【インタビュー】『文学フリマ百都市構想』とは!? 中の人に直接聞いてみた

access_time create folder生活・趣味
bunfree_20150502_01

2002年より毎年定期的に開かれている創作文芸同人誌即売会『文学フリマ』。2015年5月4日には、節目となる第二十回の『文フリ』が東京流通センター(TRC)にて開催されます。
そんな『文フリ』が、2014年12月に発表した『文学フリマ百都市構想』。イベントを開催したいという有志を支援し、様々な地域で『文学フリマ』を開催をすることを目的にしており、希望者は申込受付・出店料決済システムやWebカタログ、公式Webサイトの共同利用や、『文フリ』事務局のノウハウ・マニュアルが提供されるとしています。

かなりの大風呂敷を広げた感もあるこの『百都市構想』。2015年4月19日に初めて金沢で開かれ、実現し、2015年10月25日には福岡での開催も決定しています。
ここでは、『文学フリマ』事務局代表の望月倫彦氏と、『文学フリマ金沢』事務局代表を務めた山崎良祐氏にインタビューを実施。『文フリ』が地域での開催を広げていく意味はどこにあるのか、『百都市構想』というネーミングについてもお話を聞くことができました。

条件が整っていた『文フリ金沢』

ーー今回、大阪に続いての地域開催として『文学フリマ金沢』が行われたわけですが、感触はいかがでしょう?

望月倫彦氏(以下、望月):僕の中では、出店申込が100以上集まったところで、8割は成功だというところがあったのです。

山崎良祐氏(以下、山崎):一番気になっていたのは一般来場者だったのですが、フタを開けてみれば総来場者数400人集まってくれました。もともと金沢に文学に興味のある層がいらっしゃったのかもしれません。開催が決まって、地域の新聞が取り上げてくれたのも大きかったです。

ーー大阪の次の開催が、金沢になった経緯も教えて下さい。

山崎:自分がもともと金沢出身で、東京・大阪の『文学フリマ』に出店して「意義深いイベントだな」と感じて、サイト制作やシステムのプログラムのお手伝いをする事務局のスタッフとして参加することになってしばらくしたころふと思いついたんです。

望月:彼が出身だということもあるのですが、2013年に『ニコニコ超会議2』の併催イベントとして『超文学フリマ』をやることになった時に、『博麗神社例大祭』代表の北条孝宏さんと親しく話ができたんです。それで東方projectのイベントは地方開催も強いんですよね。先方とのスタッフミーティングで情報交換をするうち、たまたま『例大祭』のコアスタッフのひとりが、「山崎さんがいるならば金沢でやればいいじゃない」という話をしてくれたんです。

ーー今回の場合、北陸新幹線が開業して間もないタイミングというのも絶妙でした。

望月:京都に劣らない古都だし、新幹線も通るということで、「条件が整っているな」ということになりましたね。あとは、「東名阪ならできて当たり前」という見方をされるので、東京・名古屋・大阪以外の都市がよかったという面があります。

ーー『超文学フリマ』と同時期に『文学フリマ大阪』という7年ぶりの東京以外での開催を敢行して、大きな反響があったのも、ノウハウ面などでも得るものが多かったのでは?

望月:あの時は、現場にいた多くの人もびっくりしたと思うんですよね。300を超える出店者と一般来場者がたくさん来てくれました(総来場者数約1600人)。これには、東京だけでやってきたことへの不満が噴出したような感覚すら受けました。「やっぱり需要はあるんだ」と。
ただ、事務局が落下傘的にやるのは無理なので、地元の人たちが「やります」と軸になってもらわないと現実的ではないんです。

『文学フリマ百都市構想』とは?

ーーそこで、『文学フリマ百都市構想』についてもお話をお聞きしたいのですが。これは、地域で開催をしたい人に対して、『文フリ』のシステムやノウハウを提供するということですよね?

望月:山崎さんにも関わってもらって、出店申し込みの受付や案内の発送、Webカタログなどのシステムをある程度は実装できたので、かなりの部分でサポートできる体制が整った、というのがあります。あとは、これはもともと想定していたのですが、東京での開催は出店者数が横ばいになっているので、このままだとジリ貧だということも正直あります。

ーーほかの同人イベントの主催者だと、流行のコンテンツに乗って開催するということができますが、『文フリ』でそれはできないですよね。

望月:世の中で、文学愛好者が無限に増えるわけではないし、アニメのように流行で上がったり下がったりすることもないので、普通の同人即売会とは感覚が違うところはあります。

ーーなるほど。それにしても、『百都市構想』というネーミングにはインパクトがありますね。

望月:英語だと意味が漠然としてしまうので、漢字がよかった。全国に広げていくということを事務局のコアスタッフで話をしている時に、名前が必要だな、ということでぶち上げたのが『百都市構想』です。

ーー百の都市となると、47の都道府県で2ヶ所以上で開催すれば達成できますね。

望月:そうそう。でも、僕らの中では青山・秋葉原や蒲田、名古屋でもやったことが既にカウントされているので(笑)。大阪、金沢と来て、福岡でも開催するので、9ヶ所くらいは出来ているという感覚です(笑)。

ーーではあと90ちょっとですね(笑)。現実的に、どのくらいの規模感の都市ならできるというお考えはありますか?

