30代後半、『蒼樹うめ展』敗残者のつぶやき

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仮想空間SNSで独り言をつぶやくたびに孤独死が近づく気のする秋の日、皆さんいかがおすごしでしょうか。

先日ラブライブカードほしさにTSUTAYAカードを新規登録しました。その恩恵で毎月一本好きな映画をレンタルできるようになりました。
先月は『アナと雪の女王』、今月は『まどか☆マギカ』、来月は『思い出のマーニー』を借りるプランを立てておりました。
そう。今月たまたま「まどマギ」の月にあたったんです。見ちゃったんですよ、「叛逆」。その数日後に『蒼樹うめ展』があると知り、公式グッズとして「まどか&ほむら」の「ふんわりパスケース」が販売されると知り、私は涙しました。行くしかない。そう決意したとき、公式との心的契約は結ばれ希望と引き換えにソウルジェムを手に入れたのです。

そんなわけで三十代後半のオタクが早起きして『蒼樹うめ展』に行って参りました。今回はそのレポートです。場所は上野の森美術館、会期は10月3日(土)から12日(月・祝)まで絶賛開催中でございます。

入場300分待ちというニュースを目にした方も多いことでしょう。私も事前にその情報を見て若干すでにソウルジェムを濁らせておりました。しかも普段の仕事の始業は遅い時間です。そんな腰痛持ちが7時に起きてゴミを捨てにいきその勢いで頑張って山手線に乗り上野まで向かっただけでも一仕事なのでした。

いやあ、それはもう上野方面の朝のラッシュなんて20年ぶりなんです。当時は大江戸線なかったから、学生のときは巣鴨経由で地下鉄に乗り換えて通学していました。それ以来でした。

さすがに始発で行こうかとも思いましたが、私の目当てはひとつきり。そう。「ふんわりパスケース」さえ手に入ればいいのです。今考えたらこの考えが甘かった。何が「さえ」だ。10月6日早朝の私、お前の頭がふんわりだ。
さて上野駅について眠気は吹き飛びました。なんという冴え冴えとした秋の空でしょう。駅の到着は丁度9時頃でした。そして目的の美術館へ向かう道すがら、良さしかない看板がお出迎えしてくれました。

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しかしやはり既に列はできておりました。

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美術館に向かう庭園内をぐるっと半周ほどの列です。おとなしく最後尾に並びます。秋の日に押し黙って並ぶ人々の静けさの底辺にあるものが寡黙な哲学的思慮に溢れているかというと、けしてそうではありません。ただの萌えです。
開場は10時ですから待ち時間はさほど長く感じませんでしたが、この間にも私の心には色々の動揺がありました。それはもちろん男子の方が多いのは覚悟していましたが、それにしてもあまりにも女子がいない。
おかしいではないですか? もっとたくさんの私のようなレズが並んでいてもいいのでは? 突然にさみしくなったり、誘う相手がいないことに気づいたり、そもそもが友達がいたらこんなところに一人で並んではいないかもしれないなと我に返るなどしました。

一定時間経過した頃、前方からスタッフの方により「三列に並んでくださーい」と声がかかりました。どこかで聞いたような呼び声です。ここは風光明媚な場所であるというだけの、もう、有明なのでは? 
そんな錯覚を起こすような呼び声でした。
もちろん我々は指示に従います。

さて、庭園の真ん中には奥へ連なる道があり、その道は一般の来園者のために列を空けて並んでおりました。列が私の目の前で途切れました。目の前を一般の客たちが通りすぎています。大概の大人たちはこのような異様な行列もやりすごしますが、稀に「これは何ですか?」と聞いていく人もあります。すでにじわりと忸怩たる思いがソウルジェムを濁らせる瞬間です。これだけ大きな看板があるのに、敢えて問うってどういうことだよ、と。

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更に間を置かず目の前を小学生の団体がいらっしゃったのです。どの子たちも真新しいリュックに帽子を被り、いかにも秋の遠足です。眩しすぎる。穢れがなさすぎて直視できないご一行です。私は、いや、私だけではないかもしれません。われわれは息を潜めました。しかし、子供とは恐ろしいものです。そのうちのひとりの少年がキラキラしながら「何でこんなに並んでるのお?」と、こちらを見ながら言いました。誰もが顔を背けずにいられない無邪気さでした。
そうだよね…
平日だよ…
早朝から働きもせずにたくさんの大人がこんなに並んでるのは、わけがわからないよね。こんなの絶対おかしいよね。不思議だよね。就学児童(低学年)の無邪気な目線にいたぶられるような心地でした。
しかしやがて開場の時間になり、列は詰められ、いざ会場の手前に迫っていきます。期待に心が満ちていったとき、スタッフの方がこのようなアナウンスを行いました。すでに一部グッズは売り切れている、というようなことを。私はそのなかに「ふんわりパスケース」が含まれていないことを確かに聞き取りました。しかし、同時にいやな予感も覚えたのです。ソウルジェムは半分を超す割合で、このとき、もう濁っていたのでしょう。

