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「0歳児投票権」「ふるさと納税議員」多様な選挙制度で地域の課題に対応を(地方議会ニュース解説委員 山本洋一)

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日本で「18歳選挙権」が認められた一方、世界の選挙制度の議論とは?

来夏の参院選から、投票年齢が18歳に引き下げられる。「選挙は20歳(はたち)から」が常識だった日本人にとって、70年ぶりの大改革である。多様な選挙のあり方について考える機会とすべきであり、地方議会こそ、その先頭に立ってほしいと思う。

日本の選挙権についておさらいすると、国政選挙は「満20歳以上の日本国民」。意外と知られていないが「20回目の誕生日の前日の午前0時」からが満20歳。例えば7月1日が投票日だとすると、7月2日に20歳の誕生日を迎える19歳も投票できるのである。

都道府県や市町村の首長や議員選の選挙権は「満20歳以上の日本国民で、3か月以上その自治体に住所のある者」。そして国政選挙、地方選ともに「禁固刑以上の刑を受けている者」や「選挙に関する犯罪で選挙権が停止された者」などは一時的に選挙権を失う。

選挙権が「満20歳以上」に与えられたのは1946年のこと。1890年(明治23年)に初めての衆院選が行われた時は「直接国税15円以上納める25歳以上の男子」で、人口のわずか1%強に過ぎず、1925年の「初の普通選挙」でも「25歳以上の男子」に限られていた。本当の普通選挙が実現したのはそれから20年後、戦争が終わってからのことだ。

戦後70年となった今年6月に国会で改正公職選挙法が成立。来年6月から国、地方ともに選挙権が20歳から18歳に引き下げられることとなった。来夏は3年に1度の参院選が行われる予定であり、18歳の若者はさっそく「初めての一票」と向き合うこととなる。

今回の投票年齢引き下げは世界の趨勢に合わせる取り組みだが、選挙権を巡っては興味深い議論がたくさんある。その一つが「0歳児投票権」だ。

米国の人口学者のポール・ドメイン氏が提唱しており、「ドメイン投票法」とも呼ばれる制度で、投票年齢を0歳まで引き下げ、15歳以下の子どもについては親が代理で投票するというもの。子どもが1人なら両親が1.5票ずつ、2人なら2票ずつ投票権を持つ。

少子高齢社会では高齢者が相対的に多くの票を持つため、政治家が当選を目的に高齢者を優遇する「シルバー民主主義」が蔓延する。しかし、幼い子どもを持つ親世代により多くの票を割り振れば、政治家も子育て支援に力を注ぐようになるだろう。日本で深刻化している世代間格差の解消にも有効だとみられている。

突拍子もないアイデアに聞こえるだろうが、欧州では真剣に議論されている。日本経済新聞によると「ドイツでは投票権を18歳から出生時に引き下げる動議が03年と08年の2回にわたって連邦議会に提出され、ハンガリーでも導入に向け国民アンケート調査が実施された」。ともに否決されたが、今後もこうした議論は広がるとみられる。

「法人に選挙権」というアイデアも古くから存在する。会社などの法人は擬制的に人格化され、納税の義務も負っているのだから、投票権を与えてもいいのではないかという理論だ。

高額納税者により多くの票を与えるべきだという意見や、逆に生活保護受給者の選挙権を停止すべきだという声もある。「金持ち優遇策」として日本の文化にはなじまないかもしれないが、欧米や中東などでそうした制度を採り入れる国があってもおかしくはない。

日本で最近提唱された「ふるさと納税議員」とは?

日本では最近、「ふるさと納税議員」というアイデアが提唱されている。ふるさと納税を使って特定の自治体に一定以上、寄付した人に、その自治体における選挙権と被選挙権を付与するというもので、民間会社が国家戦略特区の規制緩和項目に提案している。

選挙権を与えて政治に関与できるようにすればふるさと納税に参加する国民は増えるだろうし、住民ではない人に被選挙権を与えれば地方議員の人材難やアイデア不足も解消することができる。納税者にとっても、自治体にとってもうれしい制度だというわけだ。

重要なのは、選挙制度が「一国一制度」である必要はないということ。ふるさと納税議員については、地域限定で公職選挙法を緩めればすぐにでも実現可能。「0歳児投票権」だって、「法人選挙権」だって、国が規制を緩め、地方が制度設計すればそれほど難しいことではない。世界には地方レベルで多様な選挙制度を認める国がたくさんある。

地域によって抱える課題は異なる。それぞれの地域が、地域の自治場に合わせた多様な選挙制度を考え、それらの課題を解決すればいい。賛否否両論あるが、外国人参政権だって議論すればいい。選挙のない自治体があってもいいではないか。

選挙制度については行政側、つまり首長や自治体職員がとやかく言うことではない。地方議会こそが多様なアイデアを生み出すべきである。地方創生が叫ばれる今こそ、その時だ。

(地方議会ニュース解説委員 山本洋一)

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