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!!! CHK CHK CHK『AS IF』インタビュー

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!!!といえば、最強のライヴ・バンド。パンクとファンクとディスコが混然一体となったダンス・グルーヴは、まさしく唯一無比。が、そんな「ライヴ」のエネルギーをキープしつつ、「スタジオ作品」だからこそ可能なプロダクションや音の質感にこだわり抜いたレコーディング・プロセスの探求。そうしたここ数作の流れを踏まえた上で、さらにハウス・ミュージックの要素やアンダーグラウンドなテクノの影響を前面に取り入れて完成したのが、今回のニュー・アルバム『アズ・イフ』だ。かくして、その仕上がりはロウでモダン。にしてエッセンシャルかつコンテンポラリー。「今回はほとんどやり過ぎと言っていいくらい多様だと思う」と彼らも自負してやまない。そんな!!!史上、最強のダンス・レコードを引っ提げて行われた来日公演。!!!はいま何度目かのピークを迎えていることが、そのニック・オファーの口ぶりからは伝わってくる。

 

―この前の企画で、サニー・デイ・イン・グラスゴーの曲をお気に入りに挙げていたのが意外で。マイブラにすごく影響を受けた、ともコメントにありましたけど。

ニック「あ(笑)。最初に出した7インチを聴いてもらえればわかるよ。“The Funky Branca”って曲があるんだけど、もろシューゲイザーって感じだし」

―じゃあ、今のような音楽スタイルになる前?

ニック「いやでも、今度アメリカのツアーで自分達で自分達の前座をやる計画があって、ステレオラブのカバー・バンドで『ステレオラド』っていうバンドをやるっていう話があったり」

―ほんと?(笑)

ニック「そう(笑)、それでステレオラブの曲だけをやるっていう(笑)」

―(笑)けど、!!!はうつむいてノイズを鳴らす(※シューゲイザー=靴を見つめる人)、ってガラじゃないですよね?

ニック「そう、うちの場合、シューゲイザーならぬ“ダンスゲイザー”ってところだろうね(笑)。まあでも、基本的に何でも好きだからさ。いつも理想のバンドを訊かれたときブラーって答えるんだけど、ブラーはアルバムごとにスタイルを変えてるじゃないか。オアシスとブラーだったら、断然ブラーになりたいね。オアシスみたいに毎回似たような内容のアルバムを作って、アルバムを出すごとにつまんなくなってくようなバンドにはなりたくないからさ」

―デーモンのソロも好き?

ニック「まあ、全部が好きってわけじゃないけど、いい曲もあると思うよ。デーモンってやっぱりブラーの核なわけで。しかもブラー以外にもゴリラズとか、いろんなスタイルに挑戦してるからね。自分もデーモンみたいな存在になってみたいもんだよ(笑)」

―ニックはそもそも、!!!を始める前はサクラメントでヤー・モスってハードコア・バンドをやってたんですよね?

ニック「正式には『ザ・ヤー・モス』だよ(笑)」

―(笑)その頃のニックってどんな感じだったんですか?

ニック「いや、ヤー・モス自体は!!!とはそこまで関係ないんだ。ヤー・モスは初期のブラック・フラッグとかジャームスとかネイション・オブ・ユリシーズから影響を受けてるんだけど、ネイション・オブ・ユリシーズがジョン・コルトレーンやモータウンなんかのブラック・ミュージックについていつも熱く語ってて。それで、彼らが好きだっていう作品は全部聴くようになったんだ。それがきっかけでソウルを聴くようになって、ソウルからファンクにいって……その間にもヤー・モスはやってたんだけど、聴いてる音楽はディスコだったりジェームス・ブラウンだったりして、あるとき、ふと『何で自分達が普段聴いてる音楽をやってないんだ?』ってことに気づいてさ。それで今の!!!に続く最初の音合わせのときに集まったメンバーが、5人中4人がヤー・モスのメンバーだったんだ」

―!!!を始めた頃のコンセプトは「ハードコア・バンドがソウルやファンクをやったら変なことになっちゃって……みたいな」って以前に話してましたね。その当時思い描いていたサウンドと現在の!!!のサウンドは、すでに別物という感覚ですか?