しかしようやく入場です! それは静かな幕開けでした。実際の入場は開催初日より格段にスムーズになっておりました。美術館の到着は実質9時15分ほどでしたが、10時に開場してから20分ほど、実質約一時間程度で会場内に入ることができました。

多くは語りません。会場を出る頃、私は「女の子かわいい」としか言えない生き物に成り果てていたのです。とにかく展示内容は素晴らしい。『ひだまりスケッチ』も『まどか☆マギカ』も、そして蒼樹うめ先生の魅力も満載のあたたかな素晴らしい展示でした。ところどころで見受けられるうめ先生直筆の落書きや、先生の幼少期からの作品から最新の女の子イラストまで、心の中でうめ先生のセンスと存在そのものを崇め倒してまいりました。悪魔ほむらちゃんのラフ画は必見です。お口がかわいい。

さてさて、堪能した後にはいざグッズの販売列へ。やはりここまできたら公式のグッズを手に入れるべきです。展示列に並ぼうとした私の耳に無情な声が届きはじめました。最初は何が起きたのかわかりませんでした。
どうやらスタッフはまたしても完売したグッズを伝えようとしているのです。

ん?

何?

聞こえない…

まどほむ「ふんわりパスケース」が…

完売…?

その瞬間の希望から絶望に転化するエネルギーはまさに私を魔女にいたらしめるに充分な熱量だったのです。

これが…魔女……

私の感情が追いかけてくる…

輝きと後悔だけしか、もう…思い出せない。

ああ、これが私の絶望…

うっ…

ううっ…

うううんぬうううー!

ふんわりパスケースうんぬうあああ!!!

おそらく私が幼児であればそこが上野の森美術館だろうとスタッフがいようとその場で転がり泣き喚き駄々をこねていたことでしょう。思考停止に陥りました。

公式が神! そして悪魔…

しかしながら私は思春期の少女ではなく40手前の百合おばさん。しばし立ち尽くしていましたが気を取り直します。目当てのものがないからといっても、まだグッズはあるのです。忍耐強く私は堪えました。
30分ほどして私は無事に(上野の)公式のグッズを手に入れました。

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そして(上野の)公式ランチにありつき腹の虫をおさめたのでした。

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ん? なんかおかしいだろって?

じゃあ君らが並べよ!!(逆ギレ)

いいですか、私がどんだけ純情最高美少女ほむらちゃんと天使ふんわり乙女まどかちゃんのパスケースがほしかったと思っているんだ!! ほしかったんだぞ!! すっごくほしかったんだぞ!! 地方でこれないという人に比べたら甘いのはわかる!! 展示見れたんだもん! ほむらちゃんすっごいかわいかったもん!! けれどたかが十数分の差で買えないって、もうさあ!! 逆につらい!! もうさあ…号泣するしかないのですよ!!

…失礼しました。しかし、このように私が諦めが早いのは一重に腰痛や寝不足のためでもあるのです。私だってかつては記念クリアファイルほしさに『ワンピース鎌倉ジャック』を汗水たらしてあの銭洗い弁天に連なる峠をのぼりおりして制覇したこともあったのですぞガチャピン。

だからこそ数十分の列を外れるほどに気も短くなった己を確かに実感したのです。だからこそ、まだ訪れていない方は並ぶがよいのです。そのうちなんかつらくなるときがきても後悔しないよう遠くても金がなくても若いうちにはがんばるがよいのです。疲れたから列抜けて上野駅まわりでうまい飯食って帰る、こんな大人になる前にだ!

ちなみに定食屋『ぶんか亭』は大変良心的な価格でランチを提供してくれる素敵なお店でした。それまで若い男子に囲まれていて若干緊張を強いられていたので、上品な老婦人だらけの席に囲まれいろんな意味で天国に紛れ込んだのかと錯覚しました。上野はいいとこです。ちなみにパンダ缶バッヂとミュシャ缶バッジは公園口すぐの案内所裏の売店にあります。一回200円。

そして、最後に。私は敗者ですが最後にお伝えします。けしてネットオークションでグッズを入手しようとしてはなりません。大切なのはそんなんじゃないんだ。泣いても悔しくても欲しいものがあるというその事実が! 
どれだけ頑張れたかという熱意が!
大事なんです。けして労せずネットで好きなものを手に入れようとするべきではない。きっとそうして手に入れたものは同じ速度で離れていくよ。
『蒼樹うめ展』の終了は12日です。向かわれる方におかれましては健闘を祈ります。けして負けても泣いてはならないのです。私は内心泣きながら定食かっ食らいましたけどね。うまかったです。

蒼樹うめ展 http://www.umeten.jp/ 【リンク

ぶんか亭 http://www.nre.co.jp/shop/tabid/223/stoid/459/brnid/24/Default.aspx 【リンク

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(執筆者: 小雨) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか

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