwitterID: magarin_14

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