「長期金利が急上昇」国債大暴落の真偽を探る
長期金利急上昇から国債暴落の可能性が浮上
2015年2月3日の国債市場で、長期金利の指標である新発10年物国債の利回りが一時0.365%と急上昇しました。過去最低金利を記録した1月20日の時点から0.17%上昇した要因は、国債の価格下落にあります。結果、国債が暴落する可能性が取り沙汰されています。
長期金利上昇が起こる理由は、2通りあります。1つは、景気が回復して商品の需要が供給を上回ることにより、物価が上昇した場合。もう1つは、国債価格が下がった場合です。今回の長期金利上昇は、新発10年物国債の入札をしようとする金融機関が少なく、国債に高値がつかなかったことが原因です。背景には、1月21日の日銀黒田総裁による「追加的な(金融緩和)措置はいらない」という発言がありました。
日銀総裁の発言に銀行が反応し、国債購入は慎重に
国債は新規に発行されるだけでなく、市場で売買されています。政府の行っている金融緩和策では、市場に出てくる国債の多くの部分を日銀が買い取っているため、銀行は日銀が買い取ってくれることを信用して新規国債を購入していることになります。そのため、日銀黒田総裁の発言に銀行が反応し、国債の購入に慎重になりました。
政府の金融緩和策における量的緩和策(国債の大量購入)には、相反する2つの側面があるといわれています。債権価格の上昇による金利の引き下げと、景気の回復により物価が上昇することによる金利の上昇です。最終的に国の目標である年2%の経済成長率の実現に伴い、金利が上昇する状態が理想とされているのです。
長期金利の上昇は消費減退を招く
好景気になれば長期金利の上昇は好材料ですが、長期金利が上昇すれば1,000兆円以上の借金を抱えている政府は利払いが増えて予算を組みづらくなるでしょう。また、預金金利が上昇することにより、企業が資金を借りての設備投資も難しくなります。個人も銀行に預けて金利を稼ごうとするため、消費が減退することも予想されます。
そこで、日銀は景気を判断しながら、景気の上向きが見えると国債の購入を減らし、景気が悪くなると国債の購入を増やすという施策を、やめる時期を模索しながら継続していくことになります。日銀の国債残高は206兆円にも及んでおり、どこかで日銀が国債を売らなければならない時期が訪れるということです。
国債が今すぐ大暴落するとは考えにくい
以上の背景から、「国債がいつか大暴落する」という真偽について考えてみましょう。政府の借金が毎年増えているので、いつか日本国債の信用がなくなり、誰も国債を買ってくれなくなる時期が来るというのです。しかし、現在の日本国債の海外からの評価は概ね高く、今すぐ大暴落するということは考えられません。
今後、景気が回復して日本経済が安定して成長していく時期に向け、しばらく長期金利は政府主導による低い基準で上下動を繰り返すと思われます。景気が回復して「異次元緩和策が終わる時期=国債価格が暴落する時期」ということです。
(福間 直樹/ファイナンシャルコンサルタント)
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