ニック「というか、結局は同じことなんだよ。よくDJをやってるときに『何でラプチャーとかかけないんですか?』って言われるんだけど、自分達はハウスだったりテクノだったりクラブ・ミュージックに興味があるわけでさ。今回のアルバムにしたって、最初に!!!を始めたときと同じで、ただ自分達の好きな音楽を作るっていう。パンクって音楽ジャンルとしては狭い気がするんだけど、自分達はパンクは何にでもなれると思ってるし、その精神がすべてにおいて貫かれてるんだよ。だから、今まで一度もこうだって決めたことはないし、自分達はパンクなんだから何だって好きなことをやってやろうっていう。何でもいいから試してみて、そこから何かしら新しいものを発見できないかっていうことをひたすら続けてるだけなんだよ」

―なるほど。

ニック「だから、願わくは自分達が今発見してるものが、19年前に初めてバンドを始めたときに自分達が発見したものと違ってるといいと思うけどね。毎回同じものを発見してたんじゃ、それは発見とは言わないからさ。唯一、自分達がファンに約束できることがあるとしたら(笑)、それは毎回新しいものを発見しようとしてるってことだけだよ」

―ところで、今回の『アズ・イフ』にはスプーンのジム・イーノらと共に、クリス・ウッドハウスも何曲か制作に参加していますよね。クリスといえば、現在の西海岸のパンク・シーンの要人とも言っていい人物ですが、彼との付き合いはもう長いんですか?

ニック「そうだね。クリスはもともとサクラメント出身なんだよ。だから、25年来とかの付き合いになるのかな? 今回もそうだけど、パンクっぽい音を作ろうってなったとき、自分達が知ってる中で一番なのがクリスだからね。人間的にも素晴らしいしさ。クリスが手がけたバンド(※タイ・セーガル、ジー・オー・シーズ他)も好きだし」

―今でもサクラメントのパンク・シーンとは繋がりがあるんですか?

ニック「まあ、多少は。マリオ(ギター)は今でもサクラメントに住んでるし。すごく小さな街だから、街全体のファミリーみたいなもんだよ(笑)」

―今回の『アズ・イフ』も含めてこのところアルバムでは、ライヴのテンションをそのまま持ち込むのではなく、スタジオでの作業だからこそ可能な音作りというものに取り組まれてきたわけですが、その手応えはいかがですか?

ニック「いや、今回のアルバムではわりとライヴっぽいのもあるよ。ラップトップでAbletonを使って、あえてクラブ・ミュージックっぽく作ってある曲もあるけど、一週間連続でクラブで新曲だけ演奏した上で、それをスタジオに持っていったりってこともしてるし。だから何曲かはものすごくライヴなんだけど、ただ、結局はスタジオでもライヴ・レコーディングでもフォーカスは同じというか、どうやって今目の前にあるエネルギーを作品に落とし込むかっていう」

―たとえば、以前と最近のアルバムをへた現在と、ライヴに対するアプローチが変わったような感覚はありますか? ライヴだからこそ実現可能なサウンド、というか。

ニック「毎回新しいことを発見しようとしているわけで、当然ライヴだって変化している。5年前と今とでは同じ曲をやるんでも全然違うっていうようでありたいし。それに前回のアルバム(『スリラー』)だったら、“スライド”とか、スタジオで作り込んだ曲だから最初はライヴでやるかどうか迷ってたんだけど、『これをライヴで再現してみたらどうなるんだろう?』って思っていろいろ試行錯誤した結果、ライヴでやるとめちゃくちゃ面白い曲になったり。今回の”All The Way“とかは、デモの段階ではライヴっぽくない曲だったんだけど、曲を練習していくうちにどんどんライヴっぽい音に近づいてきたり、そうやって常に進化し続けていくんだよ。ただ、自分達が普段聴いてる音楽は音に加工してたり、古いディスコのループを使ってる作品が多かったりするわけで、だから自分達の音をそのままクラブ・ミュージックの手法みたいにAbletonに落とし込んで使ってみたらどうなるんだろう?っていう。毎回新作を作るときは、必ず前回のアルバムを通して新たに習得した技を活かすようにしてるんだ」