望月:イメージとしては、サッカーのJ2のクラブがある町ならばできると思っています。

ーー清水エスパルスサポーターの望月代表らしい例えですね(笑)。確かに、J2のクラブは最低でも3000人前後をスタジアムに動員していますし、『文フリ』の規模感と近いかもしれません。

望月:エスパルスはあくまでもJ1ですが……。だから、僕の中では『Jリーグ百年構想』が元ネタの1つです。でも根拠がないわけでもなく、「そんな規模の町にサッカークラブは無理だよ」というところでも運営できるしサッカー文化が根付く、という理想を掲げているじゃないですか。我々がやろうとしていることのイメージと合致していました。

ーーそういえば、2015年にツエーゲン金沢がJ2に昇格していますね(笑)。

望月:奇跡のようなタイミングですね(笑)。だから、それが「文学フリマを全国各地に広めることで、文学のみならずすべての文化・芸術活動をより身近で、より豊かなものにする」という『百都市構想』の理念作りのお手本の1つですね。

bunfree_20150502_02

ーー出店受付や発送業務といった、システムやノウハウを提供することで、だいぶイベント運営の敷居が下がることになりますね。

望月:もう既に東北から問い合わせが来ていて、これを具体化しようと進めているところです。実際、「やりたいです」と手を上げてから、会場を押さえることを考えると最低でも1年以上はかかります。その間に東京で『文学フリマ』は2回ありますし、経験がない人でもそこに来れば運営の動きを見てもらうことができます。全国各地での開催も増えればその機会も増えることになります。

ーー例えば、他の同人イベントとの併催という可能性もあるのでしょうか?

望月:地域によっては『文学フリマ』だけだと難しいということもあると思っていて、もともと開かれているイベントと併催するというのはアリだな、と考えています。これは、同人即売会でなくてもよくて、それこそ地域のお祭りでもいい。そういう可能性もあると思っています。

文学の「創作者」「愛好者」「継承者」を増やしたい

ーーそのほかに、現状で課題に感じていることはあるのでしょうか?

望月:これは永遠のテーマなのですけれど、告知をどうするのか。ブース参加者は集まっても。一般参加者を集めるのが難しい。これからサイトのリニューアルを図って、全地域開催の『文フリ』の情報も集約してポータル化していくことは考えています。

ーーなるほど。最後に『百都市構想』を広げることで、どのような意義があって、どのような作用が起きることを期待しているのか、お聞かせ頂ければと思います。

望月:『百都市構想』をぶち上げたのは、考え方を言語化しないと伝わらないし、理想を掲げないと進む道が示されない、ということがあります。シンプルに言えば、いろいろな地域でやることを通じて、文学の「創作者」「愛好者」「継承者」、この3種類の人たちを増やしたいという目標があります。この担い手を増やさないと文化や伝統が衰退して成り立たなくなります。
これは、言うだけではダメで、『文学フリマ百都市構想』は2015年10月25日に開催する『文学フリマ福岡』とセットで発表したんです。ちゃんと実践が伴っていれば人もバカにはできないですから。
大阪や金沢では、東京に出ている多くの出店者さんが遠征してくれましたが、大阪や金沢、福岡に初めて出店した人が、「今度は東京でやろうかな」といった、相互に自然に入れ替わっていくようになっていくと、『文学フリマ』が一層盛り上がるのでは、と考えています。

第二十回文学フリマ東京 

日時:2015年5月4日(月祝)
   11:00~17:00
会場:東京流通センター第二展示場
出店数:約650ブース
一般来場:無料
主催:文学フリマ事務局

文学フリマ公式サイト
http://bunfree.net/ [リンク]

  1. HOME
  2. 生活・趣味
  3. 【インタビュー】『文学フリマ百都市構想』とは!? 中の人に直接聞いてみた
access_time create folder生活・趣味

ふじいりょう

乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。

ウェブサイト: https://note.com/parsleymood

TwitterID: ryofujii_gn

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。