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もはや文化!?山手線新型車両の「中吊り広告」が一転存続になった理由

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山手線新型車両の中吊り広告が一転、存続へ

11月30日から、東京・山手線に13年振りに新型車両が登場します。JR東日本から発表された当初(3月末)、この新型車両では紙媒体である中吊り広告が廃止され、車内広告は全て電子公告=デジタルサイネージ(一部を除いて)になるとの予定が発表されていました。しかし、先日の発表では一転、中吊り広告を残す(1車両6箇所)ことになったといいます。「文字情報が多くじっくり読んで欲しい広告もある」という広告主の意見を取り入れたとのことでした。

これは主に、週刊誌などの雑誌広告が当てはまります。中吊り広告であれば、乗客側も内容をその場ですぐに繰り返し読むことができるので確認しやすく、また、小さい字で書いてある情報も目を凝らせば読み取れます。ところが、デジタルサイネージ広告では、そのほとんどが動画主体になると予想され、もう一度読みたいと思っても、再度表示されるまで待つ必要があります。また、デジタル用の文字が読みにくいことも考えられます(特に高齢者などデジタル画面に慣れていない人)。

デジタル化が進んでも価値が衰えない「中吊り広告」

こうした理由から、中吊り広告の存続が決まったと推測されます。さらに付け加えるならば、個人的にはもう一つ大切な理由があると考えています。それは、長年にわたり続いてきた日本の電車内の「中吊り広告」における、一つの文化的側面です。

そもそも、この「中吊り」という言葉は誰が考案したのか不明ですが、非常に的を射た、また覚えやすいネーミングです。言葉としての普及率は100%に近いと予測され、もちろん、広告の中身も「中吊り」でなければできない表現やアイデア、デザイン、キャッチフレーズなどが数多く歴史を飾ってきました。私もそうですが、皆さんの中にも「中吊り」を見たことで商品を購入した経験がある人は多いはずです。つまり、紙媒体である「中吊り」は、デジタルサイネージなどの電子化が進む広告業界においても、まだまだその価値が衰えない重要な媒体なのです。

「中吊り文化」は残すべき存在

このように、価値の高い「中吊り広告」は、いくらデジタル全盛とはいえ全面撤廃するには惜しい媒体です。そして、長年培ってきた「中吊り文化」は残すべき存在であり、今回のJR東日本の発表内容も評価に値します。しかし、問題もあります。それは、昔に比べて中吊りを見る頻度が低下していることです。その要因は、もちろんスマホやタブレット端末の急速な普及にあります。電車の中では若者だけでなく、年配の人もほとんどがスマホを触っています。当然、周りにもあまり目がいきません。

ただ、人間というのは飽きっぽい生き物であり、スマホを長く凝視していれば目が疲れることもあります。そこで、目を休めようと周りを見渡すとした場合、当初予定された山手線新型車両のように電車内の広告全てがデジタル画面だったら―――。正直、逃げ場がありません。となると、何か一種の箸休め的にもホッとできる「中吊り」に代表されるような紙媒体は、どれだけ世の中がIT・デジタルだらけになろうと、やはり必要なものではないでしょうか。

(石川 一彦/広告プロデューサー)

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