―ちなみに、ヴォーカリストとしての自己評価はどうでしょう? 今回のアルバムには様々なゲスト・ヴォーカリストが参加していて、ある種ヴォーカル・アルバムと言える側面もあると思いますけど。

ニック「とりあえず、自分にできることとできないことについて理解してるつもりではいるよ。ギタリストの場合、自分の音をプロダクションによって変化させていくことができるじゃないか。それがヴォーカルだと、たとえばREM でありU2の曲をマイケル・スタイプなりボノなりと結びつけずに聴くって難しいわけじゃないか。誰が聴いてもその人ってわかる声っていう。だから、自分の声を変えてみたい願望があるというか……ここが長年同じバンドをやってると難しいところで、せっかく新しいサウンドを見つけても、ヴォーカルの声だけはそこまで大幅には変えられないからさ。自分としては歌うのは好きだけど、同時に違う声も試してみたいっていう思いもあるんだよね」

―ところで、今回のアルバムのジャケットはこれまでとかなり違ったテイストですよね。あの猿について他のインタヴューで、「自分が猿以上の存在でないという自覚を持つことが大事だ」「あの猿を受け入れることは、自分の中の道化の部分であり原始的な部分を受け入れることだ』って話していたのが興味深かったのですが。

ニック「人間の本能の部分に繋がるってことはクリエイションの基本だからね。シンプルに考えなくちゃいけないし、自分が本能の部分で一番求めてるものは何なのかってことに常に耳を澄まさせていなくちゃいけないんだ。何が自分の本能を突き動かすのかっていうね。自分達が音楽を作る理由は本能と直結していて、エモーションであったりセクシャルであったり、自分にも理解できない感情の一番深い部分と直結していて、その心の声に耳を傾けることが大事なんだ。だからこそ、自分の中にある原始的な部分に繋がるっていうね」

―なるほど。

ニック「道化って部分に関しては……自分がステージの上で派手なパフォーマンスをしてると、こいつは相当エゴイストで自分のことが好きな人間だろうなって思われるだろうけど、同時に道化でもあり笑い者であるってことを自覚していく必要があるんだよ。自分自身を笑い飛ばすっていう視点をね。だからこそ、19年間もこのバンドを続けてこれたんだよ。音楽に対してシリアスなんだけど、同時にシリアスでないし、楽しんでいる。これは遊びでもあるんだ」

 

―いま、19年間という話も出ましたが、!!!は来年で結成20周年を迎えます。近年はメンバーの離脱など様々な出来事に見舞われましたが、現在のバンドは状態としていかがですか?

ニック「いや、いつでも最高だったよ……やっぱり、そうだよな。常に最高を目指してきたし。そりゃまあ、正直な気持ちとしては、今回がベストだと思ってるけどね(笑)。バンドとしてすごく力強いしさ。ただ、19年もやってこれたのは、常にバンドとして最高の時期を過ごしてきたからなんだ。たしかにしんどい時期もあったけど、基本的には楽しかったし、その時期一緒にやってきたメンバー全員のベストが作品に集約されている。だから、どっちのほうがいいとかないんだよね。もちろん、今回の新作は心の底からいいと思ってるし、自信もあるし、一緒に演奏したメンバーのことも誇りに思っている。まあ、メンバーというか、ファミリーだよね。だから、どの作品の頃がベストとか決めたくないし、それはもっとずっと後になって勝手に決まってくれればいいよ(笑)」

 

撮影 中野修也/photo  Shuya Nakano

文 天井潤之介/text  Junnosuke Amai

編集 桑原亮子/edit  Ryoko Kuwahara

 

!!!(CHK CHK CHK)

『AS IF』

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