あなたも知らないうちに負担している?「私的録画補償金」とは
メディアジャーナリストで、MIAU(インターネットユーザー協会)代表理事の津田大介氏が、インターネットにまつわる問題を討論する番組「ネットの羅針盤」。 2011年1月22日の第8回は、同じくMIAU代表理事の小寺信良氏、行政書士の大塚大氏、家電ジャーナリストの西田宗千佳氏を迎え、「私的録画補償金」について語り合った。
番組の前半では、主に小寺氏から「私的録画補償金制度」の詳しい解説がなされた。この制度は著作権法で定められており、ユーザーがデジタル機器を使ってテレビ番組などを録画する場合、私的に利用するのみであっても権利者に補償金を支払わねばならないというもの。実際には、メーカーの協力のもと、録画機器や録画媒体の価格に上乗せされる形で補償金額をユーザーが負担している。
具体的な金額としては、デジタル録画機器1台当たり平均496.9円、デジタル記録媒体1台当たり平均1.1円を支払っている。(平成22年度実績、出典:社団法人私的録画補償金管理協会)補償金は、私的録画補償金管理協会(SARVH)を通じてテレビ局など個々の権利者へ分配される。
■補償金を払わなかった「東芝」が勝訴
しかし、メーカーの「東芝」は、昨年2010年2月以降に発売したデジタル専用の録画機器について、DRM(デジタルデータの複製を制限する技術の総称)を搭載して販売している以上、権利者は保護されていると主張。これに対して文化庁は、この機器も制度の対象になるとの見解を示したが、東芝は補償金を支払わなかった。これを受けて、同年11月にSARVHは東芝を提訴していた。
2010年12月27日の地裁判決では、デジタル専用の録画機器も制度の対象になると認定したが、メーカーが補償金の支払いなどについて「協力しなければならないとしている著作権法の規定は、法律上の具体的な義務とはいえない」とし、東芝が勝訴した。
■「DRMを廃止して、補償金制度を残すほうがよい」がアンケートで8割
津田氏が提示するには、今後消費者として考えられる選択肢は次の3つだ。1つ目は、現状のままDRMによるコピー制限がかけられていながら補償金も支払い続けるということ。2つ目は、東芝が主張したように、DRMがかけられているならば補償金制度は無くすということ。3つ目は、補償金を支払った上で、DRMを廃止もしくは緩和していくということ。
この番組はニコニコ動画で生放送をされており、視聴者へのアンケートの結果、3つ目の選択肢に約8割が集中。津田氏は、「これが民意だと思うので、政策などにも反映していくことが重要。補償金額を増やすという議論もしていい」と述べた。
また西田氏は、「私的録画補償金も制度疲弊しているし、DRMも誰も喜んでいない。現状がおかしいのではないか、ということをみなさんが知るにはちょうどいい機会だったと思う」と今回の判決をプラスに捉えた。
【関連サイト】
「徹底解説!私的録画補償金」資料 番組内で使われたパワーポイントの資料
『徹底解説!私的録画補償金』 MIAU Presents ネットの羅針盤
http://live.nicovideo.jp/watch/lv37953057
(番組はタイムシフト機能で2011年1月29日まで視聴できる)
(丸山紀一朗)
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ウェブサイト: http://news.nicovideo.jp/
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