「家族葬」「直葬」の急増要因と思わぬデメリットとは?

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「家族葬」「直葬」の急増要因と思わぬデメリットとは?

新しい葬儀の形として「家族葬」「直葬」が定着

ここ数年、新しい葬儀の形として「家族葬」という言葉が生まれ、言葉自体は世間一般でも定着した気がします。また、全ての葬送を火葬場で完結する「直葬」という形式で葬儀を行う人も以前より増えていると聞きます。

しかし、これら新しい葬儀の内実まで、一般消費者が理解しているとは思えないのが現状です。今回はなぜこれらの葬儀が増えつつあるのか、その理由と実際の葬儀の内容、葬儀形態のメリット、デメリットについて紹介します。

新たな葬儀形態が受け入れられている理由

新しい葬儀形態が生まれ、世に受け入れられ始めているのには、二つの理由があります。まず、一つが社会的な変化、もう一つが経済的な問題です。社会的な変化として挙げられるのは、核家族化、地域共同体(コミュニティー)との関係の希薄化です。核家族化により親子3~4人の世帯が圧倒的に増え、高齢者の夫婦世帯、独居世帯が増えたことにより、「祖父母を亡くす」ということが身近に感じられなくなっています。

また、特に都市部ではいわゆるご近所付き合いが減っており、隣にどんな人が住んでいるのか分からない、という状況も珍しくありません。以前は葬儀ともなれば「隣組」といって、近所の人が手伝ってくれることが多かったのですが、そのような習慣もなくなってきています。

手間や時間、お金をかけない葬儀が必要とされている

一方、長引いた不況により、経済的に余裕が無いという家庭において、「死者を悼む気持ちはあるが、葬儀という日常に直結していない儀礼にお金をかけられない(かけたくない)」という人が増えていきます。決して近親者の死を軽視しているわけではなく、葬儀のような儀礼よりも日常生活のためにお金を取っておきたい、という事情もあるわけです。宗教的な信仰心が薄くなっていることも、「お金をかけたくない」という思いに拍車をかけているかもしれません。

そうした流れの中で、できる限り手間や時間を掛けず、お金もかからず、人間関係の煩わしさがない葬儀形態というものが必要とされる傾向になってきたのではないかと思われます。

では、実際にそれぞれの葬儀の方法を説明します。まず「家族葬」とは、文字通り参列者を家族に限って行う葬儀のことです。以前から「密葬」という形で家族のみで葬儀を挙げることもありましたが、密葬の場合は、その後「本葬」という別の場を設け、家族以外の参列者に案内を出すのに対し、家族葬では家族のみが参列する葬儀のみで終了となります。

また、「直葬」とは故人が亡くなった病院などから火葬場へ直行し、通夜や葬儀を行わず、荼毘に付す(遺体を火葬すること)方法です。炉の前で僧侶などが読経や儀礼を行うこともありますが、必ず行うものとも限りません。いずれの方法も、「シンプル」「時間がかからず」「出費も少なく」という点で共通しています。

方法によっては一般的な葬儀と負担費用が変わらない場合も

では、これら新しい葬儀の形態について、どのようなメリット、デメリットがあるでしょうか。メリットとしては、既に記している通り、儀礼特有の「煩わしさ」から解放され、時間的、精神的束縛を軽減できるということ、また、家族だけで行うことにより、故人と家族との時間を大切にできるということ、簡略化により費用負担の軽減が挙げられます。

一方、デメリットは家族以外に故人と関わりのあった人が「葬儀に参列したい」という気持ちを昇華する場が与えられず、葬儀後に弔問客が訪れることになり、かえって気疲れしてしまったりすることです。さらに、葬儀の仕方によっては一般的な葬儀と費用負担が変わらない場合があり、香典をいただくことができないので、負担感が増してしまう場合があることなどです。

葬儀は故人が最後に社会と関わる場でもあります。費用の面、家族の気持ちのみを優先するのではなく、どのような葬儀を行えば故人が喜んでくれるのか、故人と関わった人々の気持ちを昇華することができるのか、これらの面についても考える必要があるでしょう。

(二上 昌弘/お墓ディレクター)